クック諸島野党、マーク・ブラウン首相に対する不信任案を提出(2025年2月13日、ラロトンガ、COOK ISLANDS NEWS/PACNEWS)
クック諸島、ニュージーランド、主権、中国、安全保障
11月19日、パラオ選挙委員会は同3日に行われた同国総選挙の結果を認定し、勝者を公式発表した(同10日に不在者票の開票があり、1週間の異議申し立て期間を経て、ほぼ予定どおり発表された)。
大統領選はビジネスマンで元上院議員のスランゲル・ウィップス・ジュニア氏が5,699票を獲得し、勝利した。対立候補のレイノルド・オイロー副大統領の得票は4,351票であった(大統領の任期は、同国憲法で連続2期8年までと定められているため、現職のレメンゲサウ大統領には出馬資格がない)。
副大統領選では、ジェリン(・センゲバウ)・シニア上院議員が5,112票を獲得し、4,671票を得た対立候補フランク・キョータ上院議員に勝利した。
(全国区計13議席を争う)上院議員選では、メーソン・ウィップス氏が7,099票を獲得しトップ当選した。他の当選者はスティーブン・クアルテイ氏、アンドリュー・タベルアル氏※、マーク・ルディマ氏、ルケバイ・イナボ氏、ホッコンス・バウルス氏(上院議長)、K.トップス・スンギノ氏※、T.J.レメンゲサウ氏※、ウミー・センゲバウ氏※、ジョナサン・イセアル氏※、ケライ・マリウール氏、セシル・エルベデアル氏※、レギス・アキタヤ氏。13名中6名が新人(※)という結果となった。
(16州各州に1議席ずつ割り当てられている)下院議員選では、サビーノ・アナスタシオ下院議長など多くの現職議員が再選された。
勝者は、来年1月21日に開催される就任式で宣誓を行う。
選挙委員会によれば、有権者登録16,754人に対し、投票数は10,204票であった。
パラオは新しい時代の幕開けを迎えた。
これまで同国大統領選は、1994年の独立前から続くナカムラ元大統領(在職期間:1993年~2001年)とトリビオン元大統領(在職期間:2009年~2013年)のライバル関係、開発派と環境保護派の対立が根底にあった。同国史上最長の在任期間を誇るレメンゲサウ大統領(在職期間:2001年~2009年、2013年~2021年)は、ナカムラ元大統領の系統を引き継ぎつつ、同国憲法にうたわれている経済開発と同国民のアイデンティティの基盤である自然環境の保護の両立を追求し、多くの実績を残した。今回選出されたスランゲル・S・ウィップス・ジュニア次期大統領は、若い世代の支持を広く集めており、長年続いたナカムラ派とトリビオン派のライバル関係からは一線を画している。(ナカムラ元大統領は本年10月に逝去された。76歳だった。)
スランゲル・S・ウィップス・ジュニア次期大統領は1968年米国生まれの52歳、現地有力家系の一つウィップス家の4人兄妹の長男である。母親は米国人で、父親のスランゲル・ウィップス氏は自治政府時代の1980年代から20年以上にわたり国会議員を務め、下院議長、上院議長を歴任した。スランゲル・ジュニア氏はビジネスマンとして紹介されることが多いが、自身も2009年から2017年の2期8年にわたり上院議員を務め、議員以前も父親の側近として活動していた。今回の上院議員選でトップ当選したメーソン・ウィップス氏は実弟である。
同次期大統領は、2016年11月の大統領選で義理の兄である現職レメンゲサウ大統領と争ったが、5,129票対4,865票の僅差で敗れ、民間に転じていた。今回の選挙では、憲法規定で連続3期目の出馬ができない現職レメンゲサウ大統領の後継候補であったオイロー副大統領を5,699票対4,351票の大差で破り、悲願を達成した。大金持ちと揶揄されることもあるが、日頃から生活困窮者を支援したり、干ばつなどの自然災害時には住民のために私費を投じるなど、現地ではその人格を称える声がよく聞かれ、世代を問わず人気が高い。
同次期大統領の支持者や家族関係を見ると、レメンゲサウ大統領に近い部分もあるが、ナカムラ元大統領支持者とは一線を引いている。経済重視であることは間違いないだろうが、SDA(Seventh Day Advantist)教会、女性グループ、環境保護派、若い世代から広く支持を集めており、かつてのトリビオン政権時代に似た性格(環境重視など)を持つ可能性がある。
副大統領選では弁護士でもあるジェリン・センゲバウ・シニア上院議員が勝利した。同国2人目の女性副大統領となる。同国副大統領は閣僚を兼務するが、同氏は国務大臣(外務大臣)を希望している。新政権での活躍を期待したい。
上院議員選では、新人が6名当選した。特に、環境分野の専門家でもあるウミー・センゲバウ天然資源環境観光大臣、セシル・エルベデアル官房長官、レメンゲサウ大統領の長男T.J.レメンゲサウ氏など、30代から40代の若く意識が高い方々の活躍が期待される。一方、同じく若い世代で、ナカムラ元大統領の後継者であるアリック・ナカムラ議員であるが、2016年の選挙では6,300票余りを獲得し当選したものの、今回は2000票近く票を減らし、再選を逃している。
パラオは、過去10年、観光産業振興により高い経済成長を実現してきた。しかし、現在のコロナ禍により経済構造が崩れ、今後数年にわたり、経済・財政問題を抱えることが予想される。新政権は国の経済財政構造の再構築に取り組む必要があり、開発パートナーとの関係がより重要になるだろう。
新政権下においても、基本的にパラオが「親日国」であることには変わりはないだろうが、日本側は「親日国であるから」と甘えてはならない。情実ではなく、相手に敬意を払い、真摯に丁寧に対話を重ねることが重要になるだろう。今後、長く続くであろうウィップス政権と日本の戦略的なパートナー関係の構築を期待したい。