中国経済セミナー登壇者インタビュー Vol.4 津上俊哉氏(日本国際問題研究所客員研究員、現代中国研究家)
笹川日中友好基金は、中国の米中新視角基金会(周志興主席)の協力を得て中国経済セミナーシリーズ(全3回、2021年12月~2022年2月)を開催しました。本セミナーのコメンテーターとしてご登壇頂いた日本国際問題研究所客員研究員、現代中国研究家の津上俊哉氏に中国の経済政策やその教訓等についてお話を伺いました。(2022年7月5日収録)
インタビュー:
――インドの女性運動の現状について教えて下さい
インドにおける女性運動は古くから存在しますが、最近の一連の運動は70年代に本格化しました。私たちは男女平等や市民権に関して争っていますが、中でも女性に対する暴力の問題は非常に重要です。日本と同様、インドも非常に伝統的な社会で男女の役割がかなり明確に定義付けられています。 それを飛び越えるのはとても難しいのですが、インド女性は状況を変えたいと強く願っていて、機会さえあれば、大きな障害を乗り越えるため戦う勇気をもっています。
――日本女性も男性優位社会をくぐり抜けて生きています
日本社会に関して興味深いと思っている点は、近代化が非常に進んだ社会だというところです。テクノロジーの視点からも、都市の発展からも、またファッションや海外旅行をしている様子からもそれはうかがい知れます。その一方で、いまだに男女の関係において、女性の立場を変革するのは難しいようですね。結婚や家族というものが非常に重要で、しかもそれはインド社会と同様に、女性の責務とされているという印象を受けました。日本女性がその状況とどう向き合っているのか、どこが私たちと違うのか、 何を変えることが出来ているのか、などを知るのはためになります。
――今回、初めて沖縄を初めて訪問されました
私が沖縄に興味を持ったのは、その歴史がきっかけでした。今回の訪問で多くを学びましたが、特に心動かされたのが、沖縄のフェミニストたちとの議論でした。戦争の記憶と向き合う人たち、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の問題に取り組む人たち、暴力の被害者を支援する方々など様々でしたが、 彼女たちが来て話してくれたことはとても感情高ぶるものでした。というのも、私を信頼して彼女たちが話してくれるのを感じたからです。その信頼は本当に貴いものです。帰国したら、インドのフェミニストにそのことを共有したいと思っています。
―― 「沈黙の向こう側」がインドで出版されてから20年の月日が経ちました
あの本が日本でも出版されたのはとても嬉しかったです。おそらく私の作品は世界中の様々な国々の女性たちひとりひとりの体験を集め、それらがどのように新たな歴史をひも解くか、という分野なのだと思います。私の場合は、女性への暴力、特にインド独立時の性暴力に関して書きましたが、例えば、沖縄では宮城晴美さんが自分の人生を通して非常に重要なことを書いています。これらは全て、国際的な研究に広く共通するものだと思います。そしてこれが、歴史を違う角度から捉え、ジェンダー的な視点を大切にした歴史の見方につながることを願っています。また、それは世界の平和を保つためにもとても大切なことだと思っています。男性目線で行われる戦争や政治的対立は社会を変容させ、多くのことをネガティブに変えてしまいます。しかし、平和を取り戻し、社会をまた紡ぎ直すことなどは、女たちに委ねられます。長期に渡って影響を受けるのは子供たちです。ですから、そういう視点をもたらす研究は非常に重要で、今日の世界に必要だと思います。そして、このような研究は私の本だけではないということ、世界中で起こっている活動の一部であるというのが、私の誇りです。