Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第489号(2020.12.20 発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆2020年の横浜でのダイヤモンド・プリンセス号や長崎でのコスタ・アトランティカ号の新型コロナウイルスの集団感染の発生により、2019年には世界で3,000 万人に達していたクルーズ人口の伸びに大きな危機が到来した。日本でも、クルーズ人口は同年35万7千人と過去最高を更新していた。Withコロナの中、郵船クルーズ(株)「飛鳥Ⅱ」、商船三井客船(株)「にっぽん丸」、日本クルーズ客船(株)「ぱしふぃっくびいなす」は、(一社)日本外航客船協会(JOPA)が策定したガイドラインに準拠した安全に関する手順書を整えて、(一財)日本海事協会の審査・認証を受け、11月から順次運航を再開をしている。
◆田中三郎(一財)みなと総合研究財団首席研究員・クルーズ総合研究所副所長から、クルーズ船における感染症対策と今後の課題についてご寄稿いただいた。2020 年、米国疾病予防管理センター(CDC)によると、世界では40 隻以上のクルーズ船で新型コロナウイルスの集団感染が発生したといわれる。CDCは、世界保健機構(WHO)が定めた船舶衛生ガイドを実施するために船舶衛生プログラム(VSP)を定め、米国に寄港するクルーズ船に米国公衆衛生局(USPH)による衛生検査の実施とVSPの基準をクリアするよう求めている。田中氏は、日本もこうした米国の取り組みをまねて、船舶衛生プログラムを定め、訪船検査の実施体制を構築すべきだと提案する。
◆永野正宏国立アイヌ民族博物館 文化庁企画調整課調査官から、江戸時代後期(19世紀前半)の蝦夷地における松前藩と江戸幕府の天然痘の流行対策についてご紹介いただいた。「人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた」と言われる新型コロナウイルスの感染拡大が続く今日の日本にとっても、天然痘の流行地である江差からの和人の蝦夷地への差遣禁止やアイヌの人々の山への避難などの感染症対策は、今でもわれわれの参考となるように思われる。
◆浦田慎(一社)能登里海教育研究所主幹研究員より、大学等の専門家の出前授業などを海洋教育の成果とする従来の方式とは異なる、学校教員が主体となる新たな連携モデルである「海洋教育の能登モデル」についてご紹介いただいた。第3期海洋基本計画でも、「海洋人材の育成と国民の理解の増進」は海洋の主要政策の一つである。「海に親しむ」「海を守る」の観点からのプログラム開発のみでなく、特別支援学校への海洋教育支援に取り組む能登里海教育研究所の「誰一人取り残さない」海洋教育に期待したい。(坂元茂樹)

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