ニューカレドニア、仏からの独立を問う緊迫の最終投票へ

(12月8日、AFP/PACNEWS)

【抄訳】
太平洋のフランス領ニューカレドニアでは12日、独立の是非を問う3回目にして最後の住民投票が行われることになるが、投票に向けての運動では、新型コロナウイルスの大流行を理由に投票中止を求める怒りの声が目立った。
 
オーストラリアの東、2,000キロあまりに位置するニューカレドニアでは、独立をめぐる対立の鎮静化を目的とした1988年の取り決め(マティニョン合意、Matignon Accord)により、3回の独立住民投票実施が認められている。
 
2018年の初回と、昨年行われた2回目の投票では、旧宗主国フランスからの独立に反対する票が過半数を占めた。この結果、ニューカレドニアの有権者18万5,000人は、残された最終投票で、「ニューカレドニアが完全な主権を獲得し、独立することを望むか?」という問いに対する答えを出すことになった。
 
今回の投票は、フランス政府と太平洋地域の同盟国による関係緊迫化を背景にしている。
 
フランスは、ニューカレドニアのような海外領土を有することから、自らをインド太平洋地域の主要国とみなしている。
 
一方で、オーストラリアは9月、英米との安全保障枠組みを優先して潜水艦契約を破棄し、フランスを激怒させた。
 
昨今の不和の裏には、地域における中国のプレゼンス拡大がある。ニューカレドニアが独立すれば、同地の鉱業分野などに関心を持つ中国の進出を従順に受け入れるのではないかと懸念する専門家もいる。
 
中国はすでにニューカレドニアの金属輸出、とりわけニッケルの一番の輸出先である。
 
太平洋地域を専門とする国際関係アナリストのバスティアン・バンデンディック氏は、「フランスのセーフガードがなくなれば、中国がニューカレドニアに永続的に根を下ろすためのすべての要素が揃うことになる」と言う。
 
フィジー、バヌアツ、ソロモン諸島、パプアニューギニアを含むメラネシア地域の他の国々は、すでに「中国の衛星」となっていると、バンデンディック氏はAFPに語った。
 
「中国が、オーストラリアの玄関口で真珠の首飾りを完成させるために今必要としているのは、ニューカレドニアです」
 
独立賛成派は12日の投票をボイコットする予定で、新型コロナウイルスの感染者が多い間は「公正なキャンペーン(運動)」ができないとして、投票を来年9月に延期するよう求めている。
 
27万人が居住するニューカレドニアでは、世界的パンデミックの第1波ではほとんど感染者がいなかったが、デルタ株が出現してからの過去数か月で、新型コロナ感染により300人近くの死者が出ている。
 
これに対してフランス政府は、ウイルスの感染拡大は鈍化し、10万人あたりの感染者数は80〜100人と比較的少ないとして、投票延期の要求を拒否している。
 
独立運動を行う人々は、住民投票の結果は認めないと脅しをかけるとともに、国連に訴えて、住民投票を中止させると宣言している。
 
フランスのセバスチャン・ルコルニュ海外県・海外領土相は、投票の拒否は「民主主義における権利」である一方で、ボイコットしたとしても、住民投票の「法的有効性」に変わりはないと述べた。
 
一方の親仏派は、独立賛成派のボイコットにより反対派の勝利が当然の結果と考え、有権者が投票に出向かない可能性を懸念して、多くの支持者に投票を呼びかけている。
 
保守系政党「Le Rassemblement - Les Républicains」のティエリー・サンタ党首は、有権者への手紙の中で、「独立を支持しない住民の動員を絶対的にすることが重要。独立反対派がマジョリティーであること、そしてニューカレドニアがフランス共和国の一部であり続けることを望む点で団結していることを示す必要がある」と述べている。
 
各政党とフランス政府は6月、12日の住民投票は結果にかかわらず「安定と収束の時期」をもたらすことになり、その後、ニューカレドニアの人々が望む形の「プロジェクト」を決定する新たな住民投票を2023年6月までに行うことで合意した。
 
しかし、先住民の独立運動を主導する「FLNKS(カナク社会主義民族解放戦線)」が、政府による住民投票の強行を「宣戦布告」とみなしたため、スムーズな移行への希望は揺らいだ。
 
新たな緊張状態が起爆剤となって、対立する両者が平和裏の移行のための取り決めを妥結する以前のような暴動が、30年ぶりに再来する可能性を懸念する識者もいる。
 
2018年の住民投票では、親仏派が56.7%の得票で勝利したが、2020年の投票ではそれが53.3%にまで低下した。
 
ニューカレドニアは、1853年からフランス領となっている。
 
(訳:立入瞳)
 
【コメント】
記事中、1988年マティニョン合意の取り決めに基づく住民投票とありますが、実際にはその後1998年に結ばれたヌーメア協定(Noumea Accord)に基づくものです。これまで2018年、2020年と行われ、最後の3回目が来年ではなく、今年、12月12日に行われます。
 
フランスは、地域拠点が失われることを望んでおらず、ニューカレドニアの独立は避けたい一方で、ニューカレドニアの人口の4割を占める先住民カナックの人々は独立を望む人々が大多数と考えられます。

しかし、コロナ禍による制約で特に独立支持派においては、先住民に対するキャンペーンを十分に行うことができず、このまま住民投票を行えば、独立支持票は大幅に減ることが考えられます(第1回が43.3%、第2回が46.7%)。そのため、独立支持派は今回の住民投票を延期するよう求めており、隣国でも延期を支持する声が上がり、今回の住民投票の結果に対する評価についても疑問符がつくとの見解もあるようです。

しかしながら、反対意見があろうとも、3回目の住民投票が行われれば、フランス政府側としてはヌーメア協定を遵守したと主張できます。
 
一方で、住民投票の結果がどうあろうとも、ニューカレドニアは現在国連非自治地域リストに掲載されている状態であり、何らかの形で自治権が強化される可能性があります。
 
例えば、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島の米国自由連合国は、統治、外交は自由連合国が担い、独自のパスポートがありますが、安全保障・防衛は米国が責務と権限を有し、国民は米国市民と同等の権利を有しています。なお、ミクロネシア連邦とマーシャル諸島については、1986年の米国自由連合盟約署名後、同年10月に独立しましたが、住民の自治権・自決権が確認され、国連非自治地域リストから外されたのは1990年でした。
 
クックやニウエといったニュージーランド自由連合国の場合は、日本は国家承認していますが、国際社会においては国家承認している国は少なく、国連にも加盟できていません。また、国民はニュージーランド・パスポートを使用しています。
 
今後、ニューカレドニアの場合は、外交と安全保障はフランス政府が責務と権限を担いつつ、内政についてはニューカレドニア政府が有するような、ニュージーランド自由連合国に近い形のフランス領のような形態に向けた話し合いが始まるかもしれません。
 
あるいは、ニューカレドニアの独立支持派が結果に納得せず、1988年のマティニョン合意以前の状況に逆戻りする可能性も排除できません。その場合、ニューカレドニア情勢は不安定化し、フランス本国からさらに警察や軍が派遣されることになるかもしれません。
 
メラネシア地域の安定という観点からも、12日の住民投票とその後の情勢を注視する必要があります。
 
(塩澤英之主任研究員)

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