太平洋島嶼国事業 Pacific Island Nations Program
AOSIS議長、フィジーの提案を遠ざける
(2021年11月9日、FBC NEWS/PACNEWS)
【抄訳】
英国グラスゴーで開催中のCOP26における小島嶼国連合(AOSIS)調整会議において、アンティグア・バーブーダはフィジーによる海洋をCOP26に加える提案から手を引いた。
アンディグア・バーブーダはカリブ海の国で、現在のAOSIS議長国である。
これはフィジーにとって受け入れられるものではなく、AOSISにおける長年にわたる共同の取り組みにおける立場ではない。
アンティグア・バーブーダは同会議前にEメールで、COP26におけるいかなる海洋プログラムにも賛同しないと伝えていた。
同メールでは、また、海洋はCOP26ではない別の場で取り上げられるべきであり、COP26のアジェンダに加えることはできないとあった。
アンティグア・バーブーダによる直前の心変わりは、いくつかの大国との交渉と合意のあとに 起こったと考えられている。
フィジーはAOSIS議長と改めて説明する機会を提案している。
(訳:塩澤英之主任研究員)
【コメント】
本記事はフィジーの国内放送であるFBCのニュースをPACNEWSが取り上げたもので、フィジーはアンティグア・バーブーダの心変わりを大国の影響によるものだと匂わせています。
フィジーは以前の記事で紹介したように、青い大陸の一員として海洋をCOPの議題に加えようとロビー活動を行ってきました。議論は9月の国連総会前後にAOSIS首脳会議でも行われており、フィジーは自国を含む太平洋島嶼国14か国につづき、太平洋島嶼国14か国を含む30数国からなるAOSISのブロックとしての支持を得られるものと確信していたようです。
しかし、今回、カリブ諸国のアンティグア・バーブーダが、議長権限によりフィジーの提案を取り下げたため、フィジー側は冷や水を浴びせられたようにショックを受けているようです。
冷静に考えれば、海洋、特に海面上昇に伴う海域保護の議論は直接的には国連海洋法条約に関する議論となり、その要因に気候変動に基づく海面上昇があるとしても技術的には気候変動そのものとは異なります。各国単位で見れば、チームに気候変動担当者・専門家に加えて海洋および国際海洋法条約の担当者・専門家が必要になり、交渉に向けた国内の議論の積み上げや実際の会合での交渉などの負担も増大します。また、人や資金のリソースが分散されてしまうでしょうし、会議の焦点がぼやける可能性もあります。そのような現実面を踏まえれば、COP26と海洋に特化した議題を混ぜないというのは理解できる判断だといえるでしょう。
AOSISは「小さな島嶼国」という点では一致していますが、カリブ諸国の地理的状況、経済条件、生活環境、周辺の国々との距離感は、太平洋の真ん中に点在し、青い大陸と称する太平洋島嶼国とは異なります。
先日、ネットニュースなどで、ツバルの外相が水につかりながらスピーチを行っている様子が報じられていましたが、このようにやり過ぎたドラマティックな態度は、かえって太平洋島嶼国に対する評価を落としてしまう可能性があります。
例えば、人々が清楚で勤勉で自然や環境を大切に生活している国であれば耳を傾ける人も増えるかもしれませんが、ディーゼル発電による電気を無駄遣いし、働きもせず日陰で寝そべり一日中タブレットをいじってネットで遊んでいたり、海や島の自然を大切にしているとは思えないほどゴミをそこら中に捨てたり、お金がないと対策をせず自ら沿岸を汚し、自助努力せず他者を非難する態度を示す島国があるとすれば、国際社会の関心は離れていきます。
太平洋島嶼国は、冷静に科学に基づく根拠と関連する実際の事象とともに国家を守る計画を示し、国際社会に協力(太平洋島嶼国側は損失と損害に対する賠償という位置づけかもしれないが)を求めるべきでしょう。
(塩澤英之主任研究員)