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太平洋における気候変動対策に関する
豪州の誓い
(2022年6月3日、アピア、RNZ PACIFIC/PACNEWS)
11分
抄訳
豪州外相は(サモアの首都)アピアにおけるサモア首相との会談後、気候変動に対するより強い対策をとるという豪州の約束を誓った。
外相就任後2週間足らずのペニー・ウォン豪州外相であるが、サモアはフィジーに続く2カ国目の太平洋島嶼国訪問となった。
ウォン外相は、豪州新政権は気候変動対策を公約に掲げて選出されており、気候変動がサモアおよび全ての太平洋島嶼国にとってどれだけ重要な問題であるかを理解しているとし、「今やこれまで以上の対策が求められている。」「我々は太平洋の家族に対し、豪州独自の貢献を行いたいと考えており、最も大切なことだが、我々はより強力な気候変動対策の深いコミットメントを明確にしたい。」と述べた。
サモアのフィアメ・ナオミ・マタアファ首相は、気候変動はサモアと豪州の両政府にとって優先度が高く、サモアそして当然ながら太平洋地域は、新しい豪州政権の気候変動政策の転換をとても歓迎しているとし、「政策転換は、豪州を、気候変動に対する太平洋島嶼国の姿勢により近づけることになる。」「我々は、このことが気候変動に対する太平洋島嶼国のポジションを強化させ。特に気候変動の影響への適応については、我々はこれまで豪州と緊密に協力してきた。」と述べた。
(訳:塩澤英之主任研究員)
コメント
太平洋島嶼国14か国にとり、国の存続にかかわる安全保障上の唯一最大の脅威は気候変動です。勢力の強いサイクロンも現地では気候変動の影響によるものとされていますが、カテゴリー4や5のサイクロンが直撃すれば、その土地にある集落は爆撃を受けたかのように大変な被害を受けることになります。海面上昇、高潮による被害、干ばつ、集中豪雨による洪水、沿岸浸食、サンゴ礁生態系への悪影響など、太平洋島嶼国の人々が直面している現実的な脅威と、気候変動が直接関係していると認識されています。
このような彼らの最大の安全保障上の脅威=気候変動の原因は何か。彼らは世界の温室効果ガス排出量にあると認識しており、特にパリ協定採択(2015)以降、世界に1.5度目標を実現すべく即時行動を起こすよう求め続けています。例えば、新しい火力発電所や石炭の採掘と利用を非難するようになりました。
このような状況の中、同じ太平洋地域の国であり歴史的にも関係の深い豪州では石炭産業を潰すことは考えられず、太平洋島嶼国側の豪州に対する不満は高まってきました。
2018年9月にナウルで開催された第49回太平洋諸島フォーラム首脳会議では、地域安全保障協力のためのボイ宣言がまとめられましたが、太平洋島嶼国側の気候変動を唯一最大の脅威とし一番目の安全保障対象とすべきとの主張に対し豪州がこれに難色を示し、合意に至るまで多くの時間を要しました。
2019年8月にツバルで開催された第50回太平洋諸島フォーラム首脳会議においても、豪州は態度を変えることはなく、「中国の方が真剣に気候変動対策を行っている」「中国の方が良い」と主張する太平洋島嶼国の政府関係者も現れました。これが直接の要因ではありませんが、その翌月、ソロモン諸島とキリバスが台湾から中国に国交を切り替えました。
この2018年、2019年ごろから、フィジーは豪州と太平洋の家族として協力しあうとする「ブバレ協定」を結びましたが、概して太平洋島嶼国側は豪州を太平洋島嶼国への脅威をもたらす原因を作っている国として、やり玉に挙げられるようになりました。先進国と太平洋島嶼国の間にも、気候変動に関し、一つの線が引かれました。この場合、中国は途上国側になります。
今回の王毅外相の太平洋島嶼国歴訪について、米国、豪州、NZ、日本など先進国側は、「中国」の動向に対し強い懸念を示し、さまざまな動きを見せてきましたが、太平洋島嶼国にとっての脅威は気候変動であり、おそらく多くの太平洋島嶼国側には「大国間の争いは分かったが、あなた方の問題だ。我々の唯一最大の脅威である気候変動対策を忘れるな」という考えがあったはずです。
気候変動対策として、適応と緩和という2つの対象があります。適応とは気候変動にもたらされる変化に対して対応することであり、防災や強靭なインフラ整備が含まれます。一方、緩和は温室効果ガス削減、現在は1.5度目標(2030年までに2010年比で45%削減、2050年までにカーボンニュートラル=実質排出量ゼロ)の実現が含まれます。適応については、豪州も長年にわたり支援を行っていますが、上述の石炭産業を守らなければならに豪州にとって、緩和への行動は大変難しいものでした。
