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パラオ大統領台湾訪問、トラベルバブル始動へ
(2021年3月29日、AFP/PACNEWS)
抄訳
コロナフリーのパラオと台湾の間で、今回のパンデミックで打撃を受けた観光業を再起させるための「トラベルバブル(=相互往来の解禁と渡航者の隔離措置免除)」を始動すべく、パラオのスランゲル・S・ウィップス・Jr.大統領が、台湾を訪問している。
ウィップス大統領を乗せたチャーター機は、28日、桃園国際空港に到着。4日間の台湾訪問が始まったと同時に、両者が「アジア初」と豪語するトラベルバブルが幕を開ける。
外交部によると、ウィップス大統領は台湾訪問中、蔡英文総統と会談し、パラオの観光PRイベントに参加するほか、造船会社や水産養殖会社を視察する。そして4月1日、トラベルバブル第一陣となる110人の台湾人観光客と共に、チャーター便でパラオに戻る予定となっている。
パンデミック以前、国内総生産(GDP)の半分以上を観光業に頼っていたパラオ経済にとって、この航路は主要なライフラインであり、最終的には週16便の運航を目指している。
先日、台湾の中央通信社(CNA)のインタビューに応じたウィップス大統領は、「(台湾を訪問する)最大の理由は、実際に旅行回廊を開設するためだ。なぜなら、観光業は我々にとって最大の経済的原動力であり、観光を再開することが重要だからである」と述べていた。
「(トラベルバブルが)うまくいく制度であると、世界に証明することが大事だと思う」
フィリピンの東方約1,000キロに位置するパラオは、現在まで、国内での新型コロナウイルス感染者が一人も確認されていない。
トラベルバブル始動の背景には、パラオと台湾の特別な関係もある。パラオは、中国が台湾を自国の領土と主張する中、台湾を国家として承認し、外交関係を持つ世界15か国のうちの一つである。
人口約1万8,000人のパラオを守るため、観光客受け入れにあたっては、厳しい措置が取られると、ウィップス大統領は言う。
台湾からの旅行者は、渡航前に新型コロナウイルス検査を受けなければならない。形式は団体旅行に限られ、個人での観光は禁止されている。また、パラオ居住者との接触は最小限にとどめられ、旅行者は指定されたホテルに滞在し、別のレストランエリアで食事をするほか、決められた時間帯にしか買い物をすることができない。
台湾(人口約2,300万人)は、新型コロナウイルスの累計感染者数が1,020人台、死者数が10人台で、封じ込めに成功した手本と評されている。
台湾当局によると、パラオへのツアー第一弾の110人の枠は完売している。
ウィップス大統領は、完璧なシステムは存在しないことを認識しているものの、台湾保健当局の計算によれば、トラベルバブルを介して新型コロナウイルスがパラオに到達する確率は、わずか400万分の1であったと述べている。
権威主義体制の中国は、台湾を自国の領土とみなし、統一を目指すと宣言しており、民主主義を採用する台湾は、侵略の脅威にさらされ続けている。
中国は、2016年に蔡氏が総統選挙で勝利して以来、台湾が中国の一部であるという考え方を否定する同政権に対抗し、軍事的・経済的圧力を強めることで、台湾と国交を結んでいた7か国を奪った。
ウィップス大統領はCNAに対し、昨年の大統領選挙で勝利した後、国交を台湾から切り替えてくれという中国政府の申し出を拒否したと語った。
「私は、友人を選ぶ自由があるべきだと信じている、と中国に告げた」
「我々は台湾との関係を大切にしており、その関係を断ち切るべきなどと、誰も言うべきではない」
太平洋地域では、パラオと並んで、マーシャル諸島、ナウル、ツバルの3か国が、台湾との国交を継続している。
(訳:立入瞳)
コメント
パラオ観光局(PVA)および同統計局の資料によると、2008年、2011年、2015年、2018年、2019年のパラオのGDP、年間訪問者数、国別年間訪問者数は次のとおりとなります(パラオ観光局(PVA)および同統計局の資料に基づき筆者作成)。
訪問者数をグラフ化すると次のようになります(パラオ観光局(PVA)の資料に基づき筆者作成)。
これらの情報から、2011年までは日本と台湾が主要マーケットであり、全体の訪問者数は10万人程度、GDPは約200億円であったことが分かります。
2012年当時、パラオでは環境保護側の人々を中心とした下水などの社会インフラを改善させながら少しずつ訪問者数を増やす考え方と、開発推進側の人々を中心とした経済的利益を拡大させるために大きく訪問者数を増やすという考え方が対立していました。最終的に後者が勝ち、日本と台湾からの訪問者数は頭打ちであったことから、中国観光客市場の開拓がはじまり、2014年頃から団体観光客を中心とする中国人観光客が急増することになりました。当時、中国国内では採算度外視の非常に安い価格でパラオ・パッケージツアーが販売されており、初めての海外旅行、初めての海という方々も多かったようです。
2015年にはグラフにあるように中国が最大のシェアを持つようになり、全体の訪問者数は17万人程度、GDPは約300億円に急成長しました。この年のGDPに占める観光関連部門の割合は7割程度といわれています。一方で、台湾からの訪問者数は以前の半数以下に激減しました。
訪問者数の遷移を、2011年、2015年、2019年で見てみると、次のとおりとなります。
・中国人:1,600 - 91,000 - 28,000(チャーター便停止により減少)
・台湾人:32,000 - 15,000 -14,000
・日本人:37,000 - 31,000 - 19,000(デルタ航空直行便停止により減少)
もともと台湾が持っていたシェアが、中国人観光客が増えたことで縮小したことが分かります。
