2. 協定に基づくPIF枠組み
協定というのは2000年の「PIF事務局設立協定(AGREEMENT ESTABLISHING THE PACIFIC ISLANDS FORUM SECRETARIAT」と2005年の「PIF設立協定(AGREEMENT ESTABLISHING THE PACIFIC ISLANDS FORUM)」のことで、後者が前者の改訂版になり、昨年8月にフィジーが批准したことで発効しました。
PIFの枠組みにおける地位には、①加盟国・地域(Member)、②準加盟地域(Associate Member)、③オブザーバー(Observer)があります。日本、米国、中国など開発パートナーは、域外対話国(Forum Dialogue Partners)になります。
メンバーシップについては、最近では2017年に仏領のニューカレドニアと仏領ポリネシアが加盟し、2022年7月にはキリバスが脱退しています(正式プロセス開始は2021年7月)。当時、2005年協定は発行していなかったため、いずれも2000年協定に基づいた手続きが行われました。
ここで、2つの協定におけるメンバーシップについて確認してみます。
2000年協定では、第1条「The Pacific Islands Forum」の「1. For the purposes of this Agreement, the Pacific Islands Forum comprises the Heads of Government of Australia, the Cook Islands, …..(省略)… and such other Heads of Government as may be admitted to the Forum membership with the approval of the Forum」とあるように、フォーラムの承認があれば、「政府首脳(Head of Government)」が加盟対象であると規定されています。
2005年協定 については、同じく第1条「The Pacific Islands Forum」の「2. The Forum comprises … (省略)…; and such other states as may be admitted to Forum membership with the approval of the Forum Leaders and in accordance with Article XI.」とあり、「state」が加盟対象に変化しています。
同じ2005年協定第1条ではさらに「3. Territories in the Pacific islands region may be admitted to associate membership of the Forum, if a request for associate membership is approved by the Forum Leaders. …(省略)」とあり、「territory」は準加盟と規定されています。
さらにオブザーバーについては、「4. The Forum Leaders may as they see fit invite other territories, and intergovernmental organizations whose membership includes a significant number of Forum members, to be Forum observers. …(省略)…」
1971年に設立されたPIFの1995年までの加盟国の歴史的過程を見れば、太平洋島嶼国が主権を確保し、独立国としての地位を勝ち取ったことでようやく正式に加盟が認められていました。明文化されていませんでしたが、PIFメンバーシップというのは独立国のステータスでもあったわけです。それが未独立地域の独立機運を支える面もありました。しかし、PIF事務局の財政難も背景にあり、2017年にまだ独立していないニューカレドニアと仏領ポリネシアの加盟が認められたことでその価値は変化しました。
ただし、上記でわかるとおり、2017年時点では2005年協定は発効しておらず、「Heads of Government」が対象であったことから、この仏領2地域の加盟は問題はありません。一方で、現在発効している2005年協定においては、territoryとstateを明確に区別しており、領土である「territory」に対して、stateは「国家」あるいは十分に主権・自治権を有する地域を指すものと考えられます。
今回の米国・太平洋島嶼国サミットでは、PIF加盟国・地域を対象としていたため、仏領2地域も招待され参加していましたが、ここには米領であるグアムの加盟を認めさせる狙いも含まれていたのかもしれません。しかし、繰り返しになりますが、現在の2005年協定では「Head fo Government」ではなく「state」が加盟対象であるため、反対する加盟国・地域があるとすれば、「state」の定義を追求することも考えられます。