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太平洋島嶼地域ブレーキングニュース 研究員の解説付きPACNEWS厳選記事

コロナ禍で財政悪化の太平洋島嶼国、中国主導のAIIB頼りに

(2021年2月23日、REUTERS/PACNEWS)


13分

抄訳

コロナ禍で財政悪化に直面する太平洋島嶼国は、長年援助を受けてきた欧米諸国からの資金調達に行き詰まり、その資金ギャップを埋めるため、中国主導の金融機関を頼り始めている。同地域の中国依存が、ますます加速することが懸念される。
 
南太平洋に位置する人口約2万人の小国・クック諸島は、米国と日本が主導するアジア開発銀行(ADB)からの融資や、緊密な同盟国であるニュージーランドからの援助では資金繰りの目途がつかず、昨年末、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に目を向けた。
 
太平洋地域では、ここ数か月の間に、フィジーがAIIBから5,000万米ドルの融資枠を確保しており、クック諸島への2,000万米ドルの融資は2例目となる。中国の「一帯一路」構想に密接に関連するAIIBが、同地域で影響を及ぼし始めている状況が浮き彫りになった。
 
人口30万人のバヌアツも、中国政府から1,200万米ドルの援助を受けたことを発表した。
 
太平洋島嶼国の多くは、国境閉鎖により国民を新型コロナウイルス感染から守ってきたものの、主要産業である観光業が大打撃を受け、経済的な困難に直面している。
 
太平洋地域における中国の影響力拡大は、第二次世界大戦以来、同地域で圧倒的なパワーを誇ってきた米国とその同盟国にとって、懸念すべき事態である。
 
太平洋島嶼国は小さいながら、戦略的に重要な港と滑走路を保有し、資源豊富な海域を誇る。また、これらの島嶼国が重要な一票を持つ国際会議もある。
 
クック諸島の商工会議所のメルビン会頭は、「中国は、太平洋のどんな島国に対しても、喜んで融資してくれる。オーストラリアとニュージーランドは、島国に対し、何かあれば最初に相談してほしいという姿勢を見せているものの、中国からお金を引き出す方がずっと簡単だ」と言う。(AIIBは、本件に関する質問に回答していない。)クック諸島は、ニュージーランドと自由連合関係にあり、独立国であるものの、国民はニュージーランドの市民権を有する。
 
同国の2億1,500万ニュージーランド(NZ)ドル(1億5,320万米ドル)の対外債務のほぼ3分の1は、AIIB、及び中国輸出入銀行(Export-Import Bank of China)という、中国が主導する機関からの借入によるものである。依存度は、パンデミック前の16%から、大幅に増加している。なお、クック諸島は、今後3年間で7,120万NZドル(5,074万米ドル)の追加借入が必要になると見込んでいる。
 
ビクトリア大学ウェリントン校で比較政治学を研究するフレンケル教授によれば、太平洋地域有数の経済規模を持つフィジーは、財政状態が悪い中でパンデミックに陥ったことにより、外国資金を切望していたという。
 
クック諸島はこれまで、給水システム整備などのプロジェクトで資金提供を受けた中国との経済的つながりを守ってきた。(同国政府は、ロイターからのコメント要請には応じていない。)
 
ADBは、ロイターへの声明の中で、クック諸島に対する「限度額」である2,000万米ドルを、昨年末に追加融資したと述べた。ニュージーランド政府は、援助プログラムを通じて、同国に2,200万NZドル(1,600万米ドル)の資金協力を実施したとしている。
 
クック諸島は、これらの資金源から可能な限りの資金を得た後、AIIBに資金提供を求めた、と資金調達交渉の知識を持つ情報筋はロイターに語った。
 
マッセイ大学防衛・安全保障研究センターのポウルズ上級講師は、「AIIBが太平洋地域への主要な貸し手になり、地域の経済回復が中国の貸し出しによって推進されている場合、経済依存度が利用される可能性がある、という重大な懸念のもとになるだろう」と分析している。
(訳:立入瞳)

コメント

ここでは、太平洋島嶼国の経済・財政、債務、中国と国交を有する太平洋島嶼国側から見た中国について簡単に確認しましょう。
 
まず、太平洋島嶼国の経済・財政について。

コロナ前の状況で言えば、パプアニューギニアは別として、太平洋島嶼国の経済は民間部門の強い国と政府部門の強い国(GDPに占める政府支出の割合が6割を超えるなど)に分けることができます。民間部門の強い国はクック、パラオ、バヌアツ、フィジーなどで、いずれも観光が主要産業でした。そのため、コロナ禍による経済、財政に与える影響は民間部門が強い国ほど大きく、今回の記事では、クック、フィジー、バヌアツの例が挙げられています。
 
一方、政府部門が強い国においても、コロナ禍の長期化により財政悪化が避けられず、民間支援や歳入確保のために新たな財源を探している国もあるようです。いずれブレーキングニュースで取り上げることになるでしょう。
 
