笹川平和財団主催
「女性の政治参画への課題と展望」講演会
ズライダ・カマルディン(マレーシア住宅・地方政府大臣)基調講演

2020年6月2日

「女性の政治参画への課題と展望」講演会
2019年9月6日
笹川平和財団ビル

 神の名の下に、皆様、こんにちは。ご参加いただいたことを感謝します。また笹川平和財団には、ご招待いただいたことを感謝申し上げます。今日は女性の政治参加ということでマレーシアの事例などを使ってお話をさせていただきます。

 さて、マレーシアの状況ですけれども、私はいくつかの多国籍企業で働いてまいりました。アメリカを拠点とする企業、あるいはオーストラリア、日本を拠点とする企業で働いてまいりました。いわばビジネスウーマン、キャリアウーマンであったわけです。

 政治家には、自分でなりたいということでなったわけではありません。ならざるを得なかったということです。20年も前のことになりますが、1999年頃アンワル・イブラヒム氏がレフォルマシという改革運動を率いていて、国民正義党(現在の人民正義党)という政党ができ、私はそこで調査研究を始めました。新しい改革を国の中で進めようという機運に溢れた政党で、1999年の選挙に参加するということでした。この政党が総選挙に臨むということで、いろいろ研究をしておりました。ところが突然国会が解散してしまい、私は研究を続けることができませんでした。どういうところにチャンスがあるのか、どのように戦うのか、研究しようと思っていたのに。政党はできたばかりで、しっかりとした仕組みもでき上がっていなかった。適切な組織だてもない中で選挙に臨んでしまったのです。ただ、かなり健闘はしたと思うんです。この党は当時非常に人気のある政党でした。というのも、以前の副首相であったアンワル・イブラヒム氏に対する不正義について、人々が怒っていたからです。その後、政党内で様々な組織ができてきました。私が女性であるということで、女性の支援をやってほしいと言われたわけです。この新しい政党が活動する中で、女性のエンパワメントに私も何か役割が果たせるのではないかと思いました。

 実は私は、当初、財務担当をしていました。元々ビジネスウーマンだったということで、財務に明るいのではないかと思われていたからです。新しい党ですし、お金もなかった。何とか手に入ったお金で予算を賄っていかなければなりませんでした。私がビジネスウーマンだった時には、男女どちらでも構わない、既婚者であろうと、未婚者だろうと、男女どちらでもいいと、男か女かはどうでもいいと、構わないと、平等で進めようと思っていました。

 私はいろいろな慈善活動にも従事しました。例えばインドネシアの津波の時にもボランティアとして活動していました。政党の活動家ということで、マレーシアの農村地区などに出かけ、とりわけ農村地帯の女性の置かれている状況も見てきました。アチェに行った時には、女性の暮らしは、私の国マレーシアの暮らしと全然違わないと感じました。ただマレーシアは、幸運なことに津波の被害を受けることはなかったわけです。アチェの女性たちは、また再び立ち上がろうとしていた。ただマレーシアは、津波もないのに、女性たちは苦境に置かれている。何でなのか。イスラム教の国であるマレーシアは、国王も、首相もイスラム教徒なのに、何が起こってしまったのかと思ったわけです。悲しいのは、女性たちが豊かさを楽しめていない。様々な資源の恩恵を受けることができていない。国づくりでは重要な役割を果たしているのにもかかわらずです。やはり、女性が国づくり、つまり将来の世代を生むという立場にあるわけですから、女性がいなければ、国が立ち行かないはずです。

 私は政治の世界に足を踏み入れた時から、女性はもっともっと自信を持つべきである、自らを評価すべきであると、国づくりにもおおいに役立つべきであると思っておりました。女性がいなければ、子どもも生まれないわけですから、国など立ち消えてしまいます。

 ずっと女性は専業主婦として、敬意も払われず働いてきたわけです。専業主婦ということで、台所にいて、家事・育児に勤しんでいればいいということでした。われわれの声は誰も聞いてくれませんでした。

 私は女性たちと会うことによって、キャリアウーマンであろうとそうでなかろうと、もっともっと敬意を払うべきだと、評価すべきだと思いました。未来の世代としての子どもを生むのは女性だからです。ですから、自らもやはり自尊心を持つべきであり、そして国に貢献しているのだから、もっともっと自信を持っていいと思いました。

