例えば、フィジーの先住民系の土地(他には国有地や売買可能の土地が少ない割合で存在する)は個人ではなくマタンガリといわれる士族(クラン)の枠組みによる共同所有となっています。その氏族の人は生まれた時から土地の権利を持つことになっています。例えば、海外の企業などに土地を貸す場合、バイニマラマ政権以前は、その氏族の長などに借地料が支払われ、その氏族の長が他の士族の人々にお金を配るということが行われていたといいます。バイニマラマ政権の改革では、iTaukei Land Trust Board(TLTB)という政府機関が仲介する立場となり、赤ちゃんや未成年者の区別なく、土地の権利者すべてに口座を開設し、借地料を均等に入金するということが行われるようになりました。これにより士族の長の権威は落ちますが、士族全員が正当な権利が守られたとも言えます。先住民系の中ではこれを批判する人もいれば、批判しながらも心では称賛しているという人々も現れるようになりました。
また、かつてフィジーでは伝統的首長によるGreat Council of Chiefs(GCC、伝統的首長大評議会)というものが、実質的に選挙によって選ばれた議員による議会の上位に位置付けられていましたが、新憲法の下で廃止されました。伝統的権威と現代社会の分離を意図したものと考えられています。さまざまな議論がありますが、政府ポストにおいても基本的に実力主義であり、インド系だけでなく、先住民系フィジー人の平民も、実力があればポストを獲得できるようになりました。さらに、コロナ前までは税制改革、内需拡大、海外からの投資促進を含む経済財政改革、外交関係の多様化に成功し、2013年頃からは年3.5%を超える経済成長を達成してきました。これは先住民系(野党支持者が多い)の平民の生活改善にもつながっていました。