2025年以降の世界の紛争、国際危機グループ 理事長コンフォート・エロ氏
世界が直面しているグローバルな危機とは何か、そして日本にどのような影響を及ぼすのか。国際危機グループ理事長のコンフォート・エロ氏と笹川平和財団の西田一平太上席研究員がこのテーマについて掘り下げ、ヨーロッパと中東で進行中の紛争、米中対立の激化、そしてトランプ2.0、グローバル・サウスへの影響などについて語り合いました。
インタビュー要約:
―戦後70年の今年、日本では安全保障について大きな動きがあります。安保法案が可決して議論が白熱していますが?
米国が同盟国に期待する集団的自衛権について日本国内での理解が十分なされていませんね。重要なのは、海上や航空宇宙での協力です。機雷掃海、ミサイル防衛などに関して協力関係を構築するということです。地上部隊の派遣ということではありません。
―日本の事を長く研究されていますが、現在の世界的コンテクストにおいて、日本にはどんな姿勢が望まれているのでしょうか?
一般的に考えると、おそらく控えめな姿勢が望まれてきたと思われています。トラブルを避け、良き地球市民でありながらも、あまり大きな声は出さないというような。そうは言っても、変わりゆく世界の中では、時にはっきりした立場を表明することがより必要となってくるでしょう。
―本日、「中東湾岸地域の重要性と日米協力の可能性」と題して講演されました。参加者に一番伝えたかったことは何でしょうか?
第一に湾岸地域は日本にとって非常に重要だということです。 日本は石油の80パーセントを湾岸地域から得ており、そこでは日本の積極的な役割が必要だと思います。湾岸地域には、日本が平和構築の機会を設ける対象となり得る国がいくつかありますが、そこで日本は非常に効果的な役割を果たすことができるでしょう。
―日本の中東地域の役割に関して、もう少しお話いただけますか?
私は、限定的な安全保障上の役割の選択肢も残しておくべきだと思います。 特に機雷掃海のようなものについてです。日本は大変質の高い、大規模な機雷掃海部隊を持っています。広い意味で言うと、省エネ技術や一流の医療設備と優れた病院などの非軍事分野も大変重要です。
―日本が自らの特徴や強みをもっと生かすにはどうしたら良いと思われますか?
まず、日本が世界の中で積極的な役割を担うための国民的合意が重要となるでしょう。世界のある地域、特に南アジア、インド、中東といった地域で、日本は(米国より)ポジティブなイメージを持たれていますね。国際社会に有益になるよう、その立場を利用すべきです。日本の省エネや医療分野における技術、および機雷掃海などの技術協力は、主要産油国の周辺、「危機の弧(Arc of crisis)」と言われる国々の平和構築において力を発揮すると思います。
―笹川平和財団は非営利で政治的な制約のない民間財団として様々な事業を行っています。当財団にどのような役割を期待されますか?
実際に日本政府ができないことについてプロジェクトや会議を立ち上げることができますし、政府より機敏に力強く動くことができます。非常に重要な役割を担っていると思います。