 このことは、女性のリーダーたちももっと理解すべきです。あまり皆さんのような女性はいないということです。大きく声高に発言し、男性たちと共に戦おうという人は多くないんです。なぜなのか。もっともっと彼女たちをエンパワメントしなければならない。力を与え、チャンスを与えていかなければならない。機会を与えなければならない。そしてわれわれは、女性たちの潜在能力を引き出さなければならない。その能力が引き出せるような土台づくりをしなければならない。何が最善の策なのか。私はたまたま政党におりました。ということで、私は女性の部門をより大きくしようと思いました。

 映画スターも入ってくれない、有名なビジネスマンも入ってくれない。あるいは有力な公務員も入ってくれない。なかなか大変でした。政治の世界というのは非常に難しい。様々な人がやって来る、いろいろな課題がある。政治の駆け引きも必要ですし、男性中心主義もはびこっている。

 ある時点、2004年の夏頃でしたか、もうこんなのはやめようと、もう飽き飽きだと思ってしまいました。ただ周りの女性たちが、いやいや、辞めないでくれ、もっともっと頑張ってくれと言ってくれたので、何とか私は続けることができました。やはりリーダーを必要としている女性たちは、やはり彼女たちの旗振り役が必要だと思ったわけです。

 ただ女性部門というのは、選挙の時の見せかけだけに使われてしまう。有権者を引き出すだけ、そのためだけに女性議員というのも使われがちです。実際に議員に立候補するということになっても、男性が優先されてしまう。女性は横に退かされてしまう。やはり名誉あるのは男性だと思われてしまうわけです。ですから女性部門だけに留まっていてはならない。もっともっと意思決定の中枢に入り込まなければならない、自分の声を聞いてもらわなければならないと思いました。重要と思ってもらわなければならない、女性のニーズ、女性の参加を引き出していきたいと思いました。ということで、政党の主流に入り込んでいったわけです。

 政党の構造の中には、全国委員会があって、それぞれの部門があって、それから州ごとの組織があって、私としては、少なくとも部門長にならなければならないと思いました。ただ私は、あまり政治の駆け引きは得意ではありませんでした。私は1人きりで政党に入っていたわけです。以前の党の組織がバックについているわけではない、NGOがバックについているわけではない、1人きりだったんです。じゃあどの部門にしようかと考えました。誰もそんなところの部門長になりたくないと思うようなところを選びました。男性も得意としていないところを選んだわけです。それで部門長になることができました。実は国の中で最も早くなることができたんです。州と、それから全国レベルのちょうど中間にある地域の部門長になることができました。

ズライダ・カマルディン(マレーシア住宅・地方政府大臣)


 我々の党はいわゆる連立の政党となっていましたので、私が部門長になっても、必ずしも私自身の政党の席が確保されているというわけではありませんでした。それなら新しい部門を作ろう、連邦直轄領であるクアラルンプールに新しいものを作ってしまおうと思いました。そして私がこの地域の、いわば部門長の代理と自分で決めたわけです。そこを自分の政党の席として確保しようと思ったので、人を集めるために出かけていきました。もちろん新しく立ち上げるわけですから、いろんな人を集めてやるというのは、たった30人であってもなかなか大変だったんですけれども。家族とか、親戚とか、友人たちとみんな寄り集めて、そして何とか30人を集めたわけです。それで年次総会を行いました。その結果、部門長になることができたわけです。

 そして新しい選挙に備えました、2008年の選挙です。99年に一応政党には入っておりましたけれども、立候補はしていなかったんです。というのも、当時立候補には関心がなかったからです。私は政党の女性部門で働いて、そこの管理をする、そしていろいろな仕組みづくり、組織づくりをすると。元々キャリアウーマンでしたので、そういう経験を生かすということでした。

 さて、2008年の選挙に向けてですが、私は政党の女性の、いわばチーフになりました。2007年でした。政治の世界では、女性のチーフというのは立候補するということになっています。ですが私は立候補したがらなかったんです。ですから変だと思われていたようです。通常は立候補するものですので。私は2008年の選挙の1年前からいろいろ準備を整えました。コミュニティでいろいろ仕事をする。いろいろ関与をし、様々な活動に従事していました。

