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キリバス政府、フィジー国内の保有地に中国の軍事基地計画はない
(2021年2月23日、ISLANDS BUSINESS/PACNEWS)
抄訳
フィジー北部サブサブ近くにあるキリバス政府保有の土地が、中国の軍事基地に利用されるのではないかという声を受け、キリバスのターネス・マーマウ大統領府が、これを否定した。
大統領府は、同地の開発目的は農業利用に限られ、「政府は、土地に(陸または海の)軍事基地を建設する可能性を完全に排除している」と、フィジー誌「Islands Business」に回答した。
キリバスのアノテ・トン前大統領は、フィジー北部バヌアレブ島・サブサブ港の西海岸線にある、深海に面した5,460エーカーの土地を「商業、産業、農業利用する可能性」を模索したいと考え、2014年、アングリカン教会から930万豪ドル(730万米ドル)で購入した。同地は、主に丘陵地帯とジャングルに覆われている。
当時、トン政権は魚の缶詰事業を推し進めたいとして、首都タラワにある国営水産会社や、フィジー政府が所有する水産加工会社PAFCOと協力していた。しかし2016年、トン前大統領が最長任期を勤め上げると、同事業計画は中止され、マーマウ新政権に引き継がれた。
マーマウ大統領が先日、フィジーの土地開発で中国と協力していることを認めると、中国が土地を開発することで、軍事利用されるのではないかという憶測が飛び交った。Islands Business誌が、これについて大統領府に質問を投げかけると、同府はこれを否定し、「土地利用計画の最終化に際して、中国の手助けが必要であり、特に活用案が出ている農業分野についてのアドバイスを受けている」と説明した。さらに、中国が開発や活動に直接関与することはないとした上で、同国の役割は「ナトアバツ(フィジーの保有地)計画を仕上げるため、技術支援と助言を提供すること」であり、「計画の焦点は、農業投資を通じて土地を開発することだ」と続けた。
大統領府は、農業投資の具体的な内容に関して、キリバスのための農作物生産と言及するにとどまり、計画が整い次第、実際の農作業が始まるという。また、現在ナトアバツに居住する約300の家庭について、マーマウ大統領事務所は、「相談先を紹介し、フォローしていく」としている。
本計画への中国の関与について、2019年9月に、マーマウ政権が台湾から中国へ外交関係を切り替えて以来、中国がキリバスに投資してきたことへの「見返り」ではないかと問われると、大統領府は「目的は、農業部門における中国の豊富な経験を活用して、計画をまとめ上げ、健全で実行可能なものにすることだ」と回答。また、「キリバスと中国の関係は、相互の尊重と信頼に基づいている。すべての資金協力は、透明性のある方法で行われている」と補足した。
(訳:立入瞳)
コメント
この記事を読んで頭に思い浮かぶのは、フィジーの民族構成、歴史、土地所有権、キリバスとフィジーの関係です。
最新のフィジー国勢調査(2017)は、「民族に関わらず、皆フィジー人」として現政権が進めてきた多民族・多文化国家への改革を反映し、民族構成を記載していません。そのため前回2007年の国勢調査によりますが、フィジーの民族構成は、先住民系(イタウケイ, iTaukei)が56.7%、インド系が37.3%、その他が6%からなり、現在も概ね先住民系6割弱、インド系4割程度、その他(ロトゥマ、欧州系、アジア系、近隣島嶼国民の子孫)1割弱と見て間違いないでしょう。
インド系住民は英国植民地時代の1800年代に農業労働者としてインドから移住させられた人々の子孫と、現在もビジネス部門で活躍するグジャラート州出身の人々の子孫などで構成されます。
近隣島嶼国民の子孫も英国植民地時代が関係しており、例えばソロモン系の住民でブラックバードと呼ばれる労働者として強制移住させられた人々の子孫、キリバスのバナバ島から同島のリン鉱石採掘のためにフィジーのランビ島に強制移住されられた人々やその子孫がいます。ランビ島のキリバス人はある程度の自治を認められており、ランビ島キリバス人評議会はキリバス議会に議席を1つ有しています。ただ、フィジー行政におけるランビ島キリバスコミュニティの位置づけには議論がありました(ランビ島の話は、2013年頃、当時のリモン駐フィジー・キリバス高等弁務官(大使)に教えていただきました)。
次にフィジーにおける土地所有権ですが、これは先住民系フィジー人の根っこに関わる話であり、政治問題化しやすいデリケートなものです。少し詳しく見てみましょう。
フィジーの土地は所有権の観点からNative Land(約83%)、Freehold Land(約10%)、Crown Land(約7%)の3種類に分けられます(数字はフィジー地方行政・住居・環境省の都市・農村計画局)。この中で、Crown Landは国が管理する土地で、Freehold Landは先住民系フィジー人でなくとも購入し所有できる土地です。
政治問題化しやすいのは先住民系フィジー人だけが所有権を持つNative Land。この土地は個人ではなくマタンガリ(mataqali)という氏族単位が共同所有しています。先住民系フィジー人は生まれた瞬間から土地所有権を有しており、先住民系フィジー人は土地に根が生えていると言えます。
Native Landは氏族単位の所有ですが、現政権の前は、氏族長など氏族の中で立場の高い人物が土地を貸すことを決め、借地料を管理するケースが多くあったようです。現在のバイニマラマ政権は2006年のクーデター以降、この制度が不公平だとして、政府が土地の貸借を仲介し、土地所有権を有する全てのマタンガリの人々それぞれの銀行口座に借地料を均等に配分する仕組みを構築しました。生まれたばかりの赤ちゃんも対象になります。なお、フィジーには先住民系フィジー人の家系が記された公式資料が存在します。
