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太平洋島嶼地域ブレーキングニュース 研究員の解説付きPACNEWS厳選記事

フォーラム首脳、中国による太平洋上空でのミサイル発射実験を受け事前通告を要求、ナウルは反対

(2026年9月4日、コロール、PACNEWS)


13分

抄訳

Pita Ligaiula記者署名記事
 
太平洋諸島フォーラム(Pacific Islands Forum: PIF)の首脳らは、中国が最近実施した大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験について懸念を表明し、ICBM実験を行う国に対し、少なくとも24時間前までの事前通告を求めた。この実験では、十分な事前通知がないまま複数の太平洋島嶼国上空をミサイルが通過したとされる。
 
しかし、フォーラム議長を務めるスランゲル・ウィップス・ジュニア・パラオ大統領は、ナウル共和国(Republic of Nauru(原文ママ))が首脳らの立場に反対したことを明らかにした。
 
ウィップス大統領は首脳会合の結果を発表する際、「ナウル共和国は異議を唱えたことを申し添えたい」と述べた。
 
首脳コミュニケでは中国の名指しは避けられたものの、この呼びかけは、中国が最近実施した太平洋地域横断型の弾道ミサイル発射実験に対する懸念を受けたものである。
 
首脳らは、ICBM実験を実施する国は国際慣行に従い、事前通知を行い、透明性と安心感の確保に努めるべきだと強調した。
 
コミュニケでは、「首脳らは、ICBM実験を実施するすべての国に対し、少なくとも24時間前の事前通告を含め、透明性と安心感を確保するよう求めた」と述べられている。
 
ウィップス大統領は、首脳らがミサイル実験への懸念を記録することで合意した一方、ナウルはその文言を支持しなかったことを明確にしたと説明した。
 
コミュニケによれば、首脳らは、十分な事前通知なしに複数のフォーラム加盟国上空を通過した最近のICBM実験について「懸念を表明した」。
 
さらにコミュニケは、「首脳らは、すべての国がICBM実験を実施する際には、平和の青い太平洋宣言(Blue Pacific Ocean of Peace Declaration)およびラロトンガ条約(Treaty of Rarotonga、南太平洋非核地帯条約)に整合し、フォーラム加盟国の主権を尊重することの重要性を強調した」と述べている。
 
ミサイル問題が議論される中、フォーラム首脳は地域の平和と安全保障の主要な枠組みとして、地域安全保障に関するボイ宣言(Boe Declaration on Regional Security)および平和の青い太平洋宣言(Blue Pacific Ocean of Peace Declaration)を改めて支持した。
 
首脳は、地域が地政学的緊張、国際的組織犯罪、気候変動、経済的混乱、新たな戦略的リスクなど、従来型・非従来型の安全保障上の課題に直面していると指摘した。
 
また、気候変動が引き続き太平洋地域の人々とコミュニティの生計、安全保障、福祉に対する最大の脅威であることを改めて確認した。
 
さらに首脳らは、加盟国主導で十分な資源を確保しながら実施を進めることを求め、地域平和安全保障行動計画(Regional Peace and Security Action Plan 2026-2030)を承認した。
 
フォーラム首脳らはまた、国際的組織犯罪や違法薬物取引への協力強化を目的とする地域メカニズム案であるワンガ・モアナ・コンセプト(Waqa Moana Concept)についても原則的に合意した。
 
このメカニズムは、情報共有、調整、海上安全保障協力を強化することを目的としているが、首脳らは各国でさらなる協議が必要であるとした。
 
コミュニケはさらに、違法薬物や広範な越境犯罪がもたらす社会的影響に対する統合的な対応を求めた。
 
首脳らは、予防、治療、更生および地域社会のレジリエンス強化を地域的対応の一部とすべきであるとの認識を示した。
 
また、地域の防災・人道支援対応能力を強化するため、太平洋地域人道支援対応調整メカニズムに関する政策及び運用ガイドライン(仮)(Pacific Humanitarian Response Coordination Mechanism Policy and Operating Guidelines)も承認した。
 
安全保障分野におけるもう一つの重要な決定として、首脳らは太平洋警察閣僚会議(Pacific Police Ministers Meeting)をフォーラムの制度的枠組みに組み込むことについて原則合意した。
 
さらに、太平洋安全保障長官会議(Joint Heads of Pacific Security:JHOPS)を地域の平和・安全保障アーキテクチャの一部として正式に位置付けることでも合意した。
 
今後、ガバナンス、制度設計および加盟資格に関するさらなる協議が行われる予定である。
 
首脳らは、最終的な制度設計は地域協力の調整機能を強化し、加盟国の能力や財政負担を考慮し、既存の仕組みを補完するとともに、不必要な重複を避けるものでなければならないと述べた。
 
また、地域の危機対応能力や安全保障上の脅威への対応強化に向けた提案についても検討を行った。
 
首脳らは、提案されている地域統合危機対応メカニズム(仮)(Integrated Regional Response Mechanism)および地域運用展開枠組み(仮)(Regional Operations Deployment Framework)に関する議論が継続中であり、さらなる協議が必要であることを確認した。
 
