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シンポジウム 講演会録

SPF China Observer――中ロ軍事協力の意義

ジャーナリスト 鈴木順子


2019.10.10
SPF China Observer――中ロ軍事協力の意義

 笹川平和財団は2019年9月4日、「中ロ軍事協力の意義」をテーマに東京大学先端科学技術研究センター特任助教の小泉悠氏と当財団上席研究員の小原凡司氏による対談を開催しました。今年7月に発表された「国防白書」で中国は、米国対国際社会の対立の構図を描き、中ロ軍事協力を深めるとしています。一方、ロシアは2015年ころにはすでに同様の認識をもっていました。中ロの意図とは。中ロ軍事協力とはどのようなものなのか。そして世界と日本の安全保障環境にどのような影響を及ぼすのか――

中ロの国際情勢認識

小原 中国は今年7月24日に4年ぶりとなる国防白書「新時代の中国の国防」を発表しました。
注目すべきは、米国に対する対決姿勢を固め、中国と米国が対立しているのではなく、米国と国際社会が対立しているのだという構図を鮮明に打ち出していることです。米中二国間の対立においては経済的にも軍事的にも米国にははるかに及ばないと中国自身が考えており、この二国間対立を避けようとする意図からです。こうした認識をもとに「新型安全保障パートナー関係」を構築するとし、パートナーとして名指しするのがロシア、そして欧州、アフリカ、南米、カリブ、太平洋島しょ国地域です。特にロシアとは具体的に軍事協力をするといっています。
 これまでの米中関係を振り返ると、中国はオバマ政権下、新型大国関係を掲げて衝突を避けようとしてきました。その間に中国は実力を蓄え、米国に並ぶ実力をもったときには、正々堂々と米国と対峙するという考えです。そのために中国は米国社会に対し世論工作を行います。しかしこれは2017年末に米国のシンクタンクが「シャープパワー」を使っていると非難してから、排除され始めます。さらに米国は、中国に対抗する領域を経済、軍事へと広げ、政治戦(political warfare)の様相を呈してきました。こうした中で、中国は今回の国防白書で示すように、米国は国際社会の安定を阻害する敵だという構図をつくろうとしている。米国と中国はそれぞれ自分の有利なところで攻防しようとその枠を広げているのが現段階です。
ところで、興味深いことに、ロシアははやくも2015年ころには、中国の国防白書と似た国際情勢認識をしているそうですね。
小泉 ええ。ロシアの総合的な中期方針「国家安全保障戦略」、そして軍事政策の指針「軍事ドクトリン」の最新バージョンは、前者は2015年12月、後者は2014年12月に策定されたもの、つまりクリミア危機の直後につくられたものです。
国家安全保障戦略の内容の変遷をみると、2000年代は西側にそれほど敵対的ではありません。登場したばかりのプーチン政権はなんとか米国との関係をよくしようと模索している。2000年版国家安全保障戦略は「世界の一員としてのロシア」を意識した書き出しになっています。2009年版も比較的そういう雰囲気です。
しかし、現行の2015年版はリベラル色が消え、米国の「一極支配」に対する警戒感が前面に出ています。ウクライナやクリミアの危機を経て、「ロシアが力を取り戻したがゆえに封じ込め政策の標的になっている」との陰謀論的な認識が強く押し出されるようになりました。
 ロシアは冷戦後、国際秩序が米国の「一極支配」であることに不満をもっていました。2000年版、2009年版の国家安全保障戦略でも世界は多極化すべきだといっています。しかし、2015年版になると、世界は多極しているという認識に変わる。米国の力は衰え、中国やインドが台頭し、相対的なパワーバランスが1990年代に比べてフラットになった。米国対世界という構図が出現しているというのです。先ほどご紹介のあった中国の世界観に通じます。米国は失われようとしている一極支配を守るために世界中で軍事介入を行っているという認識を打ち出している。こうした中で、軍事力を含めた力の重要性と中国との関係強化を強調し、中国との関係が「グローバル・地域レベルでの安定性維持の鍵」だというのです。
 2014年版「軍事ドクトリン」では、ロシアの対外脅威として、「民族間・宗派間の緊張の火種の存在(発生)」「ロシア連邦およびその同盟国に隣接する国家において武力紛争の火種およびエスカレーションが存在(発生)」等を挙げています。これは、中央アジア、特にアフガニスタンに隣接するキルギスタン、タジキスタンにイスラム過激派が入ってきて不安定状況が生まれることへの懸念です。おそらく、同様の懸念を中国も新疆ウイグルに関してもっている。ユーラシア中央部の安定性に関して中ロが同じ脅威認識を共有しているということです。
小原 中国は国防白書の中で、新疆ウイグル自治区などでの自治を望む動きをテロだとし、それらを「打撃する」と強い言葉を使っています。境界があいまいになり、崩壊することへの恐怖があるのでしょう。それはソ連崩壊後、ロシアの範囲があいまい化してきたことと関係するのではないでしょうか。
小泉 ロシアの国境は、国際法上ではほぼ確定していますが、プーチン政権はユーラシア大陸の真ん中から上のあたりは、ウクライナや中央アジアを含めてすべてロシアの勢力圏に入ると考えています。ウクライナへの介入は、ロシアからすると侵略ではなく、自国の勢力圏を守る防衛的行動です。ロシアが軍事介入を行ったり、基地を置いたりしている場所をみると、シリアと北方領土を除けば、旧ソ連の裂け目に沿っているのがわかります。

