ソロモン諸島の公衆衛生緊急事態法案、首相に権限が集中

(2021年6月4日、SOLOMON STAR/PACNEWS)

【抄訳】
ソロモン諸島首相府を行政のトップとし、司法の権限も与えるという条文が法律の中にあるとすれば、三権分立の本質とは一体何なのか?そんなものは、世界のどこでも受け入れられない――2021年度公衆衛生緊急事態法案の検討に際し、法案・立法委員会に出席したレイチェル・オルティマイン検察庁長官は、「行政処分手続き」という条の内容について、このような印象を抱いたことだろう。
 
「個人的に、この部分は首相に任せるべきではなく、権限を分離する必要があると思います。このままでは良くありません」と述べた長官は、最近の経験を委員会に対して語った。
 
「首相府から手紙が届き、2人の異なる人物(共に商業船)に対して、ある手続きが取られたと通知を受けたことがありました」
 
「私は12時間以内に首相に返事をするよう言われ、返事をしました」
 
「首相府はその際、検察庁長官でもなければ、判断が可能であろう法律家でもないので、誤った条に照らすというミスを犯していました」
 
「判断が間違っていたので、私は首相府に対し、『この判断は間違っています。この人に適用した条は誤っていますよ』と伝えなければなりませんでした」
 
「訂正されたかどうかを含め、何も返事はありませんでした。今日になっても、不明のままです」
 
長官は、行政処分手続きの権限が、行政部門の管理下に置かれることを支持しないと断言した。
 
「本来あるべき場所に戻してください」
 
「きっと適切な段階を見つけられると思いますし、手続きとしては良いものなので、権限を行政部から別の場所に移譲するのであれば、法案を後押ししたいと思います」
 
また長官は、同法案の利点として「一つ一つのことで、わざわざ裁判所に行かなくて良い」ことを挙げ、「倫理を重んじ、悪いことをしたとすぐに認める人は、時間を無駄にしたくないので、最小限の煩わしさで自分の罪が招いた結果に直面し、代償を払って立ち去りたいと考えています。これは良いプロセスだと思います」と続けた。
 
委員長は、権限の移譲先にはどこがふさわしいかと質問し、オルティマイン長官は、検察庁に属するべきと回答した。
 
本法案でさらに興味深いのは、第45項と第46項は、命令によって犯罪であるかどうかを決定する権限を首相に与えていることである。
 
※補足(条文)
第45項 首相は命令により、行政処分を科すことができる罪であるかどうかを決定することができる。
第46項 首相は命令により、それぞれの罪に対する行政処分を決定しなければならない。
 
オルティマイン長官は、専門家の意見として、この権限は刑事司法制度の中で別の誰かに与えられるべきだと述べた。委員長は、犯罪かどうかを決定するのは大変な責任を伴う行為と発言している。
 
本紙は、2021年度公衆衛生緊急事態法案に関する検討は、継続されると理解している。
 
(訳:立入瞳)
 
 
【コメント】
この記事には2つの見方があります。
 
1つはソガバレ首相を批判する立場。もう1つは国内の新型コロナウイルス感染拡大を抑えなければならないという為政者の立場。
 
ソロモン諸島では1998年に発生したマライタ島住民とガダルカナル島住民による部族紛争を受け、2003年から2017年まで太平洋諸島フォーラム(PIF)における合意に基づき、オーストラリア軍を中心とするPIF加盟国の軍・警察が参加したソロモン諸島地域支援ミッション(Regional. Assistance Mission to Solomon Islands: RAMSI)が派遣されていました。
 
ソガバレ首相は2017年の内閣不信任案可決によりその座を追われましたが、2019年4月に実施されたRAMSI撤収後初の総選挙で勝利し、首相に復帰しました。その際、首都ホニアラでは住民による抗議活動が発生し、同年9月には台湾を支持するマライタ州の反対意見を抑え、経済発展の期待を背景として中国と国交を結ぶなど、強権的な姿勢が見えます。
 
今回の公衆衛生緊急事態法案では、翻訳の立入さんが補足しているとおり、第45条、第46条に、首相が司法権の一部を持つような内容が含まれています。
 
そのため、ソガバレ首相を強権的だと批判する立場の人々は、新型コロナウイルスによる非常事態を利用して、首相が権力を強化しようとしていると警戒しています。
 
一方、ソロモン諸島では今年の2月から続く隣国パプアニューギニアにおける新型コロナウイルスの感染爆発を受け、今年3月以降の報道を見ると、ソガバレ首相は自国にウイルスが入り込み、感染爆発が発生しないようにと、強い警戒感を示しています。特にソロモン諸島北部とやはり感染拡大が起こっているパプアニューギニアのブーゲンビル自治州は、海上で人の行き来が元々あったようで、その地域の住民に対するワクチン接種を優先させようとする報道もありました。
 
しかし、現地住民の中にはワクチン接種に対して警戒感を持つ人々もおり、政府にはワクチン接種率が思うように上がらないという懸念があるようです。そのため、司法手続きを飛ばし、すぐに首相が判断できるという形を作ることで、ワクチン接種を促す(強制という言葉は使いたくない)ために、このような法案が作られたと見ることもできます。
 
(塩澤英之主任研究員)

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