平和構築支援グループでは、活動の柱の一つにいわゆるWPS(女性、平和、安全保障)アジェンダの推進を掲げております。この一環で、WPSアジェンダの起点となった国連安保理決議1325号採択から20年を経ても、和平プロセスへの女性の参画などを始めとして、WPSアジェンダ推進が当初期待された通りの成果を挙げられていない要因として、男性側からの関与を引き出す難しさ、また、実際にフィールドで構造的な変化を促すには、個々の社会に特有の文脈への理解が必要である点を課題と考え、2021年度より共同研究を実施しています。 具体的には、米国(ジョージタウンWPS研究所)、英国(Conciliation Resources)、東南アジア(Integral Knowledge Asia, International Center for Aceh and Indian Ocean Studies, Pattimura University, Mindanao State University- General Santos)のパートナー機関と共同で、東南アジアの3つの紛争経験地域から6,000名の男女のデータを収集し、ジェンダー平等やジェンダー規範、暴力の経験、メンタルヘルス、平和構築に対する満足度などに関するデータを収集して分析を行い、報告書として取りまとめました。
昨秋ジョージタウンWPS研究所(GIWPS)が、主に量的データを中心とした分析による報告書を刊行致しましたが(
https://giwps.georgetown.edu/wp-content/uploads/2023/10/Beyond_Engaging_Men.pdf)、もう一本、フォーカス・グループ・ディスカッションやインタビューなど、質的データも含めた形で各々フィールドのパートナー研究機関の研究者、活動家との共同で分析した成果を踏まえた報告書(『Reconstructing Masculinities: Gender dynamics after conflict in Aceh, Maluku and Bangsamoro Mindanao 』)が完成しましたので、日本時間3月19日午後18時より、Conciliation Resourcesブリュッセル支部と共同のローンチイベントで発表致します。
本報告書は紛争経験地域で実際に女性、男性が直面する課題を踏まえた内容となっており、先に刊行されたGIWPS報告書とあわせて、紛争経験地域におけるジェンダー力学と平和構築の複雑な関係性や、WPSアジェンダ推進のためなぜ男性性の理解が必要なのか等が議論されていますところ、ぜひご一読ください。