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太平洋諸島フォーラム、福島原発廃水処理水(the Fukushima treated nuclear wastewater)に関する強い懸念に対処することを表明

(スバ、2023年6月26日、PIFS/PACNEWS)


17分

抄訳

太平洋諸島フォーラム(PIF)は、青い太平洋、そこに暮らす人々、そして将来の展望の健康と安全に対する核汚染の潜在的脅威の重大性に対する強い懸念に、引き続き全力で取り組んでいく、とヘンリー・プナ事務局長は語る。
 
日本が2021年4月に決定を発表する前から、2020年12月に南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)の締約国として初めて会合を行った太平洋諸国は、「2011年の福島第一原子力発電所事故による環境への影響への懸念を想起(recalled)し、太平洋へのいかなる潜在的な被害に対処するために必要なあらゆる措置を講じるよう日本に求めた」。
 
また、「国際法上要求されるように、他国の領土・領海(territory)に対する重大な越境的被害を防止するため、自国の領土・領海(territory)、管轄権、管理権の範囲内であらゆる適切な措置をとるよう各国に求めた」。
 
これらの重要な声明は、ラロトンガ条約が太平洋諸国に課している、太平洋における核実験の負の遺産(legacy)と太平洋の人々の健康、環境、人権に対する永久的な影響を考慮した、「投棄の防止」(第7条)という独自の義務を含む、主要な国際法上の規則と原則に由来するものである。
 
したがって、太平洋諸国(Pacific states)は、「何人によるものであれ、放射性廃棄物(radioactive wastes)その他の放射性物質(radioactive matter)の投棄(dumping)を防止」し、「南太平洋非核地帯(the South Pacific Nuclear Free Zone)内のいかなる場所においても、何人によるものであれ、放射性廃棄物その他の放射性物質の海洋(at sea)での投棄を援助または奨励するいかなる行動も取らない」法的義務を負っている。
 
プナ事務局長によれば、核汚染問題に対するPIFによる具体的な懸念は今に始まったことではなく、長年にわたり、他国による太平洋への核廃棄物投棄(dump nuclear waste)の試みに対処してきた。首脳たちは、日本や他の海運国に対し、「核廃棄物を太平洋に保管したり投棄したりするのではなく、自国で保管したり投棄したりするよう」求めてきた。  
 
1985年、フォーラムは、「日本は、この地域のコミュニティが表明した懸念を無視して、放射性廃棄物(radioactive waste)を太平洋に投棄する(dumping)意図はない(Japan had no intention of dumping radioactive waste in the Pacific Ocean in disregard of the concern expressed by the communities of the region)」という日本の首相(中曽根首相、当時)の声明を歓迎した。
 
「このような地域的背景に反して、今回の前例のない問題に対するフォーラムの関与は、私たちの青い太平洋にとって、これは単なる核の安全の問題ではないということを意味する。これは核の負の遺産(legacy)、私たちの子供たちや将来の世代の未来に関わる、海洋、漁業、環境、生物多様性、気候変動、健康の問題なのである。私たちの太平洋の人々は、日本の計画から得るものは何もないが、何世代にもわたって多くのリスクを抱えることになる(Our people do not have anything to gain from Japan's plan but have much at risk for generations to come)。」
 
「この目的のために、科学的議論は、現代の科学的発展に留意し、すべての太平洋諸国を含むこれらの基準の法的拘束力のない性質にも留意しながら、福島のケースに対する現在の国際核安全基準の適切な応用と妥当性を検討することに繋がった。」
 
「重要なことは、これは国境を越え、世代を超えて重大な影響を及ぼす問題(an issue of significant transboundary and transgenerational impacts)であり、意図的(deliberate)で一方的な大量の核廃棄物の海洋投棄(unilateral dumping of high volumes of nuclear waste into our ocean)の前例となる可能性があるということだ。このこと自体、あらたな「核実験」活動の負担を負うべきでない太平洋島嶼国にとって、大きな影響と長期的な憂慮をもたらす。海洋投棄(ocean dumping)の代替案を含む新たなアプローチが必要であり、責任ある前進の道である。」
 
