Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第309号(2013.06.20発行)

第309号(2013.06.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆「情報」という用語はいまでは広く流布するようになった。ネット検索による情報の収集が日常茶飯事となり、メディアを通じた情報が氾濫するご時世となったことがその証である。反面、個人情報や国家機密の漏えい、企業秘密の隠匿化など、情報公開のあり方自体が二極化する傾向も明らかとなった。海洋に関するさまざまな情報についてもその例外ではない。海洋研究において、収集された観測データを共有するための画期的なルール作りが始動している。(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)の今脇資郎氏は、海洋観測データを死蔵、ないし個人に管理をゆだねるのではなく、人類の共有財産とするデータポリシーの意義を訴えておられる。海洋分野では日本海洋データセンターが1965年以来、データ公開の役割を果たしてきたが、今後さらなるデータの共有と公開が世界レベルで進められるべきだろう。その成功例として水深2kmまでの水温と塩分濃度を漂流ブイにより世界中の海で測定し、共有するアルゴ計画がある。日本はかつて米国に次いで多くの数のブイを提供してきたが、予算が縮小され、他の国によるブイ数の増加もあり、オーストラリア、フランスなどに追随することになった。海洋調査データをコモンズ化する世界の動向をもとにアルゴ計画への積極的な貢献が今後とも要請されるだろう。
◆海洋とのかかわりというと、日本の外航船員数の凋落も過去40年間における顕著な傾向である。(一社)日本船主協会の五十嵐誠副会長は、日本における海技者養成と拡大のために抜本的な取り組みが必要であると熱く語られている。人材育成の取り組みとして、未来の優秀な海技者を養成するための広報プログラムを披露されている。専門的な教育は大学(2校)、高専(5校)、(独)海技教育機構(8校)を中心に実施されているが、高専からの進学ガイダンスがこの夏に全国各地である。進学ガイダンスは現在、普通科を対象としたオープンキャンパスや入試説明会を全国の大学はしのぎを削って実施している。魅力的なガイダンスの実施をぜひとも期待したい。
◆水産分野でも全国では新しい動きがある。福井県小浜市にある小浜水産高等学校は明治28年開校のもっとも長い歴史をもつ名門校だ。この4月から県立若狭高等学校に順次統合されることとなった。同校の小坂康之先生は、これまで水産分野での教育を地域の暮らしや食文化の発展に資するためのプログラムを実践するともに、水産分野を通じた地域への貢献者育成を提唱されている。こうした取り組みが全国各地で展開されたらという夢をわたしも抱いている。少子化のなかで水産高等学校の拡大は予算的に実現が困難であるとはいえ、海洋に関するさまざまな教科や指導内容を小中高を問わず実施・展開することは夢ではない。関係各位の連携を通じた海洋教育の推進を今後ともすすめていただければと願わずにおれない。(秋道)

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