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第2グループ(平和構築支援担当)

インドネシア・ポソにおける脱過激化支援事業
「PROPOSOKU(プロポソク)プログラム」

2025.09.01
11分
写真1:タマンジェカ村(インドネシア中部スラウェシ州ポソ)
かつて武装グループの活動拠点となった森林地帯の集落

笹川平和財団では、インドネシアのハビビセンター(The Habibie Center)およびポソ市民社会強化研究所(LPMS)と連携し、インドネシア中部スラウェシ州ポソにて、暴力的過激主義からの離脱と社会復帰を支援するPROPOSOKU(プロポソク)プログラムを2022年より展開しています。

PROPOSOKUは、「支援する(PRO)」「ポソ(POSO)」「家族(SOKU)」を組み合わせた造語で、「ポソの家族を支援する」という理念を表しています。過激派組織に関与した人々やその家族が、地域社会の一員として再び歩み出すための支援を行う、包括的な取り組みです。

本プログラムは、元受刑者本人だけでなく、その配偶者にも実施されています。配偶者は家庭内での影響力を持ち、地域との接点を持つ重要な存在であり、彼女たちへの支援を通じて家族全体の価値観の変化や地域社会との関係構築が促進されます。

 

なぜポソでこの取り組みを?

インドネシア中部スラウェシ州に位置するポソは、人口約20万人の地域です。1998年から2001年にかけて、キリスト教徒とイスラム教徒の間で激しい宗教・民族間紛争が発生し、約1,000人が命を落とし、数万人が故郷を離れることを余儀なくされました。政府の仲介によって「マリノ合意」(2001年に締結された和平協定)が締結され、一時的な平和は実現しましたが、地域の分断と不信は今も根深く残っています。

その後、2000年代後半からは「東インドネシア・ムジャヒディン(MIT)」(インドネシアで活動するイスラム過激派組織)などの過激派組織が活動を開始し、ポソは再び暴力の舞台となりました。彼らは過去の紛争を正当化の根拠として利用し、「正義が果たされていない」というイスラム教徒側の被害者意識に訴えかけ、地域住民の共感を得ようとしています。

ポソでは、上述の紛争の歴史もあり、個人ではなく、家族や友人、地域コミュニティの関係性の中で、集団的に過激化が進んだと分析されています。実際、MIT指導者が軍の掃討作戦で死去した後に行われた葬儀には数千人が参列し、過激派組織への広い支持基盤があることも確認されています。さらに、宗教的・地理的な分断が今も続いており、イスラム教徒とキリスト教徒との間の異なるコミュニティの信頼構築は大きな課題となっています。

こうした背景から、ポソでは治安当局による軍事力による制圧や、あるいはイスラムの宗教教義の解釈の指導、矯正では不十分であり、刑期を終えコミュニティで社会生活を始める元戦闘員のニーズを踏まえた心理社会的な支援(心のケアと社会的つながりの回復を支える支援)、また元戦闘員へのスティグマを払しょくするための、地域全体を巻き込んだ包括的な脱過激化(過激思想からの離脱と社会復帰を支援する取り組み)の取り組みが求められています。PROPOSOKUプログラムは、こうした課題に向き合うために立ち上げられました。
図表1:インドネシア・スラウェシ島中部にあるポソの位置

アプローチ:心のケアと社会参加を組み合わせた支援

PROPOSOKUでは、心理学と社会環境の両面から人の変化を促す「心理社会的アプローチ」を採用しています。個人の考え方や感情の見直しから始まり、家族や地域との関係を再構築し、最終的には社会の一員としての自覚と役割を取り戻すことを目指しています。

このアプローチは、以下のような変化を重視しています:
  • 家族や近隣との関係改善
  • 異なる宗教・文化の人々との交流促進
  • 指導者に従うだけの関係から、自ら考え行動する主体へ
  • 他者の存在や価値を認め合う姿勢の醸成
  • 自分自身を「過激派」ではなく「地域の一員」として再認識
  • 暴力ではなく、対話や協力を重視する価値観への転換

実践:研修・クラス外活動・個別支援の三本柱

プログラムは、以下の三本柱で構成されています:

