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太平洋島嶼地域ブレーキングニュース 研究員の解説付きPACNEWS厳選記事

ツバル市民権及び旅券販売制度、
野党が強く反対

(2021年2月25日、PACNEWS)


抄訳

ツバルの野党は、政府が提案するツバルの市民権及び旅券の販売制度は、非常に危険なものであると考えている。
 
野党党首のエネレ・ソポアンガ元首相は、販売制度は「不必要」であり、ツバル側のコストとメリットについて、デューデリジェンス(=価値やリスクの評価)を行う必要があると語った。
 
ソポアンガ氏は、声明の中で「本件で重要なのは、透明性、検証プロセス、バイヤーの信頼性、バイヤーの義務、バイヤーの責任、そして、ツバルの利益を守るために国内外でどのようにリスク管理するのかという問題だ」と述べている。
 
また、市民権は一枚の紙切れ以上のもので、「その国の価値観と主義を受け入れる意味を持ち、我々のツバル性、記憶、文化、そして我々が誇る国・ツバルへの愛国心に深く根付くルーツを表している。 市民権には、ツバル人であることを表現する権利と、付随する義務があるのだ」と説明した。
 
「主権独立国家は、5つの基本的な構成要素を備えている必要がある。それはつまり、(1)固有の領土、(2)住民、(3)市民権/旅券、(4)政府を形成する能力、そして(5)国際協定、条約、合意の締結能力である」
 
「ツバルは、上記のすべての基準を満たし、2000年に国連に加盟した。独立の年である1978年以来、“主権独立”国家として、これらの"国家”の特性を管理する責任能力があることは証明されている。 ツバルは国連に加盟して以来、いかなる旅券スキームも導入したことはない」
 
ソポアンガ氏は、外国人への旅券販売制度案が、ツバルの歳入源を生み出したいという考えによって推進されている点は、理解していると言う。
 
「1冊あたり15万豪ドル(11万9,000米ドル)の値段で、ツバル旅券を購入したいという外国人が、きっと集まるだろう。2021年には推定500万豪ドル(390万米ドル)、10年後には、さらに1億豪ドル(7,900万米ドル)の歳入が見込まれる」
 
「もちろん、歳入はツバルにとって有用なものだ。 太平洋島嶼国とカリブ海の島々の中には、同じ理由で、この制度導入を試みた国もある。太平洋では、バヌアツを除くすべての国で失敗に終わり、中止に追いやられた。一部の国では、国際社会から、制度を中止しなければ制裁を含む深刻な結果を招くと、圧力をかけられた」
 
「販売によって得た金が、ツバルでどのように使われるかは謎であり、どの分野で恩恵を受けるのか、既に発生している巨額の赤字を単純に埋めるためのものなのか? は不明だ。そして、この莫大な収入はどのように全体へ行き渡るのか? しかし、市民権は、.tvというインターネットのドメイン名ほど安くはない。 また、市民権は、ツバルに対するわずかな知識、つながり、配慮、忠誠心、奉仕の義務のいずれも持たない外国人に、オンラインでココナッツを販売するようなものでもない。そういったものからは程遠い。 外国人は金を持っているかもしれないが、果たしてツバルのことを気にかけるのだろうか?そして、旅券1冊の値段が15万豪ドルなら、市民権は一体いくらになるのか」
 
ここで重要なのは、旅券や歳入の問題ではなく、ツバルの市民権であると、ソポアンガ氏は言う。
 
「旅券が無くても市民権を持つ人はいるが、ツバルの市民権が無ければ、ツバルの旅券を持つことはできない。市民権には、権利だけでなく、ツバルに奉仕し、常に国のイメージを守る義務がある」 
 
「太平洋では、ツバルを含むほぼすべての島嶼国が、同様の計画を試みた。ツバルでは1997年、当時の政府が、英国から共産主義中国への香港返還に伴い、外国旅券取得に躍起になっていた膨大な数の中国人を見込んで、計画導入に至った。 我々は収入を得たが、それと引き換えに、ツバルの評判もひどく傷つけられ、低下した」
 
ソポアンガ氏は、近年、ツバル政府が外国人や見知らぬ人にツバルの旅券を販売するよう、誘導されることが増えていると述べた。
 
「政府に対して、旅券1冊につき、最大9万米ドルのオファーと説得が何度かあった。2018年には、ツバル人外交官の手を借りた台湾の男が、中国のビジネスマンに、ツバル政府関係者がフィジーのナンディ・デナラウ島エリアのホテルへ宿泊する費用を全額払わせようとした。幸いなことに、その提案は綻びだらけだったので、政府は即座に拒否した」
 
「我々は、市民権はすべてのツバルの人々に属すると強く信じている。市民権は、我々全員が、国に奉仕する人生を送ると誓約する意味を持つ。ツバルの市民権と旅券を購入した外国人が、どのように国に仕え、守ると約束できるのか、理解できない」
 
「市民権は、軽く受け止められたり、魚のように扱われたりしてはならない宝物である。 適切なデューデリジェンスがなければ、野党グループは、市民権及び旅券の販売制度案に強く反対する」
(訳:立入瞳)

コメント

太平洋島嶼国の多くは、自国産業の少なさから常々新たな歳入源を探しています。例えば、信託基金、便宜置籍船、タックスヘイブンによる外国企業の誘致、カジノ、高額の直接投資を条件とする優先的な市民権授与などに加え、容易な外貨獲得手段として市民権やパスポートの販売という話が出ることがあります。ただし、市民権やパスポートの販売は、国際社会における国の評価を落とすリスクが伴うため、平時には検討すらされないものです。
 
