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40周年
ヒマラヤの氷河雪崩で大規模被害 国際警戒システム構築が急務
笹川平和財団ロニヤール主任研究員
2026.09.14
5分
東京都内でインタビューに応じる笹川平和財団海洋政策研究所のサントス・クマール・ロニヤール主任研究員=9月3日
ネパールと中国・チベットの国境に近いヒマラヤの山岳地帯で発生した土石流と洪水は「氷河雪崩」とみられ、雪崩の背景には地球温暖化の影響があるとの見方が強い。被害も広範囲に及んでいる。ネパール出身で氷河や海洋を巡る自然災害のデータ分析を専門とする笹川平和財団海洋政策研究所のサントス・クマール・ロニヤール主任研究員は、国境をまたいで広がる危険な氷河を観測・検知し、早期警戒につなげるシステムの構築が急務だと訴えている。
8月26日、ネパールの首都カトマンズ北方のランタン渓谷の上流で氷河が崩壊したのに伴い土石流と洪水が発生した。国際移住機関(IOM)がネパール国家災害リスク軽減・管理庁(NDRRMA)の統計として発表したところでは、9月7日時点で1,356人が死亡し、約4,900人が行方不明となっている。犠牲者は今後増える可能性がある。
ロニヤール氏はネパールと中国を念頭に、「どちらの国の関係省庁にも、早期警戒に必要な観測データを専門家らに共有する制度や仕組みが整っていない」と指摘する。大規模な土石流と洪水を検知し、早期に警報を出して河川沿いにいる人々に避難を促す仕組みがあれば被害を「軽減できたかもしれない」と述べ、早期警戒システムの必要性を強調した。
「国連で議論されている『気候正義』の実効性が試されるときだ」
ロニヤール氏は今後の国際社会の対応にこう期待を示した。「気候正義」とは、多くの二酸化炭素を排出し地球温暖化の原因を作った先進国などが公平に責任を分担し、気候変動に起因する災害で被害を受けた途上国や社会的弱者を支援すべきだとする考え方だ。ネパールのシャハ首相は9月下旬の国連総会で、各国に気候変動対策を求める方針だと伝えられている。
今回の氷河が崩落した原因について、専門家らの間では地球温暖化の影響があるとの声が上がっている。ロニヤール氏によると、今回の氷河雪崩が起きた流域では昨年6月以降、大規模な洪水が3回連発していたという。ヒマラヤの山岳地帯では温暖化の影響で永久凍土が減少していることが背景にある。国際山岳総合開発センター(ICIMOD、本部・カトマンズ)はこの地帯の氷河が2100年までに現在の体積の30~80%を失う可能性があるとし、温暖化による氷河の溶解を指摘している。ロニヤール氏は「何もしなければ、災害の発生頻度は高まるだろう」と述べ、同じ流域に接するバングラデシュなど別の国々でも同様の災害が発生する恐れがあると警鐘を鳴らす。
また、ロニヤール氏は二次被害にも警戒すべきだと述べた。氷河崩壊を受けて流れ出た堆積物が河川に蓄積し続ければ、生態系に影響が及ぶ可能性があるという。石炭層を含む地盤が崩れ、堆積物に混ざって流れ落ちたとすれば、周辺の農地にも被害が広がる懸念があると指摘した。
中国当局の発表によれば、8月26日、ネパール側の標高5200㍍付近の山の斜面から氷河が崩れ岩などを巻き込んで流れ落ち、崩落から6~7分後に約22㌔先のチベット自治区吉隆県の国境検問所に到達した。被災地では現在も救援活動が続けられている。
(笹川平和財団 岡田美月)
8月26日、ネパールの首都カトマンズ北方のランタン渓谷の上流で氷河が崩壊したのに伴い土石流と洪水が発生した。国際移住機関(IOM)がネパール国家災害リスク軽減・管理庁(NDRRMA)の統計として発表したところでは、9月7日時点で1,356人が死亡し、約4,900人が行方不明となっている。犠牲者は今後増える可能性がある。
ロニヤール氏はネパールと中国を念頭に、「どちらの国の関係省庁にも、早期警戒に必要な観測データを専門家らに共有する制度や仕組みが整っていない」と指摘する。大規模な土石流と洪水を検知し、早期に警報を出して河川沿いにいる人々に避難を促す仕組みがあれば被害を「軽減できたかもしれない」と述べ、早期警戒システムの必要性を強調した。
「国連で議論されている『気候正義』の実効性が試されるときだ」
ロニヤール氏は今後の国際社会の対応にこう期待を示した。「気候正義」とは、多くの二酸化炭素を排出し地球温暖化の原因を作った先進国などが公平に責任を分担し、気候変動に起因する災害で被害を受けた途上国や社会的弱者を支援すべきだとする考え方だ。ネパールのシャハ首相は9月下旬の国連総会で、各国に気候変動対策を求める方針だと伝えられている。
今回の氷河が崩落した原因について、専門家らの間では地球温暖化の影響があるとの声が上がっている。ロニヤール氏によると、今回の氷河雪崩が起きた流域では昨年6月以降、大規模な洪水が3回連発していたという。ヒマラヤの山岳地帯では温暖化の影響で永久凍土が減少していることが背景にある。国際山岳総合開発センター(ICIMOD、本部・カトマンズ)はこの地帯の氷河が2100年までに現在の体積の30~80%を失う可能性があるとし、温暖化による氷河の溶解を指摘している。ロニヤール氏は「何もしなければ、災害の発生頻度は高まるだろう」と述べ、同じ流域に接するバングラデシュなど別の国々でも同様の災害が発生する恐れがあると警鐘を鳴らす。
また、ロニヤール氏は二次被害にも警戒すべきだと述べた。氷河崩壊を受けて流れ出た堆積物が河川に蓄積し続ければ、生態系に影響が及ぶ可能性があるという。石炭層を含む地盤が崩れ、堆積物に混ざって流れ落ちたとすれば、周辺の農地にも被害が広がる懸念があると指摘した。
中国当局の発表によれば、8月26日、ネパール側の標高5200㍍付近の山の斜面から氷河が崩れ岩などを巻き込んで流れ落ち、崩落から6~7分後に約22㌔先のチベット自治区吉隆県の国境検問所に到達した。被災地では現在も救援活動が続けられている。
(笹川平和財団 岡田美月)