中国著名経済学者が読み解く「米中貿易摩擦と中国経済の行方」

2018.12.06
中国財政科学研究所前所長 賈康 氏
中欧国際工商学院教授 許小年 氏
 笹川平和財団(会長・田中伸男)は、11月27日、中国の著名な経済学者、中欧国際工商学院教授の許小年氏と、金融・財政の専門家、中国財政科学研究所前所長の賈康氏を招待、両氏は米中貿易摩擦と中国経済の未来について講演しました。進行役は現代中国経済の研究者、津上工作室代表、津上俊哉氏が務めました。
左から、許小年 氏、賈康 氏、津上俊哉 氏
左から、許小年 氏、賈康 氏、津上俊哉 氏

 笹川平和財団は、日中両国の国民に、互いに相手国と国民を理解しあうための情報や知識を提供し、相互理解の環境づくりに寄与することを目的に、2014年度から「日中有識者対話」事業を実施しています。

 講演の冒頭、賈康氏は米中関係について「悲観的に考えていない」と明言しました。その理由として、米中関係の歴史を紐解き、米国が中国に大学や病院建設、最先端医療に従事する医療関係者の育成などに貢献し、援助を行ってきたことを紹介。さらに当時の中国指導者、鄧小平氏の訪米、ニクソン大統領の訪中を経て両国の国交が正常化した経緯を説明し、「国交樹立後は互いの『利益』を追求することがキーワードになりました。米国の後押しがあって中国はWTO(世界貿易機関)に加盟することができたのです。さらに利益を共有する時代に入り、両国関係が緊密な時代もありました」と米中の歩みを振り返りました。

米中の貿易摩擦について賈氏は、「中国の購買力は米国を追い越しました。ナンバー1に君臨する者はナンバー2を排除しようとする論理が働くものです。米国は臨界点に達して排他的になり、中国をけん制、抑制しようとする機運が高まってきたといえるでしょう。また中国も傲慢になりすぎました。経済摩擦は長期化する可能性があります」と指摘しました。

しかし一方で「現在世界が注視している貿易摩擦は海面に浮かぶ氷山のようなもの。水面下では、製造業、イノベーション、金融市場における影響力と波及力など、あらゆる面において両国には共通点があります。強固な絆で結ばれている」と米中間の連携を強調しました。

さらに賈康氏は「今後、中米関係のキーワ―ドは『力のせめぎあい』になります。貿易摩擦は妥協点を見出すより、むしろ今後も現れては消え、また姿を見せるという過程を経ていくでしょう。しかし、シェアリング・エコノミーの時代に突入した今、両国の産業チェーン間の交流など、かつて鄧小平氏が述べたように、両国は『平和と発展の時代』の理論を礎に、ともに歩んでいくべきです。そしてそのためには、中国もさらに改革開放を徹底していかねばなりません」と分析しました。

 次に講演した許小年教授は、中国経済の未来について、中国経済の問題と改善策を日本の経済発展とその後低迷した時代を比較し、米中経済摩擦という外圧は、中国を正しい方向に導くチャンスだとの認識を示しました。「近代史において、日本は奇跡を2回成功させました。最初は明治維新による工業化。そして第二次世界大戦後、壊滅的な打撃から経済復活を成功させて、ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれた時代を導いたことです」と述べました。そのうえで、「90年代初めのバブル崩壊と2007年のリーマンショックの大打撃を受けて、日本経済は『失われた20年』に突入し、低迷を続けました。中国は同じ轍を踏まないようにしなければなりません。しかし、民間企業の発展をみると、中国はまだ日本より10年から20年の遅れがあります。イノベーションにおいて、中国はアメリカを模倣しているにとどまっています。中国は税制においても、不動産税や相続税などのシステムに関して、米国や日本に大きく立ち遅れています。政府に財源が集中する現状からイノベーションを発展させるために、中国はさらに民間企業の発展を支援し、そのために、資源を再配分するべきです。創造力を制限することは、その発展の源を断つことになり、インターネットの封鎖は中国の将来にとってマイナスです」と中国経済の問題点を指摘しました。

会場からの質問に答える両氏

 講演後の質疑応答では聴講者から「中国から見る日本の課題は何か」という問いがありました。許氏は「日本はアメリカのような破壊的なイノベーションが少ない。日本は既存のものを改善する形のイノベーションが得意です。これは個人主義のアメリカに対して、調和を大事にする日本は、自分が属する組織や社会の枠組みを超えるのが難しい。日本でも高齢化が大きな問題になっていますが、構造的な高齢化にも目を向けなければいけません。若い研究者が革新的なアイディアを提案しても、年長者の役員が新しい知見に耳を傾けない現状では、新しいものは生まれません。若い人がチャンスと力を発揮できる社会の枠組への転換が必要だと思います」と述べました。           (広報課 宮武知加)

 
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