経済的には、中国人観光客が増えたことでパラオは年10%を超える大幅な成長を実現しました。これにより中国との貿易協定や投資協定を結ぶべきという議論に繋がり、議会では2013年に貿易協定、2017年には投資協定の締結に向けた動きが起こりました。当時、議会の過半数は賛成派といわれていましたが、パラオ憲法第2章第3項に、外国や国際機関との協定や条約の締結には議会の3分の2の承認が必要という規定があり、いずれも否決されています。
これまで筆者がいくつかの太平洋島嶼国で見てきた中国による台湾承認国に対する影響力の拡大方法は、いずれも合法的なものでした。まず、投資や観光を通じて民間経済におけるシェアを拡大し、顕著な経済成長を証明して見せるとともに中国への経済依存度を高めます。次いで、どこかのタイミングで、さらなる経済成長のためにと経済協定締結やADS授与(Accredited Destination Statusというもので、中国国内で団体観光客の訪問先リストに加えるもの)の可能性を示します。ただし、その条件は中国との国交締結。
パラオでも表向きは経済と政治は分離して捉えられていましたが、2017年頃から中国政府が台湾との断交を明示的に迫るようになり、台湾と断交しなければ団体観光客のパラオ訪問を禁止すると観光部門を政治利用し始めました。しかし、筆者の主観になりますが、パラオは小さくとも知的でプライドが高く肝の据わった国であり、このような中国の脅しは、かえってパラオの人々の中国に対する反感を高めることとなりました。
そもそも、パラオでは中国人団体観光客の急増は、経済的利益拡大の一方で自然環境問題や社会問題をもたらしたため、住民の間に不満が高まっていました。しかし、中国人観光客も大切な"okyaku"であり、来るなとは言えません。そのようなときに、中国の方から団体観光客を止めるという話が出たことで、現地住民には「幸運だ」という声もありました。
また、当時、中国にシェアを取られたのであれば、これに対抗し台湾人観光客を増やせばいいのではないという意見もありました。しかし、2018年に筆者も台湾を訪問し現地観光関係者との会合に参加しましたが、台湾には国内の経済問題があり、パラオへの観光客を増やすことは容易ではない印象でした。その後、台北ーパラオ間の直行便が週2便から4便になるなど増便されましたが、インパクトのある増加は見られませんでした。
ところが、新型コロナウイルスが状況を変化させます。
コロナ前のパラオのGDPは約300億円、そのうち政府支出は約100億円でした。パラオ人労働力の8割程度は政府部門で働いているため、極端に言えば、政府財政を維持できれば、パラオ人は生き残ることができます(民間部門にはフィリピン人など外国人が多い)。コロナ後、昨年3月時点で歳入の4割が不足するとの予測があり、ADBや自国の基金などから資金を調達することで、政府部門は乗り切りました(パラオの会計年度は10月開始)。
コロナ発生から1年が過ぎ、パラオ経済は一旦リセットされた形になり、政府支出割合の高い構造に変化しています。レメンゲサウ前大統領時代には、コロナ禍による経済構造の変化に加え、中台関係の緊迫化、米国のグアムを含むミクロネシア地域の防衛強化の動きがあり、パラオとして何らかの形での米軍の駐留を提案し、それによる安定的な歳入源の獲得を期待していました。一石三鳥のようなアイデアです。
観光部門も完全にリセットされ、筆者が共に事業に取り組んでいる現地協力者は、パラオは1990年代の観光開発以前に戻ったのであり、数年かけてやり直さなければならないと腹を括っていました。悲観的ではなく、腹を括って、じっくりやり直すという印象です。
実際に、パラオは台湾の協力により国内検査能力を確保し、現地保健省による感染リスクを抑えるための対応ガイドラインが導入され、本年1月からは米国の支援によるワクチン接種が進み、すでに人口の7割近くが接種を済ませるなど、着々と体制を整えてきました。
現状、パラオと台湾は双方とも感染リスクが低く、今回の記事では渡航者には事前検査も要求するとしています。それでも、台湾バブルが始まれば、1年間に数名程度の陽性者は判明するかもしれません。しかし、行動範囲をトレースする方法を導入するでしょうし、住民への感染拡大は抑えられるでしょう。
台湾バブルはリスクがゼロではありませんが、ワクチン接種をいち早く進め、十分な対策を取っている点で、危険な賭けではありません。太平洋島嶼地域における他のバブル計画(クックNZバブル、タムタムバブル、ブラバブル、トランスタスマンバブルなど)よりも危険性が低く、現実的な取り組みに見えます。パラオと台湾が南側の太平洋島嶼国に違いを見せることになるかもしれません。
記事では、台湾からのフライトを週16便まで増やしたいとしています。年間訪問者数は12万人レベルとなり、台湾だけでパラオの観光部門が回復する計算になります。コロナ前であれば非現実的な計画に見えるでしょうが、台湾の人々も海外旅行ができない状況であり、高い需要が見込まれます。また、パラオから台湾への渡航が可能となれば、パラオ人が高度医療を受けやすくなります。これもパラオの人々にとって安心材料となるでしょう。コロナ禍という厳しい時期を共に戦うことで、台湾とパラオの関係がより深くなることが期待されます。
また、記事では、大統領選後に中国政府から台湾と断交し中国と国交を結ばないかとの申し出があったとありますが、パラオに限らず政権が代わる前後には珍しくないことであり、ウィップス大統領の丁寧な対応が印象に残ります。
今後さまざまな場面で米国、台湾、パラオの三者関係が注目されるかもしれません。日本はどのように関与できるのか、注目していきましょう。
(塩澤英之主任研究員)
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