
渡辺将人「オバマ回顧録論」シリーズ コンプリート版冊子
「アメリカ現状モニター」プロジェクト論考シリーズで、2021年4月‐6月に公開した渡辺将人先生(北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授)による「オバマ回顧録論」①~⑦を、小冊子にまとめました。
日米プログラムでは、日米関係に関わる幅広いテーマについて、その分野の専門家による特別寄稿論文(モノグラフシリーズ)を公開しています。プリンストン大学教授のアーロン・L・フリードバーグ氏の執筆によるモノグラフ「権威主義諸国の挑戦―中国、ロシアとリベラルな国際秩序への脅威―」(原著 “The Authoritarian Challenge: China, Russia and the Threat to the Liberal International Order”, 2017)の日本語版を公開しました。
<概要>
ロシアによるクリミア併合とウクライナへの介入、中国の東シナ海及び南シナ海の領有権を主張する行動の激化などを受け、「地政学」「大国政治」が国際政治に復活したとの議論が近年多く提起されている。しかし、冷戦期とは異なり中露両国にとって自らのイデオロギーを広めることは目的ではない。今日の両国の強硬な行動の根幹にあるのは、国内の支持を固め、正統性を高め、政治権力を掌握し、現行の統治を維持したいという欲求であり、輝かしい自国の物語がアメリカ主導のリベラルな西側民主主義によって脅かされている、という脅威認識である。それが既存の国際システムが直面する挑戦の根源にある。
本稿ではこうした問題意識に立ち、中露の脅威認識の裏にあるものは共通して①自分たちを不当に扱ってきた西側諸国とその西側主導の現存の国際システムに対する「憤懣」、②大国として認められたい、既存の不公平な国際システムを変えたいという「野心」、そして③西側諸国による封じ込めと転覆活動に対する「不安」が入り混じったものである、と分析する。ロシアは「憤懣」と「不安」、中国は「不安」と「野心」が中心にあり、構造や行動に差異もあるが、両国はこうした認識を共有している。
そして、西側諸国からの脅威と悪影響を払いのけ域内でパワーを確立するために、両国は6つの要素を組み合わせた戦略を策定している、と筆者は述べる。①西側の経済的開放性の活用、②侵入および転覆活動に対する防御、③介入の抑止、④周辺地域の再形成、⑤効果的なカウンターバランスの阻止、そして⑥非リベラルな新秩序の構築、である。
中露の政治体制、経済構造、イデオロギーの進化の軌跡を辿り、西側に対する脅威認識の3つの要因と6つの戦略を分析した上で、西側諸国の戦略家に対し、中露接近のリスクを考慮する必要性を説きつつ、今は両国に同時に対抗せざるを得ない、と結論づけている。
カテゴリー区分 | SPF日米モノグラフシリーズ |
著者/編者 | アーロン・L・フリードバーグ教授 プリンストン大学 |
発行 | 2018.08 |
目次 | はじめに
権威主義的資本主義国家の台頭(もしくは復活)
第1章: 源流 中国 ロシア 第2章:推進要因 憤懣 野心 不安 第3章:戦略 1. 西側の経済的開放性の活用 2. 侵入および転覆活動に対する防御 3. 介入の抑止 4. 周辺地域の再形成 5. 効果的なカウンターバランスの阻止 6. 非リベラルな新秩序の構築 結論 差異 影響 |