例えば、近年ではバヌアツが2015年のサイクロン・パムによる大規模災害をきっかけにパスポート付与を伴う名誉市民権を1件当たりおよそ13,000米ドルで販売するようになりました。主なターゲットは中国人であり、香港にあるバヌアツ事務所が窓口となっています。昨年9月のRadio New Zealandによる報道では、2020年、バヌアツ政府は8月中旬までにおよそ8,460万米ドル(約100億円)を売り上げました。年間12,000万米ドルを超えるペースであり、これは名誉市民権販売前の同国GDPの約14%、政府歳入の約55%に相当します。
 
筆者は、知人の繋がりで、英国在住の中国の方で、一度もバヌアツを訪問したことがないままバヌアツ・パスポートを所持し使用している例を耳にしたことがありますが、これが国際法上認められることに疑問が残りました。パスポート販売は国の信用や品位に関わる問題でもあり、かつてパスポート販売を行った太平洋島嶼国では、さまざまな要因によりこれを取りやめています。
 
見方を変えれば、現在のコロナ禍は太平洋島嶼国各国にとり非常事態であり、事態が長期化するにつれて、経済危機および財政危機に対応するために、なりふり構わずあらゆる財源を探さなければならない状況にあるのかもしれません。
 
さて、ここで改めてツバルについて確認していきましょう。
 
ツバルはギルバート・エリス諸島の一部として1915年に英国の植民地となりました。戦後、1975年にエリス諸島として分離し、1978年にツバルとして独立、ギルバート諸島は1979年にフェニックス諸島、ライン諸島、バナバ島と共にキリバス共和国として独立しました(例えば、外務省ツバル基礎データ: https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/tuvalu/data.html#section1)。
 
ここから先は、IMFによる2012年および2018年の4条協議レポートを参考に解説していきます。
 
ツバルの人口はおよそ11,000人、2017年速報値で、名目GDP5,300万豪ドル(約46億円)、政府歳入5,100万豪ドル(約44億円)、歳出6,600万豪ドル(約57億円)、政府支出の対GDP比が126%という不思議な経済構造を有しています。
 
ツバルの財源は、所得税を中心とする税金の他に、入漁料収入2,600万豪ドル(約23億円)、,tvドメインライセンス料800万豪ドル(約7億円)となります。これに加え、歳入とは別に開発パートナーによる援助が年に1,000万~2,000万豪ドル(9~18億円)があります。さらに、信託基金が設置されており、世界市場が好調な場合には運用益を歳入に加えることができます。
 
このようにツバルの財政およびGDPは規模の小ささゆえに、入漁料収入、世界市場、そして開発パートナーの援助額に大きく影響されます。
 
入漁料収入について見てみましょう。1982年に署名されたナウル協定を基盤に、マグロ・かつお資源の管理と経済活用を目的として、2010年、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、キリバス、ナウル、ツバル、ソロモン諸島、パプアニューギニアが合意し、マーシャル諸島にナウル協定締約国グループ(PNA)事務局を設置しました。現在、トケラウも加盟しています。
 
PNAは多くの改革を行っていますが、特にそれまで漁業国が主導してきた入漁料価格の仕組みを隻日法(VDS, Vessel Day Scheme)の導入により沿岸国主導に変えたことで、地域経済に変化をもたらしました。VDSが本格的に導入されたのは2012年といえますが、2016年には入漁料の販売単価がVDS導入前に比べて4倍に拡大しました。
 
ツバルの場合、例えば2008年の入漁料収入は840万豪ドル(約8億円)、政府歳入が2,680万豪ドル(約24億円)であったところ、2013年にはそれぞれ1800万豪ドル(約17億円)、3,400万豪ドル(約30億円)に、2017年には2,600万豪ドル(約23億円)、5,100万豪ドル(約44億円)となり、10年間で入漁料収入が約4倍、政府歳入が約2倍に増加しました(年平均7%の成長)。
 
信託基金についても見ていきましょう。ツバルは1987年、豪州、ニュージーランドの出資で2,700万豪ドルのツバル信託基金(TTF)を設置しました。日本、国連開発計画(UNDP)、台湾も追加出資をしています。
 
このTTFですが、運用は豪州の民間会社が担っており、ツバル政府は同基金から資金を引き出すことはできません。運用による市場価格(Market Value)が毎年設定される原資にあたる維持価格(Maintained Value)を越えた場合にのみ、差額が連結投資基金(CIF)に移されます。ツバル政府は必要な場合、このCIFから資金を引き出すことになります。さらにツバル政府は2015年、気候変動の影響削減と災害対応を目的としたツバル・サバイバル基金(TSF)を設置しましたが、まだ十分に活用されていないようです。
 
TTFは、2007年以降、リーマンショックにより4年にわたりマイナス運用が続いたものの、2012年以来回復基調に転じ、2017年時点でGDPの333%にあたる17,500万豪ドル(約150億円)にまで規模が拡大しています。
 
先進国や台湾の人々の多くは、大金を払ってまで他国のパスポートを購入するとは考えられません。今回のツバルにおけるパスポート販売のターゲットは、間違いなく中国の人といえるでしょう。また、最近は、ツバル政府が財政の安全を確保するためにブロックチェーン技術の導入を望んでいるとの報道もありました。

コロナ禍により、太平洋島嶼国はそれぞれ財政危機や経済危機に直面しています。そして、このような非常時には、透明性や説明責任を軽視し、平時には支援を求めないような相手との繋がりが構築されることがあります。

ツバル政府の中で、何か変化が起こっているのかもしれません。
(塩澤英之主任研究員)

海洋政策研究所(島嶼国・地域部)
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