笹川日中友好基金は「日本人の中国に対する意識調査2023」(実施期間:2023年8月18日~8月23日)のアドバイザーとして調査票の設計および分析に携わった園田茂人教授(東京大学東洋文化研究所)の分析報告書を公開いたしました。

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笹川日中友好基金

日本人の中国に対する意識調査2023
国際会議報告書

園田 茂人 東京大学東洋文化研究所教授


2024.01.05
17分
 日本人の中国に対する意識調査(2023 年)の成果をより客観的に深く理解するには、同種の調査を実施した経験をもつ海外の専門家との対話が必要不可欠である。調査では、日本人の米国、韓国、台湾、中国に対するイメージや意識が細かく質問されていることからも、これらの国/地域で対外認識に関する調査をしている専門家の意見は大切で、特にこれらの地域における日本や中国への評価と比較することで、多くの気づきが得られるはずだ。こうした判断から、今年度初めて、海外の専門家4 名を招聘した国際会議(2023年11月13日)を実施することになった。
 招聘の対象となったのは、以下の4 名の研究者である。
4 名の研究者写真

 

 米国からは、プリンストン大学を拠点に、米国人の対中認識を幅広く研究している謝宇教授。筆者は謝宇教授と、『世界の対中認識』(2022年,東京大学出版会)を共同編集しているが、社会調査の専門家でもあり、コメントを頂くには最適な人物である。
 韓国からは、延世大学社会学部の韓準教授。韓教授は言論NPOが韓国と共同世論調査を行う際のパートナーであるEAI(East Asian Institute Institute)で革新的将来調査センター(Innovative Future Research CenterCenter)のチェアをし、韓国での世論調査に通じている。
 台湾からは、中央研究院社会学研究所の陳志柔所長。陳所長は、台湾における中国の影響を、世論調査を通じて明らかにしてきた「中国效應調查研究」プロジェクトに長く関わってきた。筆者を謝宇教授に引き合わせたのが陳所長で、『世界の対中認識』にも寄稿されている。
 最後に中国からは、中山大学の江暉副教授。江副教授は東京大学大学院学際情報学府の出身で、中国の対日世論をテーマにした論文で博士号を取得し、『現代中国人に日本はどう「イメージ」されるか』(2023 年,ひつじ書房)などの著作がある。
 以上4名の研究者には、調査が終了した後に調査会社がまとめた単純集計を英語化したもの(江副教授には日本語の集計結果)をお渡しし、後に筆者の方から論点を提示したパワーポイントの資料を送った上で、コメントを用意するよう依頼した。会議はオンラインで行われ、時差の関係から2023年11月13日(月)の日本時間午前9時(米国東海岸では前日の午後7時、台湾と中国では同日午前8時)にスタートした。
 会議ではまず、調査を担当したサーベイリサーチセンターの担当者から今回の調査の概要の説明があり、その後、謝、韓、陳、江の順番で、それぞれ15分程度のコメントと、これに伴う質疑応答がなされた。また残りの時間で総括討論が行われ、将来の調査に向けた意見が述べられた。
 それぞれのコメントの概要は以下のとおり。
謝宇:日本人の対中理解の低さに驚いた
 社会調査は社会的現実を把握するために重要なツールだが、これには様々なバイアスが伴う。サンプリング・バイアス、回答バイアス、社会的望ましさバイアス、回答パターンバイアスなど、様々なバイアスやエラーが生じうるが、こうしたバイアスを除去するにはしっかりとした設計が必要で、複数時点で調査をすることが望ましい。日本人の中国に対する意識調査は、その点、しっかり実施されている。
 多くの調査結果は予想の範囲内である。たとえば日本人の米国に対するイメージはよいが、これは十分理解できる結果である。また価値観やイデオロギーの違いから、日本の対中認識が厳しいものとなっている点も理解できる。こうした特徴や米国や欧州でも見られ、概して先進国における対中認識が悪化しているからである。
 もっとも、予想できなかった結果もある。日本人の中国理解がさほど高くなかった点である。日本と中国は隣国だから、もっと多くの知識を持っていると思っていた。特に、中国の経済力が世界二位であることを知っていた日本人が少ない(全体の40.6%)のにはびっくりした。
 2022年と2023年の間で対中認識に大きな変化がなかったようだが、本当にそうかどうかは詳細な検証が要る。今後、5 年後10年後に変化が見られるようになった時に、転換点がこの時だったとわかることもあるからだ。また検証のために、Pew Research Center など、他の調査機関が行った調査データを用いて分析することも必要だ。
