中国経済セミナー登壇者インタビュー Vol.4 津上俊哉氏(日本国際問題研究所客員研究員、現代中国研究家)
笹川日中友好基金は、中国の米中新視角基金会(周志興主席)の協力を得て中国経済セミナーシリーズ(全3回、2021年12月~2022年2月)を開催しました。本セミナーのコメンテーターとしてご登壇頂いた日本国際問題研究所客員研究員、現代中国研究家の津上俊哉氏に中国の経済政策やその教訓等についてお話を伺いました。(2022年7月5日収録)
インタビュー要約:
―アコラウ博士はソロモン諸島のご出身ですが、日本との関わりやエピソードは?
日本から来た漁師達との素晴らしい思い出があります。故郷のソロモン諸島では、かつて日本で最大級の企業であったマルハが、ソロモン諸島政府と共同で漁業会社を運営していました。私は、まさにその島の出身です。そこで沖縄から来た年配の漁師達を見て育ちました。マグロと日本人に囲まれて育ったのです。
―SPFは太平洋地域における太平洋島嶼国主導の変化に大変関心があります。博士が深くかかわっている「ナウル協定締約国グループ(PNA)」などについて教えてください。
2010年のPNA事務局の設立と、それを基盤とした「隻日法(VDS)」の実施が、今太平洋で起こっている最大の画期的な出来事だと思います。他国には経済成長への選択肢がありますが、私達はそれが非常に限られています。水産資源があるのみです。日本人と付き合い、村や小さな経済にマグロ業界がもたらすものを見てきたことが、水産資源からより多く公平な利益を得るということを目指す上で、私に大きな影響を与えました。そして今、私達はVDSを通じて、自分たち主導で資源の私有財産権を確立し、付加価値を生み、利益を得ようとしているのです。。
―近年、太平洋島嶼国では、開発パートナーとの関係の変化や自立強化の動きがみられます。
太平洋島嶼国にとって、日本は常にとても重要な開発パートナーであることは明言しておきます。ただ、ここ数年、国々が発展するにつれて選択肢も増えてきました。中国やロシア、そしてキューバでさえ重要なプレーヤーになろうとしています。世界は変化しています。島嶼国が援助依存から脱却するために、開発パートナーの日本やEUなどからの協力を望んでいます。日本は、非常に限られた天然資源しかなくても、研究や科学技術、そして国民に投資すれば発展出来ると実証してきました。私はそのような価値が共有されることを願っています。
―SPF SPINF (笹川平和財団 笹川太平洋島嶼国基金) は、『カッティングエッジ・シリーズ』として太平洋島嶼国主導の動きをダイレクトに日本側に届ける試みを始めます。
政府間の関係というのは、非常に範囲が明確で規則などに縛られているため限界がありますが、SPFの活動には外交上の縛りなどがありません。非常に重要な機会を提供してくれていますので、引き続き、継続してほしいと願います。太平洋の気候条件や海洋学的環境は、ヨーロッパの気候パターンや嵐と地球規模で繋がり影響を与えています。その重要性を軽視できませんし、そういう意味でも、太平洋島嶼国から私達を招聘し理解や対話を促すSPFは、政府にはできない重要な役割を担っているのだと思います。