この改革に対し、先住民系の人々、とりわけ酋長など伝統的権威を中心に「国が我々の土地を奪う」と強く反発してきました。伝統的権威からすれば借地料の管理は氏族内で地位と尊厳を保持するために必要な要素であり、この改革はその権威を揺さぶるものでした。しかし平民にとっては、(本来正当な権利のはずですが)思いがけず収入が得られるようになり、野党支持者でも静かに評価する人もいるようです。
このNative Landですが、例えば開発のために土地を借りる場合には、マタンガリの人々の確か6割以上の署名による同意を得る必要があります。現在は土地の有効活用、海外からの投資促進のために、TLTB(iTaukei Land Trust Board)やInvestment Fijiなどがこの大変な手続きを支援しています。
Freehold Landは、背景はそれぞれ異なりますが、もともとは例えば湿地帯、河川流域、沿岸部、マングローブなど本来住民が居住するのに適さない土地を埋め立てたところであったり、英国植民地時代に入植者がランタンやウイスキーなど珍しい物品と交換した土地であったりします。多くは先住民系フィジー人の根幹を揺るがすような土地ではないようです。
記事に戻ると、対象となっている土地は本島であるビチレブではなく、北部バヌアレブ島のサブサブ近郊の南岸にあるナトアバツといわれる地区の約22平方キロメートルの部分で、英国植民地時代にアングリカン教会が所有権を得た土地のようです。その周辺には先住民系フィジー人ではなく、購入しない限り土地を所有できないソロモン系住民が、キリバスが土地を購入するまでコミュニティを形成していたそうです。
ここから、キリバスとフィジーの関係を見ていきましょう。
キリバスがその土地を購入したのは2014年5月頃だったと思います。その当時、2013年から2014年はフィジーでは民政復帰に向けて、緊張が高まっていた時期でした。時系列でみると次のようになります。
2013.9 憲法改正・新選挙制度制定(民族別議席配分廃止、全国比例代表制の導入)
2014.2 ナリラティカウ フィジー大統領(当時)、キリバス訪問
2014.3 バイニマラマ暫定首相が軍司令官を辞任
※軍人は選挙に出られないため、首相には軍人に留まるか政治家になるか、どちらかを選ばなければなりませんでした。このとき、首相は軍司令官であったことから権力を維持できていたとする見方があり、軍司令官を辞すると権力が弱まり、内政が不安定化するとの懸念もありました。
2014.5 キリバス(トン政権)、現地教会からフィジーのナトアバツの土地を購入
2014.9 フィジー総選挙、8年ぶりに民政復帰
当時を振り返ると、民政復帰の遅れや疑念を背景に、フィジーは豪州、NZとの対立が高まっており、島嶼国の支持が必要な時でした。キリバスは民政復帰を促す観点から豪州寄りでもありつつ、フィジーは経済的にも航空路的にも重要な国であるため難しい立場にいました。そのようなときにフィジーのナイラティカウ大統領(当時)がキリバスを訪問したことで、両国の関係が近くなったように思います。
ナイラティカウ大統領は、キリバスを訪問した際に「気候変動で厳しくなったときには、フィジーはキリバス人を受け入れる」といった発言もしており、キリバスがフィジーの土地を購入した際には「キリバスが気候変動で住めなくなった際の移住先を確保した」との報道がありました。
当時、筆者も前職の仕事で何度かキリバスを訪問していましたが、トン大統領(当時)に真意を伺うと、「輸入に依存しているキリバスの食料安全保障の確保が最大の目的であり、キリバス人が自ら農業を行い食料生産するための土地だ」と話していました。万が一の際の移住先というニュアンスはあったかもしれませんが明言されませんでした。ただ、対外的にはキリバスが気候変動に関して強い危機感を持っているという印象は広がったと考えられます。
最後に今回の記事について考えてみましょう。
まずこの広大な土地を実際に農業開発するには、相当の資金と人が必要だと思われます。それをキリバスだけで行うことは難しく、台湾と国交があった時期でも台湾が開発資金と人を出すことは難しかったでしょう。中国の資金と技術協力で農業開発するというのは自然な考え方だと思います。
次に、中国の軍事利用云々についてですが、仮に中国とキリバスの間でそのような話があるとすれば、フィジーの主権にかかわる話であり、キリバスとフィジーの関係が決定的に悪化することになるでしょう。フィジーは主権国家であり、国軍を有しており、フィジーの合意なしに話が進むことはあり得ません。フィジーには土地開発を規制する法律もあるはずです。ただし、Islands Business紙が取り上げているということは、現地には関連する噂があるのでしょう。
最後にキリバスが購入した土地についてですが、言葉は悪いですが、フィジーから見れば、先住民系フィジー人が利用していない重要度の低い土地なのだと思います。売り手側も良い金額で売れたといった話もありました。しかし、当時の結果として、フィジーは島嶼国ファミリーとして気候変動の影響に不安を抱えているキリバスを救うという寛大さを、キリバスは将来の移住を考えなければならないほど気候変動の危機が迫っているとの印象を、それぞれ対外的に与えることになりました。
近年は、バヌアツ、ソロモン、パプアニューギニアなどでも中国政府や中国企業による土地開発に関する報道が目に付きます。先進国側の強い警戒感が背景にあるのでしょうが、現地にも何らかの噂があると考えられます。今後もこのような報道を追っていく必要がありそうです。
(塩澤英之主任研究員)
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