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Ocean Newsletter
第363号(2015.09.20発行)
- 国立科学博物館名誉研究員◆松浦啓一
- 国立研究開発法人海上技術安全研究所海難事故解析センター長◆田村兼吉
- 沖洲海浜楽しむ会、Gata girl◆野上文子
- ニューズレター編集代表(国立研究開発法人海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男
編集後記
ニューズレター編集代表(国立研究開発法人海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男◆この夏は連日の厳しい猛暑の後、一転して秋雨前線が日本列島上空に停滞し、次々と襲来する台風にも刺激されて各地に集中豪雨をもたらした。社会経済への影響と共に、収穫期を迎えた農作物への影響も心配されている。こうした異常気象の元凶は初夏にインド洋で発生したダイポールモード現象と太平洋で成長を続けるエルニーニョ現象にある。特に今年のエルニーニョ現象は観測史上最強のものになりそうである。これは海に蓄積された熱を大気側に開放する現象でもあるので、今年のスーパーエルニーニョ現象を契機として、次の十数年は地球温暖化の傾向がこれまで以上に強く顕れるようになるかもしれない。そのようなことになれば、地球の生態系にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。
◆今号の最初を飾るのは海底の砂地に描かれたミステリーサークルの写真である。この美しい砂のサークルにまつわるドラマを主人公の一人でもある松浦啓一氏に紹介していただいた。奄美大島の海底で20年ほど前にダイバーが発見、2011年に水中写真家の大方洋二氏がフグによることを目撃、それも新種のフグによることを松浦氏が学術誌に昨年発表して、アマミホシゾラフグとして新種登録がなされた。毎年2万種類もの生物が発見される中で、2015年度の世界の新種トップテンに選ばれている。ミステリーサークルは雄が雌を迎え産卵を促す巣ということであるが、それにしても実に美しい造形である。自然環境と生物生態の共進化がもたらした美をずっと未来につなげていきたいものである。
◆田村兼吉氏にはフェリーの安全性の向上に向けた国際海事機関や国土交通省の取り組みについて紹介していただいた。フェリーはその特徴である車両デッキの存在故に、一旦事故が起きると一般客船と比較して大惨事になりかねない。島嶼の多いアジアでは日本の中古フェリーが数多く活用されているが、ハード面だけでなく、安全基準や検査制度などのソフト面においても、わが国が国際機関と協力して指導性を発揮していくのはアジア諸国の信頼を一層強めることにもなる。
◆本号の最後のオピニオンはガタガールの野上文子氏によるものである。ガタガールは海を愛し、干潟や海浜の環境改善を市民社会と連携して進める女性たちからなる。大学院で生態系の研究を進めた後、5年前に結成したそうである。前号から三人の方に登場いただくことにしている。今回は吉野川河口の沖洲人工海浜における活動について紹介していただいた。この人工海浜は希少種「ルイスハンミョウ」の生息代替地として造成されたものである。環境改善は地域の歴史、文化に立脚し世代を超えて楽しく展開されなければ持続的には進まない。浜辺の多様なステークホールダーが結集する「沖楽会」の更なる展開を期待したい。(山形)
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