PNGのパンデミック指揮官、ワクチン接種中止求める知事の申し立てを歓迎

(2021年4月15日、THE NATIONAL/PACNEWS)

【抄訳】
パプアニューギニア(PNG)の新型コロナウイルス国家パンデミック対応指揮官であるデビッド・マニング警察長官は、同州及び国内での予防接種を中止すべく、最高裁に申し立てを行うとしているマダン州のピーター・ヤマ知事の姿勢を歓迎するという。
 
マニング長官は、ヤマ知事が委任された指導者であることから、政府が準備する任意の予防接種プログラムについて、法的助言を求める権利があると述べた。
 
「新型コロナウイルスに対するアストラゼネカ社のワクチン使用は、法的に認可されており、世界保健機関(WHO)によって国際的に推奨されている」としたマニング長官は、「PNG政府は、医療従事者や前線で働く人々をこの恐ろしい状況から守るため、パンデミックに対する責任感と対応の早さを示している政府の一つである」と続けた。
 
マニング長官によると、国家管理センターと保健省は、本件に関して裁判所をサポートする準備ができているという。
 
ヤマ知事は、米最高裁がユニバーサルワクチン接種(=国民全員へのワクチン接種)制度を覆したというニュースを受け、自身の弁護士に対して、行動を起こすよう指示したという。(※注:ヤマ知事が目にした報道は、フェイクニュースとみられる。)
 
「判決内容を精査した後、私はマダンの州民や他の国民への予防接種を止めるために、最高裁への申し立てを行うつもりだ」と、ヤマ知事は述べた。
 
「私が予防接種を止める理由は、アストラゼネカ社をはじめとするワクチンについて、使用前に(医学研究所の)地元の科学者によって適切に試験され、承認されるべきだと考えるからだ」
 
ヤマ知事は、研究室における適切な試験と、国民にとって安全であるという結論がなければ、医学研究所の手短な報告をそのまま受け入れることはできないと主張している。
 
「私の良心は明確だ。このような理由から、人々を実験台に使われないよう守ることが、州民のためになるのだ」
 
一方で、PNGのワクチン輸送能力強化のため、日本政府は無償資金協力の実施を決定しており、約300万米ドルの資金がPNGの国連児童基金(UNICEF)に供与され、ワクチンのコールドチェーン整備と物流能力の強化に役立てられる。
 
在PNG日本国大使館とUNICEFの共同声明によると、PNG内の約298の医療施設が本件協力の恩恵を受けることになり、新型コロナウイルスワクチンを安全に保管するために必要なコールドチェーン設備のモニタリングシステムという重要な側面支援を行うことができるという。
 
「モニタリングシステムは、子どもたちの定期予防接種プログラムにおいても、長期的に役立てられるだろう」
 
また、中原邦之駐PNG日本国特命全権大使は、「現在、ワクチンへの公平なアクセスと迅速な供給を保証することは、新型コロナウイルスの封じ込めに向けた国際社会の共通課題である」と話している。
 
「今回の緊急無償資金協力は、PNGでワクチン接種を希望するすべての人にワクチンを届けることを目的としている」
 
「日本は昨年より、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐため、個人防護具の配布、学校への給水設備の設置、衛生習慣のPR活動などを支援してきた」
 
 「UNICEFの幅広いネットワークと豊富な経験が、ワクチン供給の支援において有効であることを信じている」
 
 
【コメント】
今年の2月以降、パプアニューギニアでは新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。この記事は4月中旬のものですが、現時点(5月中旬)で感染者数は12,000名を超え、死者数は121名にのぼります。

この状況を受け、豪州などが同国へのワクチン提供を急いでいますが、一方で、この記事のようにワクチンに疑いを持つ人々もおり、ワクチン接種拡大の心理的障害になっている面もあるようです。
 
本記事でもう一つ注目されるのは、情報の問題。
 
記事中に「ヤマ知事は、米最高裁がユニバーサルワクチン接種(=国民全員へのワクチン接種)制度を覆したというニュースを受け、自身の弁護士に対して、行動を起こすよう指示したという。」とあります。このヤマ知事が読んだニュースは、ネット上に出ていたフェイクニュースとみられるそうです。
 
過去5年の間に太平洋島嶼国各国の通信環境が改善し、スマートフォンの利用も広がり、人々は情報を得やすくなりました。一方で、SNS上に不確かな情報やゴシップが流れることも多く、住民がその影響を受けやすい環境にあるとも言えます。太平洋島嶼地域では昨年1月末には新型コロナウイルスに対する水際対策を始める国が表れましたが、その後、いくつかの国でSNSの情報に惑わされないようにという政府からの注意喚起がありました。未知のウイルスであったことで、恐怖感を背景に誤情報に住民が影響を受ける状況が生じていたためです。
 
もう一つ、最近のパプアニューギニアに関する報道で目に付くのが“sorcery(魔術)”という言葉です。このような非科学的な考えが日常生活に残っているのだと思いますが、新型コロナウイルスについても非科学的な解釈が見え隠れしているようです。
 

筆者は25年ほど前、青年海外協力隊でザンビア東部のある町に高校教員として派遣されていました。サバンナで気候が良く、人は穏やかで優しい土地でしたが、一方で治安の問題があり、また、さまざまな感染症で日常的に葬儀があったとの印象が残っています。
 
任期満了まで2カ月ほどとなったころ、同僚で兄のような友人でもあったサカラという理科教師がHIVに感染していることが分かりました。以後、サカラは人目を避けるようになり、月明かりの下、徘徊している姿がありました。恐らく絶望の中で魔術に頼ったのでしょう、ある時、離れた集落にいる魔術師に治療を求めたところ、錆びたナイフで体を傷つけられ、急速に症状が悪化していきました。そして、筆者が首都ルサカに戻り、帰国する日の朝、亡くなったとの連絡がありました。
 
昔も今も、正確な情報が大切です。
 
(塩澤英之主任研究員)

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