Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第518号(2022.03.05発行)

Blue Earth Project

[KEYWORDS] 女子高生/社会活動/海ごみ
Blue Earth High School代表、海ごみゼロアワード2021最優秀賞受賞◆谷口 理

Blue Earth Projectとは、「女子高生が社会を変える!」をキャッチフレーズに、海外1校を含む19カ所でこれまで15年間で1,000人以上の女子高生が活動してきた環境啓発活動である。
海ごみ問題では、街中の飲食店に協力依頼をして海洋プラスチックごみ削減に向けたキャンペーンの実施や、ステージ啓発を行ってわかりやすい劇で海ごみの問題を伝えた。今後も全国に環境問題を訴え、解決アクションを提案していきたい。

女子高生が社会を変える!

女子高生といえども「社会の一員:A member of society」であり、そういう意識をいかに若い時期から持つかで、将来、社会の中で生きていく力に差が出てくる。そう考えていた筆者(当時、松陰高等学校(神戸)専任教員)が、学校内だけではなく社会の中で明確な課題意識と解決アクションを実行に移せる教育を模索していた時に、阪神淡路大震災が起きた。
復興に向かう街の中で、震災復興住宅での手作りコンサート、老人ホーム内での市場開設、観光ボランティア等々、毎年70件近くのプログラムが、校内活動の中、自然と生まれたが、これらの活動には大きな学びと気づきがあった。それらはやがて、「長期にわたり課題解決」のアクションを社会の人に訴えていくプロジェクト型学習になっていった。これが後に環境問題というグローバルなテーマに絞り込まれて「Blue Earth Project」となった。キャッチフレーズは「女子高生が社会(世界)を変える!」である。
環境問題はニュースでは取り上げられるものの、大人たちからの啓発ではこれからの世界を担っていく若者や子どもたちの心になかなか届かない。また、難しく考えても長続きしない。そこで、Blue Earth Projectは大企業のように潤沢な資金や最新鋭のテクノロジーがあるわけでもないが、女子高生にしかできない、女子高生ならではの感性やアイデアや発信力を最大限に生かして、スマートで楽しく誰でも簡単に取り組めるエコアクションを考えて世の中に発信してきた。
生徒たちはいくつものチームを組んで自由に話し合い行動していく。失敗してもいい、そこから試行錯誤していけばいいと始めた。何よりも生徒たちが楽しく熱中していった。そして、高校卒業後も活動を継続する女子大生たちが、2011年にNPO法人Blue Earth Project※1を設立。全国でのエコ啓発イベントだけでなく、全国の高校に出向いて行き、Blue Earth Projectの活動を体験できるワークショップ「Blue Earth塾」を活動の柱としてきた。その成果もあって、神戸の松蔭高等学校から始まったこの活動は全国と海外1校を含む19か所に広がり、15年間で1,000人以上の女子高生が活動してきた。
そんな中、2018年度に環境省のプラスチックスマートキャンペーンが立ち上げられた。それまでの2年間、Blue Earth Projectでは、サンゴの保全や海洋酸性化等、海の環境問題に取り組んできていたこともあり、女子高生力を生かして二つの啓発方法で、この国民運動を街に広めることにした。

店舗での独自キャンペーンとエコ啓発イベント

生徒たちは2~3名のチームに分かれて、街中の飲食店を訪問し、店の大人相手に海洋プラスチックごみ削減を考えてもらうキャンペーンへの依頼に回った。キャンペーンの内容は、手作りの卓上POPを置いてもらうこと。POPには、海洋プラスチックの危機的現状や原因を伝え、プラスチックスマートキャンペーンのことも紹介した。四角柱に組み立てたPOPの中には、「女子高生が提案するプラスチック削減のためのMY行動宣言」の用紙を入れてお客様に記入してもらい、それをレジの回収ボックスに入れてもらった。生徒たちの依頼活動で、45店舗が協力してくださり、卓上POP延べ660個が街中に設置された。
店舗での独自キャンペーンと並行して、全国各地で海洋プラスチックの危機的状況と削減アクションを訴える独自イベントを実施した。実施場所は、神戸市立須磨海浜水族園、イオンモール神戸南、イオンモール沖縄ライカム、オキナワマリオットリゾート&スパ、神戸ハーバーランドumie、阪急西宮ガーデンズ、新宿御苑、横浜赤レンガ倉庫前、幕張メッセ等となった。イベントブースでは、海洋プラスチックごみ削減に向けて、女子高生らしくおしゃれで楽しく、ついやってみたくなるようなアクションを考案し、カラフルに装飾できるマイボトル作り、おしゃれなマイバッグ製作教室、そして楽しく体験できる分別体験コーナー等を実施した。
イベントではステージ啓発も実施した。海洋プラスチックごみによってウミガメやサメたちが傷ついて苦しんでいる。そこへプラスチックごみを投げ捨てる悪い奴らが現れるが、海洋プラスチックごみに関するクイズを受けていくうちに、プラスチックごみ削減のアクションを宣言するという劇で、歌あり、踊りあり、クイズありの、女子高生らしく明るく元気な熱演で、ショッピング途中に立ち寄ったお客様を引き付け、海洋プラスチックごみ削減を分かりやすく訴えることができた。
2019年3月には、幕張メッセで開かれた「SATOYAMA & SATOUMIイベント2019」で、アイドルのステージに登壇させてもらい、1万人近くが詰めかけたお客様を前に、普段はあまりプラスチックのことに興味関心がないかもしれない多くの人に、プラスチックスマートキャンペーンのことや海洋プラスチックごみのことを訴えることができた。

■店舗へのアタック ■2021年3月の阪急西宮ガーデンズにおけるイベントステージ

コロナ禍での発信、そして今後の活動

2020年、社会はコロナ禍に見舞われることになった。しかし、オンラインを使った方法に活路を見出し、「海洋プラスチックごみによる生物多様性の危機」をテーマに美ら海水族館や海遊館等の協力も得て11本の動画を製作しYouTubeにアップし、東京湾大感謝祭等全国規模のイベントにもオンライン出展した。
そして、2021年度のBlue Earth Projectでは、海洋ごみに対してペットボトル削減に向けた給水スポットの普及啓発といった陸域でのプラごみの発生抑制と、ビーチクリーンによるプラごみの回収処理を同時進行で行った。また、海ごみ発生につながる海への無関心を海への愛着に変えるため、海の漂着物を使ったおしゃれなシーボンアート作りなどで、女子高生ならではの海ごみ削減活動を続けている。
またオンライン会議システムが普及した結果、全国の参加メンバーに、筆者からより細かく多頻度に指導できるようになった。生徒同士でも、学校を超えてエコアクションプラン等、様々な意見交流も盛んになった。そして、全国規模のBlue Earth Projectをまとめる事業Blue Earth High School※2も生まれたこともあり、全国の女子高生一人一人の200歩ではなく、参加メンバー200人の一歩を結集して、より一層全国に海ごみ問題を訴え、解決アクションを提案していきたい。(了)

  1. ※1NPO法人Blue Earth Project http://www.bepbep.net/
  2. ※2Blue Earth High School https://bep2020.wixsite.com/bluehighschool

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