 私は、セランゴール州のアンパン地区に住んでおりました。多くの人がこの選挙区では勝てないと言われました。23000票もの郵便投票というのがあって、与党は必ずその組織票を取って選挙に勝つと言われていたからです。与党との得票数の違いは23000票だったわけです。あまりにも与党に有利な地区でしたから誰も立候補したくないんです。もう負けるのは確実と思われていたので。特に男性というのは、すぐに勝てる席ばかり狙って立候補しようとするわけです。私は、そんなの構わない、頑張ろうと思ったわけです。与党が23000票も勝っているけれども、人とも馴染んできた、いろいろコミュニティで活動もしたから、私の顔は知られているんじゃないかと思って立候補しました。

 神様のご加護のおかげで、私は2008年の選挙に勝ちました。3600票の差をつけて計26500票をいただいて勝つことができました。その選挙では、野党が勝った議席がいくつもありました。私の出馬したアンパン地区も含めたセランゴール州もそうでした。
やがて女性部門の長として、もっと女性に活躍してほしいとの思いから、私の政党は初めて22人もの女性の部門長ができました。ほかの政党はこんな実績は持っておりません。60年もの歴史を持っているような政党、与党でも1人2人ぐらいは部門長になったとしても、ほかは無しということで。そこでようやくそれだけの女性の力を得て、物事を変えることができるようになったわけです。

 どのように私が党の女性リーダーや女性党員と活動してきたか、1999~2000年頃から、いろいろな会合に女性が参加するようになりました。政党はまだ立ち上がったばかり、いろいろ仕組みづくりを進めていったわけです。女性の党員は会合に行きますと、コーヒーやお茶を出しますが、私は言いました。「お茶出しなんか絶対やっちゃいけませんよ。男性と平等なんですから。会合できちっと着席して、椅子に座って、そしてアイデアを出すのがあなたの役割なんです。お茶出しなんてあなたの役目ではありません」。自分たちでお茶やコーヒーを取りに行けばいいんです。でもそうすると、男性だってやり始めるわけです。つまり役割がお茶くみだったらお茶くみをする。それは性別でもって決められるわけではないのです。ですからこれはわが党におきまして、文化として根付きました。私のほうが高いポジションなんだから、主要な役割なんだから、コーヒーと紅茶の係はやらなくていいという状況です。それが1点目。

 2点目に、われわれは30%のクォーターを導入しました。北京宣言にマレーシアは署名しています。ところが実践はされていなかった、エンパワメントされていなかった。ですので、あらゆるレベルにおいて30%の女性参画目標を入れたのは、わが党が最初の政党です。2008年に党の憲章に入れました。ただ実践できているか。実はまだ一度もそれが実践できていません。なぜならば、女性の声を聞かせようというアファーマティブ・アクションが取られていないからです。ただこの30%の促進はできております。女性30%、女性30%と声高に、行く先々で言っております。男性の耳にもタコができるほど言っている。ですからポジションを誰にするという時に、30%、30%ということをみんなが思うようになりました。

 でもこれは簡単ではなくて、まだ達成はできておりません。ですので、もっと多くの女性に出馬してもらわなくてはならない。総選挙での女性候補者を増やしていかなくてはなりません。その出馬人数が十分にいないわけです。党の現状として、30%と言ったとしても、出馬に適した女性が30%いない。トレーニングだって必要ですし、キャパシティビルディングだって必要だし、候補者を探して前線に出てもらってということをやらなくてはなりません。基礎的なトレーニングに加え、リーダーシップのトレーニングも、あるいは実務的なトレーニングも必要です。

 女性の参画、あるいは候補者の数は、少なくともわが政党におきましては増やすことができました。ただ、将来に向けてどうしていくのかが課題です。やはり今から若い女性を育てていかなくてはなりません。そうしない限り、次世代のリーダーシップに女性の存在が担保されません。ですので、「スリカンディ」と呼んでいる若い女性チームを作りました。スリカンディは、若い女性戦士という意味なんですけれども、若い年齢の女性を女性部門の支部に入れるのです。この若い人たちは、18歳から35歳ですけれども、「政治って汚いんでしょ。私、そんなのに関わりたくない」と言う人が多いんです。そこで私は若い女性たちに訴えます。「政治を、権力や権限を手に入れるものとして見るな」と。「そうじゃなくて、あなたの国民の福祉のための貢献というふうに考えてください」と。つまりそれは現場に行き、そこに住んでいる市民の生活をよくしなくてはならない、改善しなくてはならないということであります。そうすると、実際に、特に女性の生活を変えることができるということです。