「実際、前進するためには、特に影響を受ける国々との包括的な国際協議が必要であり、IAEAのプラットフォームだけでなく、1982年のUNCLOSや、廃棄物等の投棄による海洋汚染の防止に関するロンドン条約および議定書など、海洋および海洋環境保護に関する権限を有する他の関連プラットフォームを通じて行われるべきである。」
 
「ちょうど今週、我々はBBNJ(国家管轄権外区域における生物多様性)の導入を祝うとともに、経済的、生態学的、文化的価値のある生物資源のために太平洋の健全性を守る1982年UNCLOS(国連海洋法条約)の成功を振り返った。」
 
「我々は、この問題に関して、科学的、政治的、そして世論的にも、見解の相違を耳にし続けており、これはこの問題に対する世界的な関心の高さの表れである。PIFの独立した科学専門家パネルは、日本やIAEAの専門家だけでなく、原子力(nuclear power)、放射線、高エネルギー物理学、海洋環境科学、海洋学、海洋放射化学を含む様々な関連分野の世界的な専門家たちとも集中的に対話を続けている。私もまた、日本、PIF加盟国首脳、広範なステークホルダーと対話を続けている。この問題について共通の理解を得るためには、より多くの作業と対話が必要であることは明らかだ」とプナは声明で強調した。
 
「したがって、より多くの時間と十分な注意-予防原則-が、2021年7月の日本とのPALM9会議(第9回太平洋・島サミット)以来、太平洋の首脳たちが強調してきたように、国際協議、国際法、独立した検証可能な科学的評価を通じて継続的に関与するために非常に重要である。」
 
「私は、日本の岸田文雄首相がフォーラム議長と首脳に対し、すべての当事者が安全であることを確認し、信頼と友好の精神に基づく関係に合意するまで、日本はALPSの核廃水処理水を排出しない。(Japan will not discharge the ALPS treated nuclear wastewater until such time that all parties agree that it is verifiably safe to do so and based on a relationship built of trust and in the spirit of friendship)という確約を表明したことに、引き続き心を打たれている」とプナ事務局長は述べた。

コメント

プナPIF事務局長による声明文は次のリンク先で確認できます。
 
https://www.forumsec.org/2023/06/26/statement-pacific-islands-forum-secretary-general-henry-puna-on-the-fukushima-treated-nuclear-wastewater/
 
ざっと記事を確認したところで、まずプナ事務局長声明で気になる文や言葉を列記してみます。
・ラロトンガ条約は、南太平洋非核地帯の海洋での放射性廃棄物(radioactive wastes)その他の放射性物質(radioactive matter)の投棄(dumping)が対象
・フォーラム(これが首脳のフォーラムとしてのPIFなのか、PIF事務局なのかがはっきりしない)は、核廃棄物投棄(dump nuclear waste)の試みに対処する
・日本は、1985年、radioactive wasteをdumpingすることはないと約束した。
・これは国境を越え、世代を超えて重大な影響を及ぼす問題である。
・前進するためには、特に影響を受ける国々との包括的な国際協議が必要であり、IAEAのプラットフォームだけでなく、1982年のUNCLOSや、廃棄物等の投棄による海洋汚染の防止に関するロンドン条約および議定書など、海洋および海洋環境保護に関する権限を有する他の関連プラットフォームを通じて行われるべきである。
・日本の岸田文雄首相がフォーラム議長と首脳に対し、すべての当事者が安全であることを確認し、信頼と友好の精神に基づく関係に合意するまで、日本はALPSの核廃水処理水を排出しない。(Japan will not discharge the ALPS treated nuclear wastewater until such time that all parties agree that it is verifiably safe to do so and based on a relationship built of trust and in the spirit of friendship)という確約を表明した
 