 個人的には対中認識が悪くなっている要因の分析を見てみたい。米国の事例だと、コロナ禍の影響は大きい。またどんな問題をめぐっても中国を好きなグループと嫌いなグループがあって、これが全体の世論を形作っているが、日本でも潜在構造分析などの手法で、いくつかのグループを特定化する必要があるのではないか。
 技術的な点になるが、一部の回答者の回答には矛盾があるように思う。もしかしたら、すべて同じ回答するといったことをしているかもしれないが、回答の質を確かめるには、回答にどれだけ時間をかけているかをチェックしてみるとよい。オンライン調査だと回答開始時間と終了時間がわかるはずなので、そこはチェックしたらよいだろう。また最近では、質問票で出てきた疑問を実験で検証するなど、複数の調査法を併用することが多くある。今後、こうした点も考慮に入れるとよいのではないか。
韓準:韓国では若い世代ほど対中認識は厳しい
 日本で対中認識が世代によって異なるという点は、とても興味深かったし、十分に理解できる。ただ、年輩者で対中認識が悪いのは、彼らが伝統的なメディアから情報を得ていることに原因があるのではないかと思う。たとえば、対中認識を悪化させる要因となりうる中国の外交姿勢や国内での格差の問題などは、SNS よりは伝統的なメディアで取り上げられる傾向が強い。韓国では、世代による異なるメディア利用が顕著だが、日本でもこうした傾向が対中認識に影響を与えているのではないか。
 中国の知識を測定したのはよいが、回答が自己申告であるところに危うさも感じる。実際知らなくても「知っている」と回答するケースは多くあるだろう。もっとも、対中認識は世界的に重要なテーマだし、タイムリーな調査であることは間違いない。
 EAI が実施した世論調査から韓国の対中認識を見ると、2019年から悪化し、2023年時点で対中認識が否定的な者は全体の7 割に達していることがわかる。これには中国の対韓政策、とりわけ米軍によるTHAAD配置後の韓国への圧力強化が大きな原因となっている。他方で、中国に対して肯定的な評価をしている者もいるが、その最大な理由が中国の経済力と巨大市場である。この点では、米国とも共通しているのではないか。
 また蛾山政策研究院も世論調査を行っているが、こちらの結果だと、調査を開始した2015年から一貫して中国への肯定的評価が低下している。蛾山政策研究院による分析によれば、こうした傾向は、 (1) SNS を舞台に開陳される中国人の嫌韓感情と、 (2)中国の若者に見られる愛国主義的姿勢、 (3)中国政府による韓国バッシングなどが原因になっているという。
 日本では若者の方で対中認識が肯定的だとの指摘があったが、韓国では逆である。私が利用できるデータからは、若者ほど対中認識が否定的だという結果が得られている。これに対して対日、対米感情は、中年層が最も否定的で、若年層と高齢層で肯定的といったパターンを示している。
 日本人の中国に対する意識調査では、多くの調査対象者が交流によって相手への知識を増やすことが、よりよい二国間関係を作ることになると信じているとする結果が得られている。韓国人の北朝鮮に対するスタンスも基本的に同じだが、インターネットで虚偽情報が多く流れている現在にあって、必ずしもそうとはいえない状況になっているように思う。この点、詳細な検討が必要だろう。
陳志柔:台湾の対中認識は香港問題によって悪化した
 謝宇教授が指摘したように、調査につきもののバイアスを除去するには多くの作業が必要となるが、そのうちの一つに、継続してデータを集めるという方法がある。一時点で若干バイアスがあったとしても、時系列分析をすることでこれを丸めることができるからだ。我々が十年以上、台湾における対中認識調査を継続しているのも、そうした事情が関わっている。
 また、対中認識の背後にある力学を特定するのも大切な作業である。経済的利益や政治的イデオロギーなど、いろいろな要因が対中認識を形成しているが、そのどれが大きな力を持っているかに分析のメスを入れる必要がある。幸い、問6 に日中関係を「良好でない」と判断する理由が列挙され、回答者はこれを選ぶようになっているが、そこから、回答者のグルーピングをすることが可能である。また、こうしたグルーピングと、その他の変数、たとえば「日中関係を改善する主な役割を政府と民間のどちらが担うべきか」といった問いへの回答とクロスさせることで、興味深い知見が得られるだろう。
 次に、我々が行ってきた調査から得られた知見を共有したい。
 日本では若い人の方で対中認識がよいとの指摘があり、韓国は逆だとする指摘もあったが、台湾のケースは韓国に近い。中国を意識した戦闘意欲に関する世論調査によれば、若い層の方で中国と戦う姿勢が強く見られている。
 また対中認識が悪化するタイミングについて、台湾では2018年から2019年にかけて対中認識が悪化している。謝宇教授からコロナ禍の影響が指摘されたが、我々がもっと大きな要素だと考えているのが香港問題、つまり香港の民主化運動が弾圧されたことが大きく関係していると判断している。その結果、中国の将来に対する楽観が消え、大陸で生活したいとする意欲が減退し、将来台湾は独立を目指すべきだとする声が大きくなったのである。
