2025年以降の世界の紛争、国際危機グループ 理事長コンフォート・エロ氏
世界が直面しているグローバルな危機とは何か、そして日本にどのような影響を及ぼすのか。国際危機グループ理事長のコンフォート・エロ氏と笹川平和財団の西田一平太上席研究員がこのテーマについて掘り下げ、ヨーロッパと中東で進行中の紛争、米中対立の激化、そしてトランプ2.0、グローバル・サウスへの影響などについて語り合いました。
インタビュー要約:
―インドは中東とアジアの間で地理的重要性が高く、長年に渡り多くの国々に影響を与えてきました。
インドは中東と東アジアの間に位置し、さらに中央アジアとユーラシア大陸に繋がっています。歴史的に見ても、アジア全体の人々・宗教・思想などが、陸と海両方で交わる場所でした。大英帝国支配下では、インド洋とユーラシア大陸における経済活動の中心地となりました。現在、その地理的な要素を再び機能させながら、経済成長しています。今後は、平和と繁栄の両方を、中東・東南アジア・インド洋・中央アジアにおいて広める大役と責任を担うでしょう。
―インドの中国との関係は?
60年代初頭に「中印国境紛争」があり、それ以降、25年間は中国との関係は悪化したままになっていました。しかし、ここ25年間は関係性を正常化する試みを続け、状況は改善したかに見えましが、中印間に新しい問題が発生し始めています。例えば、ヒマラヤ全域で国境をめぐる論争が再び活発化し、緊張状態を管理することが困難になってきています。ただ、今日の中国は、世界第二位の経済大国であり、インドの重要なパートナーです。対中貿易赤字など問題はありますが、中印関係は現在、BRICsや多国籍間フォーラムなどを通じて良くなってきています。しかし、国境論争はいまだ未解決で、それはチベット問題に繋がっていると思います。進展はあるものの、両国政府は、どのように信頼関係を築くか、どのように未解決の論争を解決するか、頭を悩ませている状態です。
―「アジア統合へ向けて:新しい日印パートナーシップと域内インフラ構想」というタイトルで本日講演されます。
コネクティビティー(連結性)ということが重要な論点となってくると思います。どういう見方をしたとしても、地域内における、最新インフラによる「再連結」には歴史的後押しがあるのです。これは良いことだと思いますし、市場の統合も進むでしょう。そしてそれは、アジア諸国が喉から手が出るほど欲しかったインフラ発展も意味します。もちろん政治も絡んできます。中国との信頼関係を作って行くのが重要です。私としては、日本の「質の高いインフラ」構想は、域内全員に有益な、ポジティブなコネクティビティーを考える基盤になってくれると思っています。