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書籍 2020年発行:日中の「戦後」とは何であったかー戦後処理、友好と離反、歴史の記憶

カテゴリー区分 書籍
発行 2020.10
編者 波多野澄雄/中村元哉 編著
備考 中央公論新社 ISBN978-4-12-005346-7

日中の「戦後」とは何であったかー戦後処理、友好と離反、歴史の記憶

 笹川日中友好基金は、「歴史認識と未来に係る有識者対話」事業の成果物である『日中の「戦後」とは何であったか―戦後処理、友好と離反、歴史の記憶』を刊行しました。

 

 笹川日中友好基金は、日中両国の政治外交関係が困難な局面に立った2016年から、「歴史認識と未来に係る有識者対話」事業を実施してきました。かつて日中両国では、2010年の歴史共同研究事業に代表されるような史実の究明がありましたが、戦後世代に照準を合わせた「歴史認識」の問題を正面から取り上げた系統的な検討と対話は行われてきませんでした。

 両国間に存在する歴史認識問題、即ち20世紀前半以来の日中関係史をめぐる見解の相違と、それに起因する両国の対立は、依然として両国関係の発展を妨げる大きな要因となっています。歴史事実の解釈をすべて一致させることは困難ですが、戦前と戦後の歴史を広い視野から総合的に分析、評価し、双方の認識が反映した日中両国の時々の時代背景と諸情勢に対する理解を深め、今日の日中関係への示唆を導き出すことが、未来の日中関係のあるべき姿への展望につながると考えます。

目次

戦後日中関係と歴史問題(波多野澄雄 著)

戦後日中関係の展開と歴史認識(汪朝光 著)

戦後処理と国際秩序の再編(佐藤晋 著)

国民政府の対日戦後処理と東アジア国際秩序の再建(厳海建 著)

戦後日本人の中国観の形成と変化(馬場公彦 著)

戦後中国人の日本観の変遷(孫揚 著)

戦後日中間における「ヒト」の移動(大澤武司 著)

戦後日本人の帰国問題(呉万虹 著)

戦争の歴史の記憶(水羽信男 著)

国家レベルの歴史観の変遷と抗日戦争に関する歴史記憶の構築(李寒梅 著)

戦後から平和友好条約へ(井上正也 著)

長期にわたって積み重ね、機をとらえて事を為す(章百家 著)

「日中友好」時代の再検証(杉浦康之 著)

歴史の回顧と啓示(張沱生 著)

日本から見た戦後日中関係(添谷芳秀 著)

冷戦期中国の外交戦略と対日政策(王緝思 著)

 

 

 

波多野澄雄氏より(内閣府アジア歴史資料センター長、外務省『日本外交文書』編纂委員長、筑波大学名誉教授)

 両国政府が支援する「日中歴史共同研究」の終了から10年が過ぎた。2006年の日中共同宣言(ハノイ声明)に基づく共同研究は、戦争の時代や戦後史を含む2000年を越える両国間の歴史について、「客観的認識を深めることによって相互理解の増進を図る」ことを目的としていた。

 また、この共同研究は、成果の公表によって、歴史解釈の方法や理解の仕方の違いは何か、共有できる部分は何か、といった問題を日中双方で幅広く議論することに合意していた。しかし、2010年に公表された成果は戦後史部分が公表されず、期待された第2期の研究も実現できなかった。その結果、研究成果は十分に生かされず、歴史認識に関する議論も深まらず、相互理解も進まなかった。内容的には、政府支援の共同研究は、主に歴史学者による二国間の政治外交や軍事関係の分析に限定されていた。

 そこで本研究では、笹川平和財団や北京大学などの理解と支援を得て、自由で率直な意見交換を通じて戦後の日中関係史を両国の側から多面的に見直すことにした。参加者も歴史学者だけでなく、国際政治やジャーナリズムの分野からも募った。

 その結果、本書は国際秩序への対応、「対日観・対中観の形成と変容」、「人の移動」、「歴史の記憶」といった多様なテーマ設定が可能となった。共通するのは「ともに共有できる未来をつくるため、歴史から何を学ぶか」という視点であり、とくに分水嶺としての1972年の日中国交正常化の歴史的意味を汲みとっていただければ幸いである。

 

 

中村元哉氏より(東京大学大学院総合文化研究科准教授)

 本書は、日中間の歴史認識問題の一コマとなっている戦後史を、日中の共同研究の成果として初めて世に問うものである。その意義は繰り返し確認されてもよいほどに大きなものだが、本書にはもう一つ別の特徴がある。それは、日中双方の歴史学者と国際政治学者が協同したことで、たとえ1972年の国交正常化に不条理な歴史性が含まれていたとしても、その時点での双方の政治決断には一定の合理性が含まれていたことを、制約のある中国の歴史観のなかにあっても、もはや否定できないことを明確に示したことである。だからこそ日中双方は、その後に生じた摩擦の原因を客観視し、それらを教訓とすれば、安定した日中関係を新たに構築することが可能だ、ということになる。それでも日中関係が前進しないのであれば、その時には、新たな問題(例:文明観の対立)が別に発生していることを意味するのだろう。このように本書は、日中関係の現状と未来に対して大変に示唆に富んでいる。 

 


事業について:歴史認識と未来に係る有識者対話

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