Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第497号(2021.04.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆養殖業を含む漁業と水産加工業から成る日本の水産業の労働力不足は、深刻な状況にある。日本政府によれば、今後5年の間に約2万人が不足すると予想されている。そうした中で、「技能実習制度」と2019年4月から導入された新たな在留資格である「特定技能制度」を利用した外国人労働者の雇用に活路を見出そうという動きがある。その背景には、2019年現在、高齢化率が39.7%に達している漁村の実情がある。就業者の約2割を占めていた65歳以上の熟練労働者が引退しており、人手不足に拍車がかかっている。
◆佐々木貴文北海道大学大学院水産科学研究院准教授から、こうした日本の水産業における外国人依存の実態についてご寄稿いただいた。日本の水産業が産業規模を維持するためには、外国人労働力を頼りにするしかない現実があるが、コロナ禍における外国人の入国制限でその外国人労働力依存がもつ脆弱性が露呈した。日本の水産業を持続可能な産業として発展させるための労働力の構成はいかなるものであるべきかを考えさせる論稿になっている。
◆新たな環境問題として海洋のプラスチック汚染に世界中の関心が集まっている。豊島淳子(公財)笹川平和財団海洋政策研究所研究員から、2020年秋に北極研究加速プロジェクト(ArCSⅡ)の一環として行われた、海洋地球研究船「みらい」を使った北極海におけるマイクロプラスチックの観測をご紹介いただいた。人間がほとんど足を踏み入れない北極もプラスチック汚染と無縁でない現状を知るとともに、それが北極海の海洋生態系にどのような影響を与えるのか、34日間にわたるサンプリングの分析結果が待たれる。
◆関西に住む人間には桜の季節の二条城のプロジェクションマッピングがおなじみだが、(株)メタルレッド代表取締役でクリエイティブディレクターの佐分利仁氏から、すみだ水族館の水量約350トンの国内最大級の屋内開放型ペンギンプールのプロジェクションマッピングについてご寄稿いただいた。プールの水は光を通過させるので、プールの床とその中央に配置されている擬岩の島に投影することになったとのこと。面白いのは水族館側のペンギンのためになるプロジェクションマッピングとの依頼の趣旨である。光の点を追う習性があるペンギンの行動を活用した演出プログラムの内容と水族館側の狙いについては、本誌をぜひご一読いただきたい。(坂元茂樹)

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