次に私個人として受けた印象や疑問は次のとおりとなります。。
・PIF事務局が、冷静さを欠き、一切の説明を理解していない立場であることがわかる。すなわち、特に今年の2月以降、日本政府が、科学データを示し、説明してきたものを、この声明で切り捨て、1月の段階に戻っている。
・それが安全であろうと、何が何でも海洋放出を認めない立場であり、PIF事務局には何を言っても無駄。
・ラロトンガ条約締約国の義務というが、これまで太平洋に排水している他の原子力施設に対して何か対応してきているのか。大いに矛盾がある。
・ALPS処理水を核廃棄物海洋投棄であると認識し、さらにその影響を核実験と同等と認識している。それを許そうとしている日本と日本人と認識しているとすれば、自分としては侮辱されているように感じる。
・海洋に流さず、陸上で対処しろという主張を維持。前回記事のフッカー氏などの説明では、ALPSで分離した放射性物質は核廃棄物として陸上で貯蔵されるが、そういったことがPIF事務局には理解されていない。
・さまざまな国際条約を列記しているが、例えば、ロンドン条約では核廃棄物の海洋投棄は対象となるが、処理水の陸からの放出は対象外のはず。
・対話が必要というが、PIF事務局側には安全性を証明しても理解しようとする意思もなく、いつまでもALPS処理水の海洋放出=核廃棄物の海洋投棄という考えが変わらないということは、対話は成立しない。PIF事務局というのは対話できる相手ではないのではないのではないか。
・最後の岸田総理の発言に対する部分だが、all parties agree、すべてのステークホルダーの「合意」と発言していたでしょうか。外務省HP(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/pif/page6_000807.html)によれば「3. 岸田総理大臣から、ALPS処理水の海洋放出に関し、日本国民及び国際社会に対して責任を有する日本の総理大臣として、自国民及び太平洋島嶼国の国民の生活を危険に晒し、人の健康及び海洋環境に悪影響を与えるような形での放出を認めることはないことを改めて約束する旨述べました。これに対し、PIF側は、ALPS処理水の海洋放出の安全確保に対する岸田総理大臣の決意を歓迎するとともに、引き続き日本と緊密なコミュニケーションを希望する旨述べました。両者は本件に関する集中的な対話の重要性につき一致しました。」とあります。プナ事務局長のこのような発言の部分は、切り取られて今後も広がっていく可能性があるかもしれません。

PIF事務局というのは、首脳の合意に基づく活動を行い、首脳の合意に基づき必要とされる報告を首脳にあげる役割がありますが、加盟国の主権、外交権、政治判断の上位に立つ組織ではありません。そういった背景からも、PIF事務局長が発言する際には、加盟国首脳の総意である必要があります。
 
2019年2月にミクロネシア諸国が脱退の動きを始めたのは、当時のテイラー事務局長がPIFとして中国との関係を強化したいというような発言をしたことで、これが加盟国の中の台湾承認国の立場を越えた発言であったことがきっかけでした。
 
今回のプナ事務局長の発言は、先日日本の取り組みに支持を公式に書簡を出して表明したパラオのウィップス大統領に対してチャレンジし、顔に泥を塗るような内容であり、PNGマラぺ首相の立場についても批判する形になります。ラロトンガ条約事務局という立場であれば、パラオは外れますが、それでもPNGは含まれます。
 
加盟国首脳はその立場で政治判断をしているのであり、これを無視するかのようなこのPIF事務局長の態度は今後問題視される可能性があるでしょう。
 
日本は、十分に誠意を尽くし、丁寧に説明をしてきました。そもそもPIF事務局には加盟国の外交権や政治判断に対する何の権限もありません。ラロトンガ条約締約国には義務がありますが、ALPS処理水の日本の陸域からの放出は対象ではありません。今回の声明を読む限り、冷静に理解する意思がなく、合理的でもなく、いろいろな理由をつけて先延ばしをしようとしているのであり、PIF事務局の地域政策調整機関としての能力に疑問符が付きます。そのようなPIF事務局との話はそろそろ終えて良いのかもしれません。
 
二国間ベースで理解を広げ、あとは日本の責任で決断すればよい、そういった段階になっていると思います。放出開始後に、PIF事務局は日本を非難するようなキャンペーンを張ることや、日本のPIFオブザーバーステータスの解除、来年予定されているPALM10のボイコットをカードとして使うことも考えられます。しかし、少なくともいくつかの太平洋島嶼国は冷静に理解しているのであり、今後も合理的な判断をする国が増える期待もあります。これを機に、日本・PIF首脳会議の形から、新太平洋・島サミット(新PALM)への発展を検討するのも日本側のオプションとして確保して良いように思います。
 
一言で言えば、今回のプナ事務局長の声明は、地域で冷静に日本の立場を理解する国や人々が増えている流れに対するPIF事務局の危機感の表れだと考えられます。
(塩澤英之主任研究員)

海洋政策研究所(島嶼国・地域部)
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