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オーシャンニューズレター

第62号(2003.03.05発行)

第62号(2003.03.05 発行)

デンマークの洋上風力発電とメガフロートの活用

(株)渋谷潜水工業◆田中藤八郎

風力発電の先進地域である欧州においては、騒音などの問題から今後は洋上に風力発電装置を設置するケースが増加すると予想されている。地球環境問題の解決という意味からも、自然エネルギー利用を促進すべきであり、わが国においてもメガフロートと洋上風力発電を結びつける議論をもっと進めていくべきではなかろうか。

欧州の洋上風力発電

電力消費の13%が風力と言われるデンマークでは、首都コペンハーゲンの沖合い3kmに2,000kWの大型風車が20台並び2001年春から発電を始めている。さらに、2,000kW80台という超大型のものを含めると5~6の計画がある。独も2001年末に初の洋上風力発電計画が動き出した。風力発電の買い取り価格は、1kW当たり0.178マルクで陸上の買い取り価格が6年目から3割強下がるが、洋上は10年目からという優遇策もある。環境省は30年までに風力発電能力を4,200万kWに増やし、洋上設置6割を目指すとされている。

ところで、風力発電の先進地域である欧州においては、騒音などの問題から今後は洋上に風力発電装置を設置するケースが増加すると予想されており、洋上では陸上風の数割増の風速が得られることもこの傾向を助長するものと考えられる。一方、わが国は国土が狭く、また風に恵まれた場所であっても風車の設置が困難な山岳地帯や国立公園など土地の利用で制限のある場所や、送電線や道路が未整備でコスト面で割高となる場所が多い。しかし、幸いなことに、日本は長大な海岸線を有し、陸上の数割増といわれる風速が得られ、騒音問題も少ない海域に恵まれている。

巨大浮体構造物「メガフロート」

数年前にその偉容を東京湾に現した巨大浮体構造物「メガフロート」は、海洋国家日本が世界に発信できる伝統ある造船技術の結晶である。メガフロートは海上空港、ハブ港湾など様々な用途への適用が期待される。深さ寸法に比べて平面寸法が極端に大きいため、全体として非常に薄い構造となるため、高い波を受けると浮体端部の変形が大きくなり、設置可能海域は現状では水深20~30m、波高4m程度までであり、実質的には比較的陸に近く、海象の穏やかな湾奥、湾内や防波堤の内側に限られているが、シンプルな構造や地質影響を受けないこと等により、経済的、短工期、少ない環境負荷等極めて利点の多い人工地盤工法である。海洋構造物と言えば、海底石油・ガス掘削生産プラットフォームの建設事例を連想しがちであるが、海洋空間利用への展開も進められており、首都圏第3空港建設(羽田空港再拡張)では埋立工法と熾烈な競争を展開しているところでもある。

メガフロートで洋上風力発電を

洋上風力発電の基礎にはモノパイルかケーソン、それに多棧式基礎と呼ばれるトリポッドとかジャケットなどがあるが、いずれも固定式(提体利用式、重力式)で、海底基礎の上に一基ごと設置するものであり、海中基礎部分の建設費用は莫大なものになる。そこで、メガフロートのような広大な浮体式人工地盤上に多数の風力発電装置を設置したPontoonType Floating Wind Farmを実現することができれば、1基ごとに基礎を建設する既存の建設手法に比べて大きくコストを下げることができるとの提案も、その賛否は別として行われている※ 。

他方、浮体構造物につきものの問題点として係留技術が課題となるほか、浮体の利点を生かすには大水深の沖合海域ということになるが逆に発電事業には不向きとなるという相反した課題を抱えているものの、メガフロートによる浮体式風力発電施設の実現は、自然エネルギー利用促進による地球環境問題の解決に向けても大きな期待が寄せられるであろう。その意味においても、今後、メガフロートと洋上風力を結びつける議論をもっと進めていくべきではなかろうか。(了)

※ 緒方龍、林竜也、影本浩=FloatingWind Farmの試計画 第16回海洋工学シンポジウム 平成13年7月18,19日

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