中国の国際問題の専門家を招へい
笹川日中友好基金は、「中国オピニオンリーダー招へい」事業の一環として、中国の国際問題の専門家を招へいし、日本側の有識者やメディア関係者との交流事業を実施しております。2024年度は計3回の招へいを実施しました。
「07式機動支援橋」を渡る訪問団一行
日中佐官級交流による中国人民解放軍の日本訪問団(団長・慈国巍陸軍少将)は4月19日、陸上自衛隊仙台駐屯地(宮城県仙台市)を視察しました。未曽有の被害に見舞われた東日本大震災では、仙台駐屯地が自衛隊の災害派遣活動の拠点でした。中国でも四川大地震など大規模な自然災害が発生してきただけに、訪問団一行は自衛隊の対応と経験、教訓に強い関心を示していました。
一行はまず、東日本大震災の状況と自衛隊の活動について説明を受けました。一室のスクリーンには、津波に流される家屋や、人命救助にあたる自衛隊員、水蒸気爆発を起こした福島第一原子力発電所の上空から放水するために、タイベックススーツを着込みヘリコプター内で奮闘する自衛隊員の写真などが映し出されました。
そして、東日本大震災では①地震の揺れによる被害よりも 津波による被害が甚大だった②原子力災害が発生した③自治体の機能が喪失した④広域に甚大な被害が及んだ―ことが説明されました。
こうした事態に対処するため自衛隊は当時、陸上自衛隊の東北方面総監を指揮官とし陸・海・空部隊を統合運用する「統合任務部隊」を編成し、対処しています。
訪問団一行からは「統合任務部隊は、東日本大震災の前にも編成されたことがあるのか。詳しい指揮系統はどうなっているのか」「政府や自治体との連携はどうだったのか」「どのような教訓を得たのか」などの質問が、矢継ぎ早に飛びました。
これに対し、自衛隊側は統合任務部隊について「われわれの想像をはるかに超えた災害であったため、初めて編成されたものです。それまでも訓練はしていましたが、訓練の想定を超えたものだった」と指摘しました。
また、災害の教訓を踏まえた対応の一例として、自治体や医療機関、地域住民などとの訓練を重視し、強化していることを挙げました。
訪問団一行からは、福島原発の上空からヘリコプターで放水する際に「自衛隊員が着ていたのは、放射線を防ぐ『防護服』ですか」などの質問も出されました。自衛隊側は「放射線自体を防ぐ能力のある防護服ではなく、放射性物質が体に付着するのを防ぐ使い捨てのタイベックススーツで、日本国内から集めました。」と紹介しました。
訪問団一行は「野外手術システム」の中も見学した
この後、訪問団一行は、東日本大震災等で使われた装備の一部を見学しました。津波で橋が破壊された河川に架けられ、孤立した住民の救助に活躍した「07式機動支援橋」や、リモコン操作ができる中型ブルドーザー、「野外手術システム」などです。訪問団一行は、実際に機動支援橋を渡ったり、野外手術システムの中に入ったりしました。
仙台駐屯地を視察した感想として、慈団長は「装備をよく管理しており、非常に訓練もされているという印象をもちました。見学した装備は人民(国民)のためになるもので、とても素晴らしい」と話しました。