2025年度の「中国に対する日本人の意識調査」が終わった。
昨年度は「内なる中国」をテーマにした。日本国内に多くいる中国系市民との結びつきや、かれらに対する眼差しが回答者の(日本の国境の外にある)「外なる中国」への評価とどう関係しているかを明らかにしようとしたのだが、中国籍の知人がいる者の方で対中認識が総じてよいものの、日本政府の中国への姿勢については逆の傾向が見られ、しかもその結びつきは弱いなど、両者の関係が複雑であることを確認した。
ところが今年7月の参議院選挙で明らかになったのは、日本国内の定住外国人というより、留学や観光などで短期滞在している者を含めた外国人一般に対する有権者の批判的な視点だった。「日本ファースト」を掲げた政党が躍進するなど、日本の出入国管理や移民政策が大きな争点の一つになったのは記憶に新しい。
インバウンド観光客の急増に伴うオーバーツーリズムの問題や、外国人や外国資本による土地取得問題、不法滞在外国人への対応、外国人留学生に研究費を与えることや(経営管理ビザなど)ビザ発給条件の是非など、幅広い問題が論点となった。そして、そうした「外国人問題」の中心にいたのが、中国人である。
2025年7月の国別訪日観光客数(速報値)では、(台湾や香港を除く)中国からの観光客が97万人強と第1位を占め、全体(343万人強)の28%強を占める(※1)。しかも、その数値は1年前から25%強増えるなど、その存在感が大きい。土地取得問題や経営管理ビザの取得にまつわる問題が取り上げられる際に注目されやすいのが中国人で、中国資本によって日本の土地が買い漁られるといったニュースもウェブ上で散見されるようになった(※2)。2024年時点で日本国内に最も多い外国人留学生も中国人で、123,485人と全留学生の36.7%を占めている(※3)。
他方で、2024年時点での中国から日本への渡航者数は698万人強、同年の日本から中国への渡航者数は50万人強と、前者の14分の1強。人口規模を考えても、日本から中国に行く者の数の方が少なくなっている。多くの日本人にとって、中国人は「中国で出会う人」ではなく「日本で出会う人」になっているのである。
このように、「国境の国内化」が進んでいるものの、昨年の調査では、回答者の約3分の2が、日本国内で中国籍の「知人はいないし、付き合ったこともない」と回答している。「国境の国内化」は、「自国に外国人が大挙してやってきている」といった不安感情を産む素地となりえ、事実、「日本ファースト」を掲げた政党の躍進は、こうした不安感情を反映しているように思える。留学生や土地取得問題などは往々にして安全保障上の問題に惹き付けて議論されやすいことから、「内なる中国」というより「国境の国内化」を的確に示す質問を入れ込み、これと「外の中国」への評価、及び今後の中国との付き合い方についての考え方などとの関連性を見ていく必要がある。
今年度の調査は、こうした問題意識から調査を設計した。