◆本誌初めての座談会形式によるクルーズ特集号をお届けする。4人の熱の入ったやりとりは実はここに収録しきれないほどの数倍にも上るボリュームであったものをバッタバッタと切り捨て短縮して編集された。それでも、いやそれ故に、濃縮された内容となっていると読者諸氏も受け止めていただけるのではなかろうか。
◆本号でさらに注目されるのは、本誌では必ずしも多くない産業のあり方論議がなされているという点である。港湾内における水上バスやハーバークルーズ、海岸景勝地における遊覧船事業や中遠距離フェリーもあるが、クルーズとはこれらとまったく異なるものである。いずれもそれぞれに産業的視点から分析される必要があるものの、クルーズ分野の需要掘り起こし策、「輸送のためでなくレジャーのための客船」のあり方論議をさらに掘り下げる必要がある。
◆と、いつものように訳知り顔で書いたものの、正直に告白すれば、編集子はまだ本格的なクルーズ体験がない。しかし、片道2日、停泊3日また同じ船で2日かけて戻るという東京-小笠原航路に乗った経験(空路なし)はある。乗船してしまえば何があろうと途中下車不可。急用で呼び戻されても戻りようがないので、かえって開き直って往復の船旅と島での滞在を堪能することができた。
◆北海道から沖縄まで多様な日本の海と島々をグルッと巡り、それぞれの文化を味わう、誰もが乗りたがるようなクルーズ航路が国内にも早く実現してほしい。それらが賑わうようになれば、客層も拡大して、北はアリューシャン列島からアラスカへ、南は東・南シナ海や太平洋の島々へのクルーズも順次活発になっていくのでは。本号が出る頃はイラク戦争も終結しているかもしれないが、世界中でクルーズを楽しめるような平和を祈りたい。(了)
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