1.研修(6回シリーズ)
対人関係、リーダーシップ、SNS活用、交渉・説得技術、金融リテラシー、オンラインビジネスなど、社会復帰に必要なスキルを習得。

2. クラス外活動(9回の実践活動)
地域イベントへの参加や商品展示を通じて、社会との接点を創出。ポソ湖フェスティバルでは参加者が制作した商品を展示し、地域住民との交流を深めました。

3. 個別支援
月1回の家庭訪問や個別メンタリングにより、参加者それぞれの心理的・社会的課題にきめ細かく対応。
元受刑者たちの研修

写真2:元受刑者たちの研修

配偶者たちの研修

写真3:配偶者たちの研修

ポソ湖フェスティバルでの製品展示の様子
写真4:ポソ湖フェスティバルでの商品展示の様子

支援対象とインパクト

2022年から2025年の間に、元受刑者62名とその配偶者67名、計129名が直接支援を受けました。本プログラムは、元受刑者本人だけでなく、その配偶者にも実施されており、家庭内での影響力や地域との接点を持つ彼女たちへの支援を通じて、家族全体の価値観の変化や地域社会との関係構築が促進されています。さらに、彼らの家族167名(大人79名、子ども88名)が間接的な支援を受け、ポソ県8郡の住民約3万5千人がプログラムの恩恵を受けています。

笹川平和財団では、プログラムによって参加者に生じた心理的変化を、最新の「脱過激化」分野の研究に基づいて評価するため、同分野の第一人者である米国のMichael Williams博士に協力を依頼しました。Williams博士は、プログラムにより期待される「変化理論」の構築、質問票の作成、ならびに収集された量的データの分析を担当しました。

その結果、2023年度および2024年度の参加者データに基づき、脱過激化において重要とされる指標において顕著な変化が確認されました。具体的には、「ストレスへの耐性(レジリエンス)」は元戦闘員で41.3%、その配偶者で28.4%向上しました。「人生の目的意識」は元戦闘員で23.9%、配偶者で16.0%向上し、自尊心についても両者ともに約23%の向上が見られました。さらに、過激思想への支持は23.4%減少するなど、プログラムの効果を示す有意な変化が確認されました。
図表:心理社会的変化の定量的成果(レジリエンス、目的意識、自尊心、過激思想への共感の変化)
図表2:Michael Williams博士の評価における定量的データの分析結果(レジリエンス、人生の目的意識、自尊心、過激思想への支持低下)

特徴的な取り組み

・女性の役割に着目した支援

元受刑者の妻たちは、家庭内での影響力と地域との接点を持つ重要な存在です。彼女たちへの支援を通じて、家族の価値観を変え、地域のつながりを育む担い手として活躍できるようになります。

・多様な主体による支援ネットワーク

障害者団体、村長、宗教団体、女性団体、地元起業家など60名以上が参加するネットワークを構築。異なる宗教背景を持つ指導者たちの協力により、イスラム教徒とキリスト教徒地域の和解も進んでいます。

・経済的自立の支援

技術研修や資金提供、市場開拓支援を通じて、参加者が自らの力で収入を得られるよう支援。すべての参加者が何らかのビジネス活動に関わることを目標としています。

これまでの成果と今後の展望

プログラム開始以降、過激派組織への再加入や再逮捕の事例は確認されておらず、地域の安全性と結束力が向上しています。参加者は孤立から協調へ、不信から信頼へと価値観の変化を経験する中で、宗教や民族の違いを越えて地域イベントに参加するようになりました。

今後は、中央政府(国家テロ対策庁)への政策提言、地方政府や地域のNGOへの事業移管、市民社会の関与促進など、多層的な出口戦略を展開していきます。

PROPOSOKUは一時的な支援ではなく、地域に根ざした持続可能な平和づくりを目指す取り組みです。他地域への展開も視野に入れながら、現地パートナーとの協力を継続してまいります。

関連動画

PROPOSOKUプログラムに関連して、ハビビセンターが制作したYouTube動画もぜひご覧ください(インドネシア語ですが、自動翻訳機能で日本語字幕の表示が可能です)。
 
 
 

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