中ロ軍事協力の可能性

小原 中国の国防白書が発表される前日、中ロは大型爆撃機をそれぞれ2機ずつ出して、中ロ合同パトロールを実施しました。爆撃機だけで爆撃に出ることはないし、パトロールのために爆撃機4機を飛ばすのも不自然です。これは中ロの政治的なメッセージだと考えられます。ただこのとき、中ロそれぞれの早期警戒管制機が管制しているので、まだ中ロは具体的な空軍の合同作戦ができるレベルにはないと思われます。
小泉 中国と爆撃機を飛ばすことで、ロシアが誰にどういうメッセージを出したのかを考えると、第一のオーディエンスは米国でしょう。2014年に米国との関係が決定的に悪化して以降、なかなかロシア包囲網を破れずにきました。いまロシアが使えるカードの一つは中ロ接近です。
小原 中国も米国に対して、中国は一国ではない、中ロは共同できるのだということを示そうとしたのだと思います。
ただ、中ロ合同パトロール後、ロシアのA-50早期警戒管制機による竹島領空侵犯事案が発生しています。これはロシの単独行動です。飛行の様子をみると、日本と韓国のスクランブル時の連絡体制、日韓協力体制を確認しようとしたと思われます。この行動が中国の思惑と合致していたのかどうかは疑問です。
 今後、中ロはどのように軍事協力をしていくのか。今秋にも中ロ軍事協力協定が結ばれるといわれています。その内容は明らかにされていませんが、想定されるのは、まずは航空システム間の航空目標情報の共有、哨戒非行等による情報収集の結果(目標情報、電波や画像情報など)の共有等です。こうした情報共有が進むと軍事的な共同が容易になります。
小泉 ロシアが「軍事協力協定」といった場合、基本的に同盟ではないので、あくまでも協力の範囲で、最低限の中ロ陸海空軍間のインターオペラビリティの確保、あるいは軍艦の寄港協定といったところから始められるでしょう。
中ロが共同の目標をもって、あるいは共同の脅威に対して一緒に軍事作戦をするのは、ユーラシア中央での対テロ作戦を除くときわめて稀ではないか。中ロ関係の現状は、ロシアの国際政治学者ドミトリー・トレーニン氏が協商(entente)と言い表すように、協力できるところでは協力するパートナーだろうと思います。
 