 もっとも、どのように認識が出来上がっているかを質問票調査だけで見極めることは難しい。そのため我々は最近、実験も併用して人々の心の中を測定しようとし始めている。特に中国のように、特定の政治的回答がしにくい環境にあって実験は予想以上に多くの知見をもたらしてくれる。
江暉:「認識」こそ重要な変数である
 私は中国で10年ほど前に対日イメージに関して調査を行った経験がある。その後中国では毎年のように対日認識に関する調査が行われるようになっており、隔世の感がある。当時調査をするにあたっていろいろ大変だったが、そのあたりのことを含め、コメントとしてご紹介したい。
 この種の調査が行われる際に、「好意的かどうか」「相手国への態度」など類似した概念が用いられることがあるが、私は「認識」という概念を用いた。日本の内閣府や今回の調査でも用いられている「親近感」は理解しやすいし、それゆえよく用いられているが、所詮中国に対する認識の一つにすぎない。どのように中国が認識されるかによって中国への感情が生まれ、これが具体的な行動を惹起する。こうした流れを措定しておくことが大切だ。
 もっとも、これらの要素間の関係については、いくつかのパターンがありうる。最初に相手国に対する感情がやってきて、そこから相手国への関心や具体的な行動が誘発されるパターン。次に、まず相手国への認識があり、これが相手国への感情を生み具体的な行動を惹起するパターン。そして最後に、相手国への認識があり、これが評価と反応を生み出すというパターン。実際の調査では最後の「合理モデル」によって説明されるパターンが支配的であることがわかったが、それゆえ私は「認識」を重要概念にすることにした。
 このようなモデルを想定すると、次のような説明が可能になる。調査対象となった中国人は、中日関係は「良好でない」という認識を持つ。それゆえ日本に対してあまりよくない感情を抱くようになり、こうした感情に基づいた行動をとる。このような関係性への認識が最初にあり、これがそれ以外の要素を決定すると考えられるのだが、それほどまでに二国間関係への認識は大切な要素となっていると理解しておくべきだろう。
また比較の視点も大切だ。近年、中国で行われた対日認識調査では、日本の対中認識調査同様に、若者の方で肯定的な評価がなされる傾向が見られたが、とはいえ、質問対象となった8つの外国の中で日本の評価は6 番目で、その点では世代は関係していない。そのため、若者の対日認識に見られる肯定的な側面を強調しすぎてしまうと、全体の評価を歪ませてしまう可能性がある。
 私はメディア研究者なので、認識の根拠となる情報がどこからやってきているのかに強い関心をもつ。中国では世代によって情報源が異なり、高齢層はテレビや新聞などのマスメディアに依存しているのに対して、若年層はSNSを情報源としている。日本の高齢者は多分、日本語のマスメディアに情報を依存していることが、今回の調査結果に繋がったのではないか。個人的には、日本国内にも中国語で情報を入手する人がいることに、少しびっくりしたが。
 私は2年前、日本語のYahoo! ニュースの中国関連の記事を分析したことがある。アクセス・ランキングを見ると、上位には政治関係の記事が多かったが、これも日本の対中認識形成に影響していると思う。ニュース選択には自由度があるとはいえ、視野に入ってくるニュースがイメージ形成の要因になりやすいからだ。
 その意味でも、今回の調査でメディア報道への信頼を質問しているのは興味深い。日本に関する報道をめぐって、中国の報道が米国や韓国、台湾のそれに比べて信頼されていないとする結果は注目されてしかるべきだ。
討論と今後の調査への期待
 以上がコメントの概要である。会議の際には、(1) 日本と韓国・台湾で対中認識に関する世代効果が逆転しているのはなぜか、(2)対中認識が悪化したタイミングはどこか、(3)第二次世界大戦の記憶が対外認識に与える影響はいかなるものか、 (4) コロナ禍は対外認識、とりわけ対中認識にどのような影響を与えたか、(5) 中国への旅行経験など直接的接触がもたらす効果はどのようなものか、といった論点をめぐって意見交換がなされた。
 最後に、対中認識のメカニズムを理解し、調査に伴う様々なバイアスを回避するためにも調査を継続することが大切で、韓国や台湾、米国などとの比較も進め、何が対中認識を形成するのかを比較の視点から見ていくことも重要である。4名の研究者が会議の席上、この点を再三強調していたことを、確認しておきたい。
日本人の中国に対する意識調査 国際会議報告書PDF(468KB)

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