今回、1つは労働党への政権交代、もう1つは中国の影響力拡大が要因となり、本記事にあるように、豪州が気候変動に関する政策転換を約束しました。これは太平洋島嶼国側にとって非常に大きな成果となります。太平洋島嶼国側が、壮大な地域計画として自らが有利となるように、豪州選挙に合わせて中国カードを使ったかのようにも見えます。
太平洋島嶼地域における中国の動向の目的は、①台湾承認国の削減、②地域機関における地位の確保、③地域拠点(経済)・在留中国人の保護にあり、1990年代から2013年頃までは、各国のニーズと先進国の隙間を埋める形で、太平洋島嶼国への関与を続けていました。ところが2013年に習近平国家主席が誕生し、一帯一路構想が発表されると、それまで太平洋島嶼地域でランダムに行われてきた支援が、戦略的に面として繋がって見えるようになりました。そして、実際に2014年の習近平国家主席のフィジー訪問以降の活動は、地域におけるプレゼンス強化に繋がっています。そして、昨年11月のソロモン諸島での暴動をきっかけとして、さらに踏み込み、地域秩序構造の根幹部分にある法執行、さらには伝統的安全保障分野への関与を目指すようになりました。
さて、太平洋島嶼地域を中台関係という切り口で見た場合、2000年前後の10年間と現在の状況が似ています。2000年代半ばから現在の変化を見れば、台湾承認国が6から4に、中国と国交を有する国が8から10と大きく情勢が変化しましたが、2000年前後の10年間は次のように、より複雑な状況でした。
1996年 中台関係緊張(第三次台湾海峡危機)
1997年 香港返還
1998年 トンガ:台湾⇒中国、マーシャル:中国⇒台湾、
キリバス:中国がタラワに衛星追跡施設(民用)を設置
2002年 ナウル:台湾⇒中国
2003年 キリバス:中国⇒台湾
2004年 バヌアツ:財政赤字補填求め、中国⇒台湾(数時間、不成立)⇒中国
2005年 ナウル:中国⇒台湾
台湾承認国をみると(中国と国交のある国にはクックとニウエが含まれる)
1997年末:パラオ、ナウル、ツバル、トンガ、ソロモンの5カ国(中国9カ国)
1998年末:パラオ、ナウル、ツバル、マーシャル、ソロモンの5カ国(中国9カ国)
2002年末:パラオ、ツバル、マーシャル、ソロモンの4カ国(中国11カ国)
2003年末:パラオ、ツバル、マーシャル、ソロモン、キリバスの5カ国(中国9カ国)
2005年末:パラオ、ツバル、マーシャル、ソロモン、キリバス、ナウルの6カ国(中国8カ国)
※現在(2019年9月末以降)パラオ、ツバル、マーシャル、ナウルの4カ国(中国10カ国)
このように1990年代後半から2000年代半ばまで、太平洋島嶼地域では中台間の目まぐるしい勢力争いがあり、いずれも小切手外交と呼ばれていました。一方、2006年から2019年頃までは安定しており、2013年頃まで中台間に現状維持のコンセンサスがあったかのようです。
さらに太平洋島嶼国を国別でみると、次のとおりとなります。
※国交切替があった国
トンガ(台湾⇒1998中国)
マーシャル(中国⇒1998台湾)
ナウル(台湾⇒2002中国⇒2005台湾)
キリバス(中国⇒2003台湾⇒2019中国)
ソロモン(台湾⇒2019中国)
※一貫して台湾
パラオ(台湾)
ツバル(台湾)
※一貫して中国
ミクロネシア連邦(中国)
パプアニューギニア(中国)
バヌアツ(中国)※2004年に台湾への切り替えを模索(中国に財政赤字補填求め)
フィジー(中国)
サモア(中国)
クック(中国)
ニウエ(中国)
クックとニウエは国連未加盟であるため台湾にとって魅力はありません。また経済規模の大きな国は莫大な援助費用が必要となるため、国交切替の取り組み対象国からは外れます。
現状(ソロモンの国の大きさやトンガの中国との関係)を踏まえれば、台湾が国交を確保したり、中国と対抗できる可能性があるのは、より小さな国々であるパラオ(台)、マーシャル(台)、ナウル(台)、ツバル(台)、キリバス(中)、ミクロネシア連邦(中)の6カ国(いずれも政府支出の対GDP比が高い国=民間部門の弱い国)と言えるのではないでしょうか。
焦点がずれましたが、1996年の中台間の緊張、1998年~2005年までの中台による国の取り合いの歴史を見ると、中台関係という視点でみれば、現在と状況が似ているように思います。ただし、この2005年までの太平洋島嶼地域における中台の争いは、あくまでも中台の争いであり、日本を含めた先進国側は傍観する立場にありました。
現在では、台湾は西側諸国・自由民主主義陣営にとって重要な存在であり、また中国の動向には中台関係の他に、対米、対豪、海洋進出、一帯一路構想に基づく戦略性、南南協力としての開発協力、旧宗主国による伝統的安全保障枠組みの変更と関与という要素加わるなど、中国をめぐる地域情勢はより複雑化しています。
(塩澤英之主任研究員)
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