 資源はたくさんあるんです。でも女性がそれを利用、享受できていない。つまり少なくとも半分は権利があるのに、半分の資源をきちんと分配されていません。分配されたとしても、公平に女性の能力開発のためにきちんと使われていません。ですので、若い女性支部が将来に向けて戦略を立ててほしいと思っております。将来何が必要になるかということを特定して、政治に参画して、将来の指導者になるためには、その時に何が必要になるかということです。もうすでに私のニーズと彼女たちのニーズは違う。私はもう彼女たちの親、あるいは祖母の世代です。

 マレーシアにおきまして、もう1つの側面があります。独立したのが約60年ほど前です。教育に対するアクセスもいい、医療に対するアクセスもいい、経済エンパワメントに対するアクセスも整備されているし、労働力に対するアクセスもいい。ところが政治参画におけるパフォーマンスは、大野理事長がおっしゃったとおり、193カ国中132位なんです。なぜでしょうか。女性は教育を受けているし、健康状態もいいし、移動もできるのに、政治に参加できていないんです。これは正しくない。だから今から若者を育てていかなくてはならない。そして彼女たちが、その時になったら何が必要になるかということを予想した上でトレーニングをしていかなくてはなりません。

 これまで政府は、こういった問題にコミットしていませんでした。女性の参画のために戦おうなんて思っていなかった。もう居心地いいからこのままでいいんじゃないのかという雰囲気だったんです。自分はいいポジションに就いている、いろんな権利もある、何で戦わなくてはならないの、と女性のリーダーだってそう思っていたんです。ほかの女性のエンパワメントとして、もっと女性のリーダーを増やそうなんていうことを思っていませんでした。女性がより多く、国づくり、あるいは経済発展に参画するというようなことをきちんとコミットしていませんでした。

 われわれが前回の選挙で勝った時、2018年5月ですね、初めてマレーシアで政権交代がなされ、野党が与党になりました。転覆したんです。連立の中で一番多く議席を持っている政党に私は所属しているんですけれども、下院におきまして女性議員の比率はやっと10%を超えることができた。それも決してそうしようと思ってやったのではなくて、そうなったんです。結果論です。30%参画、クォーターなどは言ってきたし、導入してきた。そしてやっと今、下院の女性議員比率は、13%です。5人の女性閣僚もいます。過去には1人2人しか女性閣僚がいなかったという時代もありました。今、副大臣は4人います。さらに汚職防止庁長官をはじめ長官職、局長職で女性が増えております。判事、裁判長も女性、多くの判事は女性です。こちらにリストを掲げておりますけれども、銀行出身、軍隊出身、あるいは主要テレビチャンネルの人とか、判事2人、また会計検査院の長官も女性です。
 

ズライダ・カマルディン(マレーシア住宅・地方政府大臣)

 こういったように女性が今、非常に高い地位に任命されている。もっと増やさなくてはならない。繰り返し繰り返し思い起こさせられますけれども、能力のある女性は大勢いるんです。われわれはその人たちを見つけなくてはならない。私は住宅・地方政府大臣に任命されたので、私はメインストリームの省の大臣になりました。だから政策も決定できる、エンパワメントもできる。そうすることによって、女性がきちんと含まれるように、任命の中で含まれるようにするということができる、30%の政策を目指すことができる。

 ですからわが省におきまして、全国ですべての地方議会において、女性議員を30%にしなくてはならないということを地方政府大臣として司令しております。これが唯一の手段です。メインストリームのポジションにならなくてはならない。女性がメインストリームのポジションに就いたら、それはやらなくてはならないわけです。私は権限を与えられるからできる、だからやる。

 またわが省におきまして、空席がある時は女性を採用するようにしております。女性の候補者を探せと指示しております。事務総長とか事務次官とかの私の部下たちにも、政府の事務次官にも言いました。もし誰かが辞めたら、採用は女性優先でということです。女性の候補者がいないと言われたら、「いや、探しなさい」と言うんです。2回目にまた来る。「女性の候補者が見つからない」と。私は、「もう1回試してみなさい、急がないんだから」と言う。それでやっと女性の候補者を挙げてきた。ですからやろうと思えばできるわけです、ただ時間が必要なだけで。藁の山の中で1本の針を探すみたいかもしれないけれども、見つかるんだと。つまり優秀な女性というのは、そこにいて仕事ができるのに、平等に機会を与えられていないだけ。門戸が開放されていない。だから何らかのアファーマティブ・アクションが必要だというふうに言っているんです。

