Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第480号(2020.08.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦海水浴シーズンも後半になるとクラゲに刺される危険が増す。刺されて泣き出す子にも我慢する子にも、海の思い出として残るだろう。クラゲの触手には、針を格納する刺胞という袋が無数にあり、刺激を受けると刺胞から針が飛び出す。赤いみみず腫れになるが、毒性の強いクラゲの種類もあるので侮ってはいけない。このクラゲの思い出が2020年の夏には減るだろう。COVID-19感染の拡大防止などのために海水浴場の開設中止が相次いだ。それに伴い砂浜整備をしないところもあるだろう。今年のクラゲが水族館の思い出となった場合には、クラゲが漂う専用水槽の仕掛けにも目を凝らしていただきたい。浮遊の生態に適した絶妙な水流が見えてくるだろう。
♦フロンティア漁場整備事業は2007年に国直轄の事業として開始され、現在、その成果が対象水産生物の成長と生息密度、周辺を含めた漁獲量の向上に表れているという。水産庁漁港漁場整備部の浅川典敬課長より事業の詳細を解説していただいた。産卵や成育を保護する保護育成礁と底層の海水を上層のそれに混合するマウンド礁を大規模に設置し、水産生物の生態を利用して保護と増殖を目指す海にやさしい漁業である。魚食が世界に広まるなかで、海洋生物資源を守る先駆的漁業の開発に期待したい。
♦海洋資源の持続可能な利用と経済的な発展の両立をサポートする投資、すなわちブルーファイナンスが注目されている。(公財)笹川平和財団海洋政策研究所の吉岡渚研究員と田中元研究員よりグリーンファイナンスに端を発したブルーファイナンスの背景、海洋利用・保全や海洋の様々な課題解決に向けられる投資の現状についてご寄稿いただいた。両氏は、今後も民間セクターの資金動員や海の管理の難しさなどの困難が予想されるので、関係各位の連携強化が肝要だとしている。必読である。
♦東京都の有人11島は東京諸島と総称されている。その島々を結ぶ航路の主役が東海汽船㈱の何隻かの船である。大型客船2隻と水中翼船ジェットフォイル4隻が就航している。東海汽船旅客部門の石坂直也氏より東京諸島の魅力と2隻の新造船について教えていただいた。6月に「さるびあ丸」、7月に高速ジェット船「結」が就航した。バリアフリーや排ガス抑制、最新エンジンなどが備わっていて、人にも自然にもやさしく、しかも速い船である。航路図や新造船の写真を見ながら船旅に想いを馳せた。(窪川かおる)

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