さらに、ソロモン諸島政府が提案した平和の青い太平洋地域安全保障条約(Blue Pacific Ocean of Peace Regional Security Treaty)の構想についても認識を共有した。
 
首脳らは加盟国に対し、この提案について引き続き検討を進めるよう促したが、いかなる決定を下す前にも追加協議が必要であるとした。
 
今回のナウルの反対は、ミサイル実験に対するフォーラム全体の懸念と事前通告要求という方向性には大きな支持があったものの、最終的な立場について加盟国全体の一致には至らなかったことを浮き彫りにした。


※元記事および今回のウィップス大統領の発言において、Republic of Nauru、Nauruが使用されています。

コメント

2026年8月30日から9月3日、パラオで第55回太平洋諸島フォーラム首脳会議(年次総会)が開かれました。8月30日から9月1日の、CSO、対話パートナー、太平洋地域機関評議会(CROP)機関などさまざまなアクターと首脳の対話を経て、9月2日に本会議、9月3日に首脳のみの本音の議論の場であるリトリートが行われコミュニケが発出されました。
 
さまざまなメディアが注目していた7月の中国によるSLBM実験への対応については、ラロトンガ条約(南太平洋における核実験、核物質による汚染、核兵器による威嚇などの禁止)に反するのもではなく、予想通り、国名を明記せず、Ocean of Peaceの文脈で記載されるにとどまりました。首脳コミュニケ(全76のパラグラフ)における該当部分原文は以下のとおりです。
 
“29 Leaders, in recalling the Blue Pacific Ocean of Peace Declaration, registered concern on the recent intercontinental ballistic missile (ICBM) test which overflew a number of Members without adequate notice. Leaders called on all States undertaking ICBM testing to ensure transparency and reassurance including through the provision of advance notification of at least 24 hours in accordance with international practice. Leaders emphasised the importance of all States conducting ICBM tests to do so consistently with the Blue Pacific Ocean of Peace Declaration, Treaty of Rarotonga and in respect of the sovereignty of Forum Members."
(仮訳)
「パラグラフ29 首脳は、Blue Pacific Ocean of Peace Declarationを想起しつつ、十分な事前通告なしに複数の加盟国上空を通過した最近の大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験について懸念を表明した。首脳らは、ICBM実験を実施するすべての国に対し、国際慣行に従い、少なくとも24時間前の事前通告の提供を含め、透明性および安心感の確保を求めた。首脳らは、すべての国がICBM実験を実施するに当たり、Blue Pacific Ocean of Peace DeclarationおよびTreaty of Rarotongaと整合的に行うこと、ならびにフォーラム加盟国の主権を尊重することの重要性を強調した。」
 
今回の首脳会議は、ソロモン諸島のワレ首相はリロ財務大臣ら3大臣が離脱し不信任動議を議会事務局に提出したことを受け8月30日に急遽帰国したため(その後、3大臣のうち1名が議会与党に戻り、議会野党側から数名が与党に加わったことで9月7日に不信任動議は取り下げられた)外相が出席、フィジー、サモア、バヌアツ、ニューカレドニアが閣僚級、キリバスは特使(前駐中国大使)の参加となりました。毎年開催される首脳会議において、すべての首脳が揃うことはなかなかありませんが、それでも今回のフォーラムへの首脳級の参加は18加盟国・地域のうち12カ国、さらにコミュニケについてナオエロが離脱し、11カ国となり、やや寂しい状況となりました。
 
PIFの枠組みでは、2024年頃から地域秩序構造の再編(具体的には地域機関の再編)の議論が進んでいます。この場合の地域機関とはCROP(太平洋地域機関評議会)機関のことであり、PIF事務局がCROP事務局、他にSPC(科学技術)、FFA(漁業)、 SPREP(環境)、USP(教育)、 SPTO(観光)、PASO(航空安全)、 PPA(電力)、 PIDP(開発・人材開発:米国・北太平洋諸国との繋がり)があります。いくつかの機関をPIFSの一部門として吸収する話があるようですが、安全保障担当機関はありません(安全保障が対象となる部局はPIF事務局内にあります)。
 
一方で近年、2018年のボイ宣言、2022年の2050年戦略、2025年の平和の海洋宣言などにみられるように、地政学的競争の激化や麻薬問題をはじめとする越境犯罪の増加を背景として、太平洋島嶼国自身が当事者として地域安全保障により深く関与しようとする動きが顕在化しています。また、これまで主として米国、豪州、ニュージーランドが基盤を維持してきた伝統的安全保障の分野についても、島嶼国側が積極的に言及するようになっています。
 
そうした中、今回のPIF首脳会議では、記者のピタ氏が取り上げているとおり、軍事・防衛や警察を含む安全保障分野を担う地域機関、あるいは地域部門の創設に向けた動きがみられます。これまで伝統的安全保障、越境犯罪対策、災害対応、海洋安全保障などの分野で実務的に進められてきた取組が、今後、地域安全保障機関として一体的に整理・集約されていくのかどうか、その行方が注目されます。
 
 
(2026年9月9日 塩澤英之 海洋政策研究所島嶼国・地域部部長)

海洋政策研究所(島嶼国・地域部)
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