 女性が任命されると、男性と同じぐらいやります。もっと優秀なこともあります。国連の研究でもそうですけれども、組織の中で女性の人数のほうが男性よりも多い組織や企業において、その企業や組織の生産性が25%上がるという結果が出ております。これは男性反対というわけではなくて、100%譲れ、なんていうことを言ってるわけじゃなくて、たった30%でいいんですよ、それを譲ってくださいとしか言っていないわけです。

 私は特に、もうすでに地位を獲得している女性に言いたい。あなたの地位を使ってください。その地位で以て、女性に国づくりに参加してくださいと、あなたたちが訴えてください、と。

 女性と男性というのは、もちろん違うわけです。例えばわが省におきましては、私は住宅担当をしているけれども、設計する建築家、設計者はほとんど男性です。女性の建築家ってほとんどいません。台所の設計を男性にさせると、もうキッチンキャビネットが大きすぎる。そんな身長ないから届かないじゃないの、と。梯子がなかったら届かない、ものが取れないでしょう。でも女性だったら背の届く範囲のキャビネットを作ろうとなる。こういうことで、女性に入ってもらわなくては困るわけです。女性の意見を取り入れないと、包括的で実効性のあるものはできません。

 ですから建築家であろうと何でもいいんですけれども、どんな職種であろうと、女性を雇うべきです。考え方は女性と男性とで違います。設計に関して、男性がやると、細かいところで実務的ではなくて、装飾的なことはいろいろやってくれるかもしれないけれども、実践的ではない、使えないというようなデザインが多いわけです。男性が設計すると、「これ、格好いいじゃない、素敵ね」と。でも結局その掃除をしなくてはならないのは女性でしょ。装飾が多いと、その隙間も掃除しなくてはならない。ジグザクの装飾があって、彫りこみがあると、そこを掃除するのは大変じゃないですか。じゃあもう平らなほうが掃除しやすいと。そういったような実践的なことなんです。何でこんなシンプルな例を挙げているかというと、皆様にわかっていただきたいから。やはり女性に国の政策づくりに参加してほしいわけです。そうすれば世の中は変わってきます。
 
ズライダ・カマルディン(マレーシア住宅・地方政府大臣)

 わが省は消防士も管轄です。私は「何で消防士って女性が少ないの」と聞いたことがあります。こう答えるんです。「大臣、女性は実務試験で落第するんです。不合格になるんです」と言うんです。女性はロープクライミングができないからって。でも消防士の事務方でしょう。事務方を採用する時に、何でロープクライミングの試験をするの?ということで、ロープを綱渡りするのは試験から外しました。何で女性が消防士にならないのか―ロープクライミングしなくてはならないから。それで終わってしまうと、もう変化はないわけです。そういうことです。

 女性のほうがあちこちに移動することが多いです、マレーシアの場合。45%ぐらいの女性は労働市場に参加をしております、もちろん下級職が多いんですけれども。私の省、それから地方政府では、いろいろなインフラ整備なども手掛けているわけですが、その政策づくり、方針づくりの責任を負っています。女性は体が男性よりも小さい。でも敏速に動きますよね。いろんなアイデアが出てこないというのも、女性の視点が欠けているということがあれば、やはり問題になるわけです。政策を決めるに当たっては、例えば建物の設計にあっても、女性の視点が必要になる。男性だけではだめなんです。

 例えば子どもたちのスペースも作らなければならない。トイレもそうですよね。男性は、女性のトイレを同じサイズにすればいいと思うかもしれない。ところが女性のほうがもっとスペースが必要なんですよね。何で女性のほうがより大きなスペースが必要なのか。赤ちゃんも一緒にトイレの中に入るからです。男性はそういったことが分かってないんですよね。男性は、小便器とそれから大便器と両方ある。でもそれだけですよね。それ以外のスペースは必要ないんです。でも女性はそうではない。いろんなことをトイレでやらなければならないんです。

 それから道路についても、女性が例えば料金所で働いてもいいんです。夜のシフトを男性が、昼のシフトを女性がというふうにしていけばいいのです。ところが男性ばかりになってしまう。何で女性に譲ってくれないのか。もっとやはり包摂的にならなければならない。そのためには女性の視点が欠かせないということです。さらに進歩を遂げていくためには、より全体の調和の取れた社会を作るためにも女性の視点が必要です。

