震災復興へ想いをつなぐ日中交流
中国の無形文化財保護団体が輪島漆芸技術研修所に漆を寄贈
笹川平和財団(東京都港区、理事長・角南篤)は、3月3日(月)、昨年1月に能登半島地震により甚大な被害をうけた現地の伝統工芸関係者を支援するため、石川県立輪島漆芸技術研修所で寄贈品贈呈式を実施しました。
WPSの重要性などについて語る上川陽子外相(写真右)とインドネシアのルトノ・マルスディ外相(写真中央)。モデレーターは平和構築支援グループの堀場明子主任研究員(写真左)
日本とASEAN(東南アジア諸国連合)との交流は、1973年に設立された日・ASEAN合成ゴムフォーラムに始まり、今年は50周年にあたります。都内では12月16日から3日間、岸田文雄首相、インドネシアのジョコ大統領、フィリピンのマルコス大統領、マレーシアのアンワル首相らが出席して日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議が開かれ、日本ASEAN友好協力に関する共同ビジョン・ステートメントなどが採択されました。そこには「WPSの推進」が盛り込まれており、今回のセミナー「なぜ、女性の視点が必要なのか」は特別首脳会議のサイドイベントと位置付けられています。
開会にあたり角南理事長は、安全保障環境が非常に厳しく世界情勢が不確実な中で、日本とASEANの協力は世界とアジア太平洋地域に寄与するものであり、「とくにこれまで十分に反映されてこなかった女性の視点や意思決定への参画が、極めて大きな変革を起こすと期待されている」と述べ、WPSにおける連携の重要性を強調しました。
笹川平和財団の平和構築支援グループは、WPSに関する調査や政策提言を行うなどWPSアジェンダの推進に取り組んでいます。
一方、ASEANで唯一の、そしてインドネシア初の女性の外相であるルトノ氏は、イスラエル・パレスチナ情勢に触れ、パレスチナ自治政府のガザ地区における犠牲者の多くが女性と子供であり、「こうした状況が続くことは耐えられない。戦争も緊張も世界には多すぎる。われわれは協力を強化し緊張と紛争を予防するようにしなければならない。包摂性をもった視点、女性の視点が必要なのです。女性に投資をすることは未来の万人の権利に投資することにつながる」と、声高に訴えました。
インドネシアが女性の視点を促進してきた取り組みの一つとして、国連平和維持活動(PKO)への女性の参加をサポートし、119人の女性要員が7つのミッションに参加していることを紹介。日本とは要員の訓練で協力してきており、今後も継続する意向を示し「ASEANと日本の協力は、多くの紛争が起こっている中でこれまで以上に重要性を増しています」と述べました。
ところで上川外相といえば、外相就任以前に与党内に議員連盟「女性・平和・安全保障(WPS)議会人ネットJAPAN」を立ち上げ、WPSの推進と行動計画の着実な実施を岸田首相などに申し入れてきた経緯があります。上川外相はこれまでの衆議院議員や法相としての経験を振り返る中で、この議連を立ち上げるきっかけとなったのは2022年9月、笹川平和財団が国連総会のサイドイベントとしてシンクタンクの国際平和研究所(IPI)と共催したシンポジウム「ジェンダー視点のリーダーシップで持続可能な平和と安全を」に、登壇したことだと明かしました。
「WPSという日本では新しい切り口、平和に女性がかかわるということの衝撃的な経験でした。帰国してすぐに、包括的な視点でとらえメッセージを共有することが重要だと思い、議員の仲間を集い、議連を立ち上げた」
それぞれの立場からWPSへの取り組みと課題などについて見解を示すカルティカ・ウィジャヤンティ、アミナ・ラスル・ベルナンド、ヌルル・イザ・アンワルの各氏(写真右から)
ASEAN平和と和解研究所のカルティカ・ウィジャヤンティ氏、フィリピンイスラムと民主主義センターのアミナ・ラスル・ベルナンド所長、マレーシア財務相特別諮問機関の共同議長であるヌルル・イザ・アンワル氏が登壇し、WPSへの取り