次に太平洋島嶼国の債務について。

融資を受けることは、財政赤字補填ではなく社会インフラ投資目的であれば、国の発展を促進するために重要な選択肢です。太平洋島嶼国の中で、中国ばかりでなく、日本、豪州、ADB、世銀などから融資を受けたり、公債を発行して資金を調達しているのは、バヌアツ、サモア、トンガ、フィジー、パプアニューギニアなどになります。コロナ前の状況で言えば、バヌアツを除き、いずれも債務GDP比が5割前後になるように調整され(フィジーでは対外債務はGDP比20%以下)、IMFの債務持続可能性分析(DSA)では低リスクから中リスクの評価がなされていました。これらの国々を含む太平洋島嶼地域では、ときに大規模な自然災害により一時的に落ち込むことはありつつも、2010年代は3%を超える安定的な経済成長が続きました。将来的にも安定した経済成長が予測されていたことから、これらの国々では先行投資として借入額を増やすことができましたが、コロナ禍により経済が鈍化あるいはマイナス成長に転じたことで、これらの国々の債務GDP比が悪化しました。特に民間部門が強く、観光産業が活発だった国では財政危機回避や民間部門支援のための資金調達が必要であり、債務GDP比がさらに高まる可能性があります。いずれこれらの国々の債務負担軽減のために国際社会の協力が必要になるでしょう。
 
最後に、中国と国交を有している太平洋島嶼国から見た中国について。

近年の太平洋島嶼地域外の報道を見ると、中国は最近になって経済協力を始めたり、中国の援助は悪いものといった印象を受けることがあります。しかし、実際には中国は90年代には太平洋島嶼国に対する経済協力を始めていました。背景には台湾承認国の削減、地域機関への関与拡大、経済拠点の確保といった目的があったものと推察されますが、先進国側の支援しか選択肢がなかった国にとっては、中国は新たな資金源として注目されました。
 
例えば、2006年、トンガで民主化運動が暴動に発展し首都ヌクアロファの中央商業区(CBD)が破壊されるという事件がありました。トンガ政府はCBD再建には当時の国家予算の2.5倍を超える4億トンガドル(パアンガ、約240億円)を必要とし、先進国側に支援を求めましたが、豪、NZが民間銀行にトンガ民間企業向けの融資資金約10億円を拠出したり、小規模な贈与を行ったものの、先進国はその要請に応えることができませんでした。当時はトンガは円借款の対象国ではなかったでしょうし、規模や対象の面から無償資金協力も困難だったのでしょう。

そこで手を挙げたのが中国。中国はトンガに対して、2001年と2003年に高校改修計画で数億円の融資を行った実績がありました。2007年、中国はCBD再建支援を約束し、2008年に利率2%、5年の返済猶予期間(後に10年に延長、2018年に再延長)という条件で1億1200万トンガドル(約70億円)の融資を行いました。この中国の融資がなければ、トンガの中央商業区の復旧は数年遅れたと考えられます。トンガはこの資金をCBD以外の政府庁舎建設に使用したようですが、2009年には新たに幹線道路改善を目的とする9,200万トンガドル(約55億円)の融資を受け、トンガの対中債務は当時の国家予算に相当する2億トンガドル(約125億円)となりました。いずれの融資も返済猶予期間が延長されていますが、トンガ財務省資料によれば、この返済猶予期間中も利息や管理費等を合わせて借入額の3.75%程度を毎年中国側に支払い続けているとみられます。
 
他にも、数十億円規模のスポーツ施設や政府庁舎などの建設支援は先進国のODAでは開発援助の対象となりにくいですが、中国はこのような部分についても贈与や融資により積極的に支援を行ってきました。最近ではバヌアツ、ソロモンで支援が行われています。
 
このように、中国は時間をかけて太平洋島嶼地域における新たな開発パートナーとしての地位を築き、一帯一路以降は、これら一見ランダムに行われていた支援が面的に戦略性を見せるようになり、港湾開発計画や民間企業による大規模な島嶼・村落開発計画が報じられるようになりました。
 
先進国の支援は事務手続きが多く決定までに時間がかかりますが、中国の支援は途上国間の南南協力であり先進国のODAのルールに従う必要がありません。融資を受ける側にとって、決定が早く融通が利くことから、中国は開発資金源として魅力的に映るのでしょう。2014年頃には、中国の開発パートナーとしての地位の高まりを示すかのように、クックでNZと中国の協調案件がありました。地域では先進国と中国の初めての協調案件として注目されましたが、NZには中国を先進国側のルールに近づけさせたいという考えがあったものと思われます。
 
キリバスの例も紹介します。キリバスでは近年の入漁料収入増大により大幅な財政黒字が続き、将来世代のためにと黒字分を独立前から設置されている歳入安定化準備基金(RERF)に積み立てていました。現在では5年分の国家予算を超える10億豪ドル規模に達しているようです。マーマウ大統領は2016年の就任後、太平洋島嶼国で最も遅れているキリバスの経済開発を促進するため、その基金の一部を担保に先進国側から融資を得ようとしましたが、それに応じる先進国は現れませんでした。2019年9月、キリバスは中国と国交を結ぶことになりましたが、その際、国家予算を超える規模の中国からの融資話が報じられていました。
 
中国と国交を有する太平洋島嶼国にとって中国はすでに開発パートナーの1つとなっており、先進国側が一方的に中国の援助を批判することは、かえって先進国側の立場を悪化させる可能性があります。先進国側としては、建造物の質、環境への影響、事業の透明性などの面から丁寧にアプローチする必要があるかもしれません。
(塩澤英之主任研究員)

海洋政策研究所(島嶼国・地域部)
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