Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第370号(2016.01.05発行)

IMO世界海の日パラレルイベント2015

[KEYWORDS] 横浜宣言/海事の教育および訓練/人材育成
国土交通省海事局総務課長◆河村俊信

国土交通省海事局は、第20回目の海の日となる7月20日および翌21日に日本初となる「IMO世界海の日パラレルイベント2015」を開催した。
2日間にわたり「海事の教育および訓練」をテーマに国際シンポジウムを開催し、議論の成果を『横浜宣言』としてとりまとめた。

IMO世界海の日

日本には、7月の第3月曜日に「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」祝日である「海の日」がある。他方、国際海事分野にも国際海事機関(IMO)が定める「世界海の日(World Maritime Day)」という日がある。「世界海の日」には、安全、環境保全、船員、海賊等に関するその年のテーマを決めてIMOの活動状況を紹介するとともに、慣例上9月最終週の木曜日にはロンドンのIMO本部において祝賀行事が開催される。さらに、各加盟国にも9月最終週のいずれかの日に祝賀行事を行うことを推奨し、海事思想の普及に努めている。
2005年からは、IMO本部における祝賀行事とは別に、シンポジウムや視察等からなる「世界海の日パラレルイベント」が開催されている。「世界海の日パラレルイベント」は、加盟国のいずれかの国がホスト国となって開催されており、IMO関係者を含む海事関係者が世界中から広く集まるイベントとなっている。2015年は日本がホスト国となり、国土交通省海事局は、第20回目の海の日となる7月20日(月・祝)および21日(火)に、IMOおよび「海の日」特別行事実行委員会との共催により「IMO世界海の日パラレルイベント2015」※1を開催したので、これを紹介する。

IMO世界海の日パラレルイベント2015

■開会の挨拶をされる太田国土交通大臣

■次期開催国トルコに開催国旗の引継ぎをする西村国土交通副大臣

開会式では、主催者である太田昭宏国土交通大臣、IMO關水康司事務局長、「海の日」特別行事実行委員会宮原耕治会長からそれぞれ挨拶を行った。
太田大臣は、世界における海事産業・海洋開発産業の重要性と、これら産業を支える人材育成に世界の海事関係者が一体となって取り組むことの必要性と、国際シンポジウムにおいて、人材育成の未来への方向性が示されることへの期待を表明した。關水事務局長は、海事人材の今後の需要見通しや、人材育成に関するIMOの取り組み等も紹介しながら、質の高い人材育成の重要性について述べ、国際シンポジウムにおいて「海事の教育および訓練」をテーマに議論を行う意義について説明した。宮原会長は、人材育成をテーマとした国際シンポジウムを開催することへの評価、視察を通して海外の方が海洋国日本についての理解を深めることへの期待について述べるとともに、全国的に展開している関連行事やイベントへの参加を呼びかけた。
国際シンポジウムでは、「海事教育・訓練に関するこれまでの取り組み」「海事から海洋への広がり」「次世代に海を親しませるための教育」「将来の海事教育・訓練のあり方」「海洋遺産を活用した教育」を議題とする5つのセッションと、關水事務局長、世界海事大学(WMU)C. Doumbia-Henry学長および国際海事法研究所(IMLI)D. Attard所長による特別セッションが開催された。各セッションでは議題に基づき白熱した議論が行われ、以下のような結論に至った。
・高度化する技術・規則・操船等に対応すべく、質の高い人材を育成するため、官民学の連携を強化して世界的に海事人材育成のレベルアップを図る必要があること。
・IMOによる技術協力、WMUおよびIMLIによる海事人材育成の促進が重要であること。
・ますます多様化・活発化する海洋資源開発、海洋調査等の海洋関連活動は地球全体の発展につながるが、環境への影響という課題があり、この分野に関する深い知見を有する人材および多分野横断的な対応ができる人材育成が必要性であること。
・海洋教育の重要性を認識し、次世代への海洋教育を進めていくため、社会全体が連携し、世界的に海洋への理解をさらに高める必要があること。
すべてのセッションの終了後、森重俊也海事局長が2日間の国際シンポジウムの結果を総括し、その成果を『横浜宣言』として取りまとめた。
閉会式および旗の引継式では、西村明宏国土交通副大臣および關水事務局長が、2日間を振り返って総括の挨拶を行うとともに、開催地である林文子横浜市長からも挨拶があった。最後に、IMO世界海の日パラレルイベントの実施国旗を次期開催国であるトルコに引き継ぎ、トルコ代表が2016年に向けた抱負を述べ閉会した。今般のイベントでは、世界60か国から約160人を含む400人を超える方々にご参加いただき、盛況のうちに幕を閉じた。

横浜宣言

『横浜宣言』では、海事人材の育成について、以下の6項目が宣言された。この『横浜宣言』は、9月にIMO本部で祝賀行事に併せて開催されたセミナー、11月に開催された第28回臨時理事会および第29回総会において、「IMO世界海の日パラレルイベント2015」の報告において言及された。
①より高度で技術的に複雑な船舶の運航に必要な基準を満たす、質の高い人材が十分に供給されるよう、海事教育・訓練をさらに高度化すること。
②IMOの特に人的要素に関する条約を効果的・効率的に実施する能力を強化するため、発展途上国に対するIMOの技術協力、法的協力を強化すること。
③世界海事大学等の国際的な教育機関における海事教育をさらに高度化するとともに、国際海事大学連合の活動を通じその連携を強化すること。
④すべての海洋関連産業の需要に合致する人材や、海洋環境の保護においてより広範な課題に対応できる人材を供給するため、法律、行政、産業、技術を含む多分野横断的な教育・訓練を促進するとともに、各分野における教育・訓練の質的向上および範囲の拡大を行うこと。
⑤海事教育および訓練へのより幅広い支援を実現するため、十分に訓練、教育された人材をさらに確保する必要性について、すべての利害関係者の認識を高めるとともに、すべての利用可能な手段等を通じ、一般市民、特に将来世代の、海洋への理解をさらに高めること。
⑥海洋に関する認識を高め、海事遺産をたたえ、海が人類にもたらす恩恵を想起し感謝するための特別な日をまだ制定していない国に対し、制定することを奨励すること。

おわりに

「IMO世界海の日パラレルイベント」は、2015年に20回目を迎えたわが国の海の日の特別行事である『海でつながるプロジェクト』※2の一環として行われた。パラレルイベントの開会に先立って行われた総合開会式では、政府の総合海洋政策本部長である安倍晋三総理、政府とともに中心になって特別行事の推進に当たった日本財団の笹川陽平会長、それに山谷えり子海洋政策担当大臣も登壇し、内外の参加者にわが国の海に対する取り組みをアピールできたものと思う。
当日の登壇者・参加者、支援をいただいた各団体をはじめ、開催にご協力をいただいたすべての方々に改めて感謝を申し上げたい。(了)

※2 『海でつながるプロジェクト』は本誌359号(2015/7/20発行)を参照下さい。

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