IMF全廃条約失効後のミサイル・核開発競争の行方

小原 日本として気になるのは、中距離ミサイル開発競争です。
中距離核戦力(INF)全廃条約は、米国が離脱したことで、今年8月2日に失効しました。米国はロシアが条約違反をしたことを理由にしますが、米ロ二国間の枠組みであるINF全廃条約の枠外で、中国が独自に中距離弾道ミサイル技術を自由に開発してきたことに対する不満もあっただろうし、最近では危機感にもつながっていたのではないか。
INF全廃条約が失効したことによってさまざまな影響が出てきます。これまでアジア太平洋地域においては中国が唯一、中距離ミサイルを用いた攻撃ができ、それによって米軍を近寄らせない「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略をとってきました。米国はこれに対抗するでしょう。現に、8月19日には中距離巡航ミサイルの発射試験を行い、中距離ミサイルを開発するのだという強い政治的メッセージを発しました。これにはロシアも反発し、同様のミサイルの開発を加速する構えです。
 さらに、核の問題も出てきます。ロシアは戦術核、低出力核を開発し、使う意思をみせています。米国はこれに対抗する。そうなると、低出力核にはこれまで関心を払ってこなかった中国もその開発・配備競争に参加せざるをえなくなるでしょう。
中国は米国に対して圧倒的に不利であるという認識をもち、米国の弱いところをつくということをやっています。冷戦期には米ソ2カ国が双方ともに対等だという認識があったので、相互確証破壊(MAD)によって核抑止が成立していましたが、いまの中国の認識では抑止は成り立ちません。
 このようにさまざまな種類、レベルのミサイルや核兵器の開発・配備が進む中で、どのような抑止の枠組み、ルールをつくっていくのか。その中にどのように中国を取り込むかは大きな問題です。
小泉 冷戦時代には米ソと中国の核戦力は100倍くらい差がありましたが、いまはせいぜい5倍くらいの差にまで縮まっています。米ロからすると中国の核戦力は無視できない。なおかつ米ロは新戦略兵器削減条約(新START)によって核弾頭数の上限が定められているのに、中国にはそれがなく、じわじわと増やしている。米ソ二極で軍備管理ができる時代ではなくなりました。
しかし、中国を軍縮の枠組みに取り込むのが難しいのは、一つは、中国にしてみれば、依然として5倍の差が開いているのになぜ不利な枠組みに入らなければならないのだという話になるし、もう一つは、英国やイスラエルなど他の核・ミサイル保有国はどうなのかという話になる。
 戦略核を規制する新STARTは2021年2月で失効します。中国を巻き込む新たな枠組みが必要です。2021年に向けて米ロがどういう取引をするか大きな焦点になるでしょう。
 

日本国内にミサイルは配備されるのか

小原 最終的には米国もロシアも戦争するつもりはなくて、軍備管理の枠組みをつくりたいのだとは思います。その枠組みに入るインセンティブをもたない中国をどう巻き込んでいくのかということになると、いったんは中国との軍拡競争が生まれる可能性もあります。
 一つ心配なのは、米国が中距離弾道ミサイルなり中距離巡航ミサイルで中国に対して力を誇示するとすると、いったいどこに配備するのかということです。
小泉 陸上配備用のトマホークの射程は長くても3,000キロメートルほど。その射程で中国の枢要部をカバーしようとすれば、政治的な制約を抜きにして考えると、場所は日本か韓国、フィリピン、台湾など。米国が日本に中距離ミサイルを置かせろという可能性はおおいにあります。
 ただ、難しいのは、日本には中国の中距離ミサイルによって深刻に安全保障を脅かされているという感覚はなく、軍事アセットをわが方に置けば、中国による先制攻撃対象になるのは目にみえている。陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)設置や在日米軍基地の辺野古への移設が大きな問題になっている上に、中距離ミサイルを設置するとなると、政府は相当政治的コストを背負い込むことになります。
 もう一つは、地上発射ミサイルを配備するとなると、相当広い範囲を逃げ回れる移動発射式でなければシステムとして脆弱です。はたして、日本でそれが可能な場所はあるのか。従来どおり、空中あるいは水中発射のプラットフォームを強化してもいいのではないか。米国の2018年の核戦力の指針「核態勢の見直し(NPR)」でも、潜水艦発射巡航ミサイルを開発するとしています。米国の持ち出すソリューションが最適なのかを、日米同盟内で真剣に議論してから日本国内に配備するかどうかの議論をすべきです。
小原 中ロの軍事協力の動向は、日本の安全保障政策にもかかわってきますし、核抑止のルールも考え直す必要がある中で、今後も注視する必要があるでしょう。本日はありがとうございました。

(ジャーナリスト 鈴木順子)


総括・交流グループ 北東アジア地域
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