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オーシャンニューズレター

第383号(2016.07.20発行)

うみそら研の発足について~国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所~

[KEYWORDS]海上・港湾・航空技術研究所/国立研究開発法人/科学技術基本計画
(国研)海上・港湾・航空技術研究所理事長◆大和裕幸

2016(平成28)年4月1日に海上技術安全研究所、港湾空港技術研究所、電子航法研究所を統合して、海上・港湾・航空技術研究所(通称、うみそら研)が発足した。
3研究所のこれまでの成果をさらに発展させるとともに、統合によるシナジー効果や、新しい研究機能を加え、わが国のイノベーションの駆動力としての研究所像をイメージしながら統合の実質を作り出していく。

3研究所の統合

2016(平成28)年4月1日に、国立研究開発法人海上技術安全研究所(東京都三鷹市)、港湾空港研究所(神奈川県横須賀市)、電子航法研究所(東京都調布市)は、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(以下、うみそら研)として統合され、三鷹市新川の海技研を所在地としました。研究所の特性やプレゼンスを損なうことがないように、3研究所の名称は継続使用することとしています。統合研究所には理事長1名、理事4名、そのうち1名が経営企画担当、他の3名が3研究所長を兼務し、監事2名が置かれています(図1)。
海上技術安全研究所は1916年7月に逓信省の船用品検査所を起源として、本年で100周年を迎えます。2001年独立行政法人海上技術安全研究所、2015年に国立研究開発法人化、2016年に海上・港湾・航空技術研究所に統合されました。海上における安全、海洋環境の保全、海事産業の競争力強化、海洋産業の創出などに貢献してきました。港湾空港技術研究所は1946年鉄道技術研究所第7部港湾研究室として発足し、2001年の独立行政法人化の際に国土技術政策総合研究所と分離、港湾空港技術研究所となりました。港湾・空港の整備、沿岸域管理、災害メカニズムの解明に基づく防災減災技術、インフラの効率的維持整備などに貢献してきました。電子航法研究所は1961年運輸技術研究所航空部電子航法研究室として発足し、独立して1967年に電子航法研究所となりました。航空交通管理、空港運用の高度化などの研究を行い、首都圏空港の安全性と容量拡大などにより、経済社会の発展に寄与してきました。
このように3研究所それぞれに国の技術政策を支え、産業界に貢献し、また国際的にも評価されてきました。これをさらに強力に押しすすめながら、統合の効果を実現することが求められています。

■図1 統合された研究所の組織図

第1期中長期計画の概要

今後7年間のうみそら研の中長期計画※1は、第1から第4までわかれて記述されており、概要は以下のとおりです。
「第1 研究開発の成果の最大化その他の業務の質の向上に関する目標を達成するためとるべき措置」では、分野横断的研究と3研究所個別研究の具体的な課題と、新たにおかれた経営戦略室によるマネージメントの充実、を掲げています。橋渡し機能の充実として、大学や企業との共同研究プラットフォーム形成、知的財産権の普及活用などが述べられています。
「第2 業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置」では、統合に伴う業務運営の効率化と経費削減、業務の電子化が述べられています。
「第3 財務内容の改善に関する目標を達成するためにとるべき措置」では、運営費交付金以外の収入の確保が書かれています。
「第4 その他業務運営に関する重要事項」では、内部統制の確立、ミッションと整合した人事、外部有識者の評価、施設・設備の維持などが言及されています。

■図2 研究所の将来像

研究所の将来のあり方

以上のことをふまえて、図2に研究所の将来機能を示します。大学には学術的シーズがあり、研究所は大学との共同研究により知識創造のループを作り、やがて体系化された知識は大学でのカリキュラムや産業の基盤となります。他方、研究所では企業のニーズに基づく研究開発も行っています。i-shipping、i-constructionのように国や国土交通省の政策に依拠するものが多く、これも技術玉成のループを構成して、その成果を企業に移転します。研究所機能として強化すべきものとして、AI(人工知能)などの共通基盤技術研究機能と、知的財産権利用・産学官連携機能があります。
このことから、研究所は①アカデミズムとインダストリーの交流、②基礎技術の充実と産業知識の体系化、③イノベーションと新技術、未来創造の拠点、ということができます。第5期科学技術基本計画※2にも、「国立研究開発法人は、(中略)イノベーションシステムの駆動力として組織改革と機能強化を図ることが求められている。(中略)わが国の持続的発展に不可欠な基盤となる技術については(中略)産官学の技術・人材の糾合と技術の統合化を推進する役割が期待されている。」と、あります。

オープン・イノベーション・プラットフォーム

各研究所は個別分野の政策の技術的な支えとして個別に機能してきました。統合された研究所は分野融合により新しい分野を開拓し、さらにイノベーションシステムの駆動力の役割を果たさなくてはなりません。研究所は大学と企業の双方と長い共同研究をしており、それをベースにしたオープン・イノベーション・プラットフォーム機能も期待されます。うみそら研が知識と情報、人材が集積する未来創造の場となることが国民から付託された使命と考えています。(了)

  1. ※1.国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 第1期長中期計画http://www.mpat.go.jp/disclosure/source/mpat_1st_chuchoki.pdf
  2. ※2.科学技術基本計画、平成28年1月22日閣議決定、http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

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