Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第384号(2016.08.05 発行)

編集後記

山梨県立富士山世界遺産センター所長◆秋道智彌

◆2016年盛夏。国内では政治の夏が一段落したが、世界は一筋縄ではいかない流動的な情勢が続いている。英国のEU離脱、ISのテロ拡大、北朝鮮のミサイルによる威嚇、中国の南シナ海の権益をめぐるハーグ仲裁裁判の判決などがその端的な例である。
◆こうしたなかで、北極海は新たな火種となる危惧が浮上するとともに、新たに創造的な海の可能性を探る場であることが明白となっている。日本は北極協議会(1996年設立)にオブザーバーとして2009年以降に参加している。国立極地研究所の榎本浩之氏は、2015年より新たな「北極域研究推進プロジェクト」の立ち上げにさいして、わが国が果たす使命について高らかにその意義を謳っておられる。日本は情報収集能力において卓越した力をもつことが世界的にも認知されている。北極圏協議会の加盟8カ国の足並みがそろっているわけではけっしてないが、日本は2013年3月に北極担当大使を新設して、積極的な関与を政策として打ち出したのはその布石である。「科学外交」をキーワードとして、新しい外交モデルを通じた今後の躍進が大いに嘱望される分野である。国立の研究所をはじめ、大学諸機関と連携した北極域の総合的な研究を振興する努力に期待したい。
◆海の研究では、他分野の研究以上に独創性、地域連携、総合性が不可欠となっている。将来の研究の芽を育むうえで、若手の創造的な活動にも注目したい。愛知県立三谷水産高等学校による水産製品の新たな開発の取り組みはなかなかパワーのある活動だ。企業や自治体を基盤とする開発事業は全国各地でおこなわれているが、三谷水産高等学校がスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)として、カツオの加工品である愛知丸ごはんや愛知丸せんべい、キメジを使った愛知丸マグロッケ、メヒカリを加工したメヒコロボール、アワビの陸上養殖などの取り組みを進めており、地域のブランド品として商品化されるなどの成果を上げている。同高等学校の丸﨑敏夫校長の意気込みが全国の水産高校への大きな刺激となることは間違いない。海の創造活動の全国展開を夢見るおもいだ。
◆海の創造という点からいえば、芸術分野はそのフロントにある活動であることは間違いない。ただし、芸術は個人の芸術家による活動であることが多く、地域連携、他分野との協業面ではけっしてなじまないと考えてしまう。ところが、2010年以来、3年ごとに瀬戸内海でおこなわれてきた国際芸術祭は地元との連携を基盤とするアートフェスティバルである。香川県知事であり、瀬戸内国際芸術祭実行委員会の会長である浜田恵造氏はとにかく現地に出向き、地域との交流と芸術制作をおこなう、滞在型の活動と位置づけておられる。県外だけでなく、海外からの参加者も増加傾向にあり、期待感が高まる。瀬戸内は大阪から関門海峡まで島伝いに広がる地域にあり、今後、香川県を含む瀬戸内海の広域でこうした活動が展開することが望ましいだろう。瀬戸内海の島じまをつなぐ創造の場になればとおもう。 (秋道)

ページトップ