Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第475号(2020.05.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆2012年の「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で「ブルーエコノミーの推進」が初めて提唱された。海洋資源の有効活用と海洋の保全を両立させようというブルーエコノミーの重要性は、アフリカ連合(AU)の長期ビジョン「アジェンダ2063」や日本が主催した2016年の第6回アフリカ開発会議(TICAD)の成果文書「ナイロビ宣言」でも強調された。そうした中、ケニア主催、日本・カナダ共催の「持続可能なブルーエコノミーに関する国際会議」が2018年に開催された(詳しくは、海洋政策研究所「海のジグソーピースNo.115(小林正典)」参照)。
◆渡辺浩幹FAO上級水産専門官から、ブルーエコノミーに端を発したFAOのブルー・グロース・イニシアティブ(BGI)についてご寄稿いただいた。本稿では、「Growth(成長)」に焦点を当てたBGIの取り組みの一つとして、ブルーファッションが紹介されている。先の2018年国際会議のサイドイベントとして、これまであまり利用されてこなかった魚の皮(ナイルパーチの皮)を使った服、鞄や靴などのファッションショーが開かれた由。新たな水産資源の持続可能な利用により雇用と収入が沿岸共同体にもたらされることを期待したい。
◆髙井晉笹川平和財団海洋政策研究所特別研究員からは、2020年1月20日に開設された領土・主権展示館についてご紹介いただいた。ご案内のように、日本はロシアとの間に北方領土、韓国との間に竹島、そして中国との間に尖閣諸島の領有権紛争を抱えている。新たな展示館では、日本固有の領土であるこれらの島嶼の領有権の根拠を示す歴史的事実関係が要領よく纏められている。多くの人々の来館と同展示館が内外への発信拠点となることを期待したい。この機会に、海洋政策研究所島嶼資料センターのホームページ(https://www.spf.org/islandstudies/jp/)ものぞいていただければ幸いである。
◆清本正人お茶の水女子大学湾岸生物教育研究センター長からは、本誌474号に続いて、お茶の水女子大学の海洋教育の実践をご紹介いただいた。“教室に海を”プロジェクトとして、ウニの卵と精子の提供により、毎年全国の100以上の学校で、1万人を超える児童生徒に、受精の瞬間を見せるだけでなく、幼生さらには棘々のウニの形に育つまでを観察できるように支援しているという。発生教材としてのウニの特徴と利点については本誌をご一読いただくとして、日本の全ての子ども達にウニの発生を観察してもらえるようにスケールアップしたいという、同プロジェクトの発展を期待したい。(坂元茂樹)

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