2025年以降の世界の紛争、国際危機グループ 理事長コンフォート・エロ氏
世界が直面しているグローバルな危機とは何か、そして日本にどのような影響を及ぼすのか。国際危機グループ理事長のコンフォート・エロ氏と笹川平和財団の西田一平太上席研究員がこのテーマについて掘り下げ、ヨーロッパと中東で進行中の紛争、米中対立の激化、そしてトランプ2.0、グローバル・サウスへの影響などについて語り合いました。
笹川中東基金では、2016年5月9日、イラン女性・家庭環境担当副大統領府、イラン国際問題研究所(IPIS)との共催で「平和と持続可能な開発における女性の役割」と題した国際シンポジウムをイランの首都テヘランで開きました。会議は基調講演の部と3つのセッションから構成され、日本とイラン両国から専門家が出席し、女性の力を生かし貢献できる社会の実現に向けて、積極的な意見交換が行われました。
Part1ではこの国際シンポジウムにモデレーターとして参加したNHK解説委員の出川展恒氏インタビューをご紹介しましたが、Part2では日本から参加した3人の女性専門家の声を、登壇順にご紹介します。
<略歴>
専業主婦に専念したのち、フランス系企業に就職。1998年日本初のSRI(社会的責任投資)専門投資顧問会社「グッドバンカー」を設立し、社長に就任。環境的な視点から企業を評価し投資対象とする「エコファンド」を企画し、商品化に結びつける。2005年「男女共同参画社会功労者」として内閣総理大臣表彰を受けた。
5月のシンポジウムは、非常に良いテーマにフォーカスしていて、効率的な運営ができていたと思います。イランの人々も地球と社会のsustainability(持続可能性)の重要性に関して議論していこうという並々ならぬ気持ちが感じられました。私は、家事と子育てという主婦と母としての経験が、その後の金融機関での勤務で生かされ、実際自分が起業するのに大変役立ったことを話しました。社会の単位として家庭がいかに大事か、女性にいかにポテンシャルがあるかということをイランの聴衆とシェアできたと思います。
<略歴>
中東研究を専門とする国際政治学者。米国カリフォルニア大学大学院歴史学研究科にて博士号取得。2010年4月より現職。イランを中心に、中東の政治社会変動と紛争防止をテーマに研究。NHKのニュース番組にイランの核開発問題についての解説者として出演。政治、外交から平和構築、ジェンダーなど幅広く研究している。
昨年、国連加盟国は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択しましたが、その中に「持続可能な開発目標」(SDGs)が17あります。女性のエンパワ-メントとジェンダー平等という目標が、このSDGsのゴール5に入っています。イランの国際シンポジウムは、まさにSDGsの中で最も重要なテーマを真正面から取り上げた会議だったと思います。 イラン側のプレゼンテーションの中身もグローバルなトレンドにあった視点からのものでしたね。イランの女性の政策決定者のお二人、環境問題担当副大統領のエブテカール氏と女性家族問題担当副大統領のモラベルディ氏がSDGsに立脚したプレゼンテーションをされていたので、日本との比較において共通した認識で女性のエンパワメントをとらえることができたと思います。
<略歴>
北里大学病院等の勤務を経て、救急・災害の専門看護師となり、臨床・理論・現場という多角的アプローチで災害看護の専門性を説き後進の育成にあたる。2011年東日本大震災の被災地に3770人の災害看護師の派遣を取りしきった。2012年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2012」で大賞に選ばれる。
厳格な父のもとで、自分が自由になるためには自立しなければならないと思っていました。災害看護師として、災害時における救急医療の場面で、圧倒的に力を持った男性の医師達と人命を救うために一緒に活動することを通じて、フェアな関係を構築することにチャレンジしてきました。医療関係者たちのネットワークをつなぐ役割を担い、医者と看護師が職域を越え、対等な関係でお互いを必要としあえるレベルまで行き着いた時、「男女共同参画」ということこそ、私の人生のテーマなのだということに気づいたんです。もしかしたら私は、それを追求するために、無意識にイラン人の夫と結婚するということを選んだのだろうかと思うこともあります。
中東地域で過激派の台頭や武力紛争の長期化など、様々な難問が押し寄せる中、今後イランに対しては、平和と安定を取り戻すための重要な役割を果たすことが期待されています。本シンポジウムの開催に引き続き、イランと日本のさらなる信頼関係を築くため多角的な交流活動が必要です。
日本からご参加いただいた女性専門家の皆様は、2泊5日(機内2泊)の強行軍をものともせず、活発に議論を展開され、知見をご披露いただき、イランの聴衆との交流を積極的に行っていただきました。それぞれの分野でさらなるご活躍を祈念するとともに、引き続き、イランと国際社会の関係構築支援事業でもご協力をいただきたいと思います。
<了>