 地方のレベルにおいても、地方のリーダーとしてもっともっと女性を登用すべきです。コミュニティ、地域社会の中で、女性で非常に活躍している人もおります。一生懸命勤勉に働いている人もいますし、信仰に厚い人もいるでしょう。また女性たちは、何かお願いすると高い集中力でやってくれます。

 私の省の話をもう一度しますと、廃棄物管理も担当しています。日本とは違います。日本のほうが非常に先進的で、非常に規律が取れている。ゴミをそこら中に捨てたりしませんよね。ただマレーシアは、まだまだそこまで来てない。5割、6割の人は、ゴミ箱に紙屑を捨てることもしないと言われています。ところがこういう活動をしようとすると、女性が懸命に活動してくれるんです。女性は常にリーダーになってくれるんです。女性はいろんな仕事をきちっとやってくれます。しかも成功裏にやってくれます。ところがハイレベルの役員の職に就いたのはみんな男性なんですよね。

 女性の特質というのは、自分を売り込むのは嫌なんです、下手なんです。自慢もしたがりません。自分がこんなことをしたんだ、あんなことをしたんだと自慢するというのはあんまり聞きませんよね。男性は違いますよね。男性の方々、怒らないでくださいね。私もビジネスセクターで仕事をしておりましたが、まだ子どもが赤ちゃんだった時、私が、少し体調が悪かったことがありました。そのときは夫が面倒を見てくれた、たった一晩ですよ。それでも自分はもうイクメンだって。赤ちゃんの面倒をこれだけ見たんだと、もう自慢たらたらですよね、たった一晩なのに。

 ですからもっともっと女性に機会を与えていく必要があります。その潜在能力を引き出し、そして伸ばして、花開かせていく必要があります。自分の中の能力がまだ活用されていない、それを引き出していかなければなりません。それが国にとっても大きな希望になると思います。日本も同じではないでしょうか。かなり高学歴の女性もいらっしゃいますよね。また日本では女子大も数が多いと聞いています。女性の進学率も高いと。ただ大学に行った女性たちはどこに行っちゃうんでしょうね。どこに消えちゃうんでしょうね。男性と競争するということではありませんけれども、女性はもっともっといろんな職やいろんなポジションに就くべきです。もっと誇りを持つべきです。トップの地位に就いてもいいじゃありませんか。誇りを持ってください。国のためにベストを尽くす、自分の能力をフルに発揮し、そして貢献するということです。そうすれば、全体に調和の取れた発展を国も実現できると思うんです。

 私はイスラム教徒の女性であります。マレーシアでは大きな問題ではありませんかと言われます。イスラム教徒だし、女性だしということで。いやいや、そうじゃありません。男も女も神の前では平等なんですよ、同じなんですよということをいつも言っております。ただし女性は、赤ちゃんを出産する、そして母乳をあげることができる。これは男性ができません。それ以外は男性も女性も同じことができるはずです。

 妊娠する、赤ちゃんを産む、母乳をあげるという3つ、男性が絶対できないことをできるので、女性の方が優位に立つべきじゃありませんか、本当のところは。もっともっと自分を評価すべきです。われわれの母親たちは古い考え方を持ってるかもしれませんけども、もっともっと国の発展に尽くすということ、将来の世代を育てるということ、もっともっと誇りを持っていただきたいと思います。

 いいリーダー、いい人材を育てようということです。教育であろうと、家の中で働こうと、あるいは省庁で働こうと、女性の果たす役割は必ずあるということです。そして政策立案を強化する。また、組織の構造をより強くすることに役立つはずです。ネットワーキングも進む、いろいろ協力も進めることができる。そのほうがずっといいと思います。

 以上を以て、皆さんのご清聴に感謝します。私自身の経験を語らせていただきました。少しでもご参考になればいいなと思います。私自身の考え方、私自身のアイデアですので、皆さんのそれぞれの状況に合わせて取り入れていただけるものは取り入れていただければいいと思います。自分の創造性、スキルを自分で制限しないでください。怖がらないでください。勇気を持ってください。違うことをやるためには勇気を持たなければいけません。Yesと言うんです。自分はできると言ってください。ありがとうございました。

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*英語で行われたスピーチの原文については、こちらをご覧ください。

 

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