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マリンサンクチュアリ法(PNMS)の一時停止案、パラオ酋長評議会が下院に再考求める

(2021年8月9日、ISLAND TIMES/PACNEWS)


12分

抄訳

パラオの酋長評議会は、パラオ・ナショナル・マリンサンクチュアリ(PNMS、EEZの80%を海洋保護区として禁漁とするもの)の商業漁業に関する規制を一時的に解除することで外国漁船の操業を許可する法案について、同国議会下院に再考を求めた。
 
サビノ・アナスタシオ下院議長に宛てた書面の中で、酋長評議会は、パラオを代表するPNMS法を一時的に停止することにより、外国漁船の操業を認める法案には賛成できないと述べている。
 
下院法案11-30-2Sは、PNMS法の修正により、排他的経済水域(EEZ)の80%で商業漁業活動を禁止するという現行の規制を解除しようとしている。
 
酋長らは、PNMSがもたらす経済的・専門技術的な恩恵は、入漁料による歳入を上回ると主張する。その根拠として、PNMS設置により1億米ドルに上る支援が行われてきたことを挙げ、2022年に予定されている海洋国際会議「アワオーシャン会合」のパラオ開催にもつながったのだと指摘した。
 
「謹んで申し上げますと、来るべき実りある収穫のため、PNMSについては慎重かつ保守的に対応することが、パラオにとって最善の利益となるでしょう」
 
また酋長評議会は、同法案が成立した場合、パラオの国際社会における立場にも影響すると強調している。
 
「私たちが議員の皆さんにお答え頂きたい質問は単純明快で、これが最善の解決策なのか?科学的なデータに裏付けられているのか、また法案が成立した場合、具体的にどのくらいの収入が見込めるのか?ということです」
 
酋長らは、重要な環境政策としてのPNMSの価値を訴え、実を結ぶまでには時間がかかるとした。その上で、パラオは「しっかりと検討し、他の選択肢を探るべき」であり、PNMS法を「途切れることなく」継続させるべきだと述べた。
 
国内の漁業者組合である「ベラウ沖合漁業組合(BOFI)」も、下院に対して、法案がパラオ国民の利益につながるものであるよう求めている。
 
BOFIのオカダ・テイトン組合長は、下院に宛てた書面の中で、「我々の海域で捕獲されたマグロやその他の遠洋魚類が、金儲けに来る人たちよりも、この国に最大の利益をもたらすようにしたいのです」と表現した。
 
また、パラオの食料安全保障と地元漁師の育成のために、日本政府からBOFIに対して漁船が供与される予定であることに言及し、法案が入漁料による歳入見込みを明示していない点も指摘した。
(訳:立入瞳)

コメント

パラオ議会は、全国区選出13議員で構成される上院(The Senate)と16州各州の代表16議員で構成される下院(House of Delegates)からなります。筆者の経験では、下院の方がより地方に根差しており、一方で十分な科学情報や取り決め、経済や財政の仕組みに関する丁寧な説明が必要という印象があります。この記事は、PNMSに関し、下院がPNMSの一時解除を求めたところ、伝統的権威による酋長評議会(COC)が再考を求めたことを報じています。
 
この記事の内容を理解するには、次の要素を踏まえる必要があります。
・パラオのマクロ経済
・パラオ国内のミクロ経済
・PNMS(パラオ・ナショナル・マリンサンクチュアリ)法
・PNMS法の効果(資源、地域全体のスピルオーバー効果)
・PPEF(プレスティン・パラダイス・環境フィー)
・入漁料収入
・ナウル協定締約国グループ(PNA)枠組みと隻日法(VDS)
・パラオの伝統社会と現代社会
・自然保護と国の発展のバランス(憲法含む)
・日本の漁業者
・マグロ資源の保護と利用のせめぎあい
 
まず、重要なポイントとして強調しなければならないのは、入漁料収入に関する理解に間違いがないようにしなければならないという点です。
 
「PNMSの導入により、入漁料収入が減少している」、「コロナ禍で厳しい状況にあるパラオ財政を改善するために、PNMSを解除する必要がある」という考えは誤りです。
 
パラオのマクロ経済を見ると、コロナ前のGDPは約300億円、そのうち政府支出が約100億円(一般会計は60億円程度)、GDP全体の7割程度が観光関連という状況でした。それが、コロナ禍により、政府財政が30億円以上不足し、観光部門が収縮したことからGDP全体は大幅に収縮しています(数字は上げません)。
 
次に、PNMSですが、これはパラオのEEZの80%を完全禁漁とし、残り20%については本来パラオ漁業者・企業のみが操業可能で、漁獲物の海外輸出も禁止するものでした。(昨年、伝統的に同海域で操業していた日本の沖縄の漁業者の活動を維持するため、20%の海域を再規定し、その海域において特別に操業を認めることと改訂されました)
 
PNMSの目的は、ミクロネシア地域を含む周辺海域を含め、パラオのEEZを魚の聖域とすることで、資源の回復と維持を図り、周辺海域への資源のスピルオーバーを期待するものであったり、国際社会に率先してEEZ保護をアピールすることであったり、観光立国を促進することにありました。また、20%を操業可能としていることで、ナウル協定締約国グループに留まることができました。
 
PNMSを担保する入国者一人一人が100ドル負担するPPEF(プレスティン・パラダイス環境フィー)ですが、これには以前から導入されていた出国税(20ドル)、環境フィー(30ドル、うち15ドルが下水整備のための資金)の計50ドルに、州政府に対する入漁料収入補填(EEZで得られる入漁料収入は、州政府に分配されている)にあたる12.5ドル、社会保障資金などからなる50ドルが付加されたものです。
 
次に入漁料収入について。パラオのEEZは後述のナウル協定締約国の中では小さい方です。マーシャル諸島の約199万㎢、ミクロネシア連邦の約300万㎢に対し、パラオは約60万㎢。ナウル協定締約国グループによる取り組みが始まる以前、パラオの入漁料収入は300万米ドル前後であったはずです(2000年代当時、マーシャルの入漁料収入は400万米ドル程度だった)。
(ナウル協定締約国グループ、笹川平和財団太平洋マップをもとに筆者作成)

(ナウル協定締約国グループ、笹川平和財団太平洋マップをもとに筆者作成)

ナウル協定締約国グループ(パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、キリバス、ナウル、ツバル、ソロモン諸島、パプアニューギニア+トケラウ)が入漁許可を1日1隻あたりの単価で算出し日数を販売する仕組みである隻日法(VDS, Vessel Day Scheme)を導入し始めたのは2010年になります。VDSの仕組みでは、加盟国各国に販売日数を割り当て、各国が漁業国側に対して日数を販売します。また、地域全体の資源管理・収入安定化という目的もあり、加盟国間で日数の売買が認められています。例えば、漁場が移動し、キリバス海域で豊漁、マーシャル海域で不漁というとき、キリバスの販売日数はその年の半ばには売り切れてしまいます。その時に、不漁の加盟国(この例ではマーシャル)からキリバスが日数を買いとり、自国の利益分を上乗せして漁業国側に販売することが可能となっています。そのVDS単価は2012年時点で2000米ドル台だったものが、2018年頃には10000米ドルを超えるまでになりました。
 
パラオは2015年にPNMS法を成立させ、2020年の80%完全禁漁に向け段階的にEEZを閉じてきましたが、VDSの割り当ては、2012~2014年が500日台、2015年が500日台、2016年~2019年が700日台と安定的に増えており、単価上昇も踏まえれば、PNMSに関わらず、自国のEEZのマグロかつお類を保護しながら入漁料収入を得ていることになります。
 
PNMSは、端的に言えば、狭いEEZでは入漁料収入が頭打ちな中で、環境観光立国にシフトすることで、資源を保護しながら観光収入を増やし、環境保護と経済成長のバランスをとりながら国の発展を図るための取り組みだと言えます。収入に関しては入国者数に依存するPPEFがあり、単純に考えれば年間14万人の観光客を確保することで、入漁料収入がゼロになった場合でもマクロ経済的には維持できる仕組みです。一方、ナウル協定締約国グループに継続加盟が認められているため、実際にはVDSの仕組みによる日数の転売で間接的に入漁料収入を得ることができています。
 
また、PNMSについては、パラオが憲法前文に掲げている自然保護と経済発展の両立を図るビジョンが根幹にあります。パラオの人々にとって、自然保護・環境保護というのは単なる保護ではありません。パラオの伝統はバースセレモニーに見られるように、自然資源に密接に関わっており、自然保護・環境保護はすなわちパラオの人々のアイデンティティの保護を意味します。パラオには漁業と観光だけしか発展を期待できる産業がなく、EEZは狭く発展性は限られている。また、自然保護・環境保護を踏まえれば過度な開発ができない。そのためにPNMSに限らず、様々な取り組みが行われてきたのがパラオという国です。
 
最後の要因として、捕鯨問題に似ている資源の保護と漁業者側の視点、さらに伝統的にパラオ海域で操業していた日本の漁業者の操業確保があります。筆者は、パラオの取り組みを支持しつつも、持続可能な漁業と日本の漁業者を守りたいという立場にありますが、これは政治問題の色が強く、コロナ禍による財政問題、パラオの入漁料収入の話とは分離すべきと考えます。
 
パラオ国内においては、ローカル規模のミクロ経済に関わる有力者・PNMSにより収入に影響がある人々・PPEFによる収入が減少した州政府などの声が反映されている議会と、伝統的に自然保護と発展のバランスを希求している伝統的権威(パラオには酋長評議会があり、議会における権力を有さないが、政府や議会がパラオの伝統を侵害する恐れがあるときに、助言を与える立場にある)が、今回の件について対立している形になります。
 
パラオには伝統社会において酋長制度があります。16州(近代化以前は、村落であった)にそれぞれ10程度の酋長の地位とランクがあり、国全体としては、マルキョクとコロールの2大酋長制が存在しています。民主主義とは異なりますが、これらの伝統的権威は維持され、国民に尊重されています。
 
本記事にあるPNMSをめぐる話は、極めてデリケートな話であり、仮にパラオ外の人々が援助などを背景に権利主張しごり押しした場合、バックラッシュと共に少なくない方々から反感を呼ぶ可能性があります。
(塩澤英之主任研究員)

海洋政策研究所(島嶼国・地域部)
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