中国、太平洋の戦略的滑走路の復活を計画か

(2021年5月6日、REUTERS/PACNEWS)

【抄訳】
ハワイの南西約3,000kmに位置するキリバスの離島において、第二次世界大戦中に米軍が使用していた敷地を復活させるため、中国が、滑走路及び橋の改修計画を立てているという。キリバスの議員が、ロイターに語った。
 
この非公表の計画は、戦略的に重要なアジアとアメリカ大陸の中間に位置するサンゴ環礁の小島、カントン島での建設を含むという。
 
キリバスの野党議員であるテシー・ランボーン氏(※元内閣次官、元駐台湾特命全権大使)は、ロイターに対して、この計画への懸念を示し、中国の「一帯一路」構想の一環であるかどうかを知りたいと語った。
 
「政府は、滑走路と橋の改修のための案件化調査であるということ以外に、費用やその他の詳細を明かしていない」
 
「野党は今後、政府に詳細な情報を求めることになるだろう」
 
キリバスのターネス・マーマウ大統領事務所は、質問に答えていない。中国外務省も、本件に回答していない。
 
キリバスは、人口12万人の小国でありながら、太平洋上に世界最大級の排他的経済水域(EEZ)を有しており、その面積は350万平方キロメートルを超える。
 
米軍基地があるハワイの南西約3,000kmに位置するカントン島で、何かしらの大掛かりな建築行為が行われれば、第二次世界大戦以来、米国及びその同盟国と強固に連携してきた地域の奥深くに、中国の足がかりを提供することになる。
 
「島は固定された空母になるだろう」と、ある太平洋地域の政府アドバイザーは語ったが、このプロジェクトの機密性を考慮して匿名とした。
 
米海軍第7艦隊及び米国務省東アジア・太平洋局は、コメントには応じていない。
 
キリバスは近年、中国と米国及び太平洋の同盟国間の諍(いさか)いの中心となっている。
 
キリバスは2019年後半、中国を支持して台湾との国交を断絶したが、これは親中派を掲げて接戦の末に選挙に勝利したマーマウ政権による決定である。
 
ソロモン諸島に続く外交関係の切り替えは、中国から国交を結ぶ権利のない一つの省とみなされながら、自治を行う「台湾」にとって、敗北ともいえる結果だ。台湾にとって米国は、国際的に重要な支援国であり、武器の供給者でもある。
 
カントン島は、米国が宇宙やミサイルの追跡活動に使用しており、2kmに及ぶ滑走路には戦時中、長距離爆撃機が駐機していた。
 
オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が昨年発表した論文によれば、中国がキリバスで計画している施設は、北米とオーストラリア・ニュージーランドを結ぶ主要なシーレーンと交わる形で配置されるという。
 
中国政府は、このシンクタンクを「反中国」と表現している。
 
戦略的重要性と並んで、カントン島周辺海域は、マグロなどが収穫できる豊かな漁場でもある。但し、島は海洋保護区に属しているため、商業的な漁業は禁止されている。
 
カントン島には二十数人の住民がおり、自給自足の漁業や供給船に頼っている。
 
(訳:立入瞳)
 

【解説】
キリバスは西からギルバート諸島、フェニックス諸島、ライン諸島からなります。ライン諸島は、戦後、英国の核実験に使用されました。

kiribati

(笹川平和財団 太平洋マップをもとに筆者作成)
 
1979年、キリバス独立後、米国はキリバスとの間に友好条約を結び、フェニックス諸島およびライン諸島の各島嶼に関して、「第三国の軍事利用は両国の協議の対象である」(同第2条)、「(フェニックス諸島の)カントン島、エンダベリー島、オロナ島に米国が建造した施設の第三国による軍事利用は、米国の同意が必要」と規定しています(同第3条)。
 
地図を見ていただけると、キリバス周辺に米国領の島嶼が点在していることが分かります(青い部分が米領の島嶼部とEEZをあらわす)。海洋資源の面でも、伝統的安全保障の面でも、依然として価値のあるエリアと言えるでしょう。

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(笹川平和財団 太平洋マップをもとに筆者作成)
 
関連する話題は、次の記事で紹介します。
 
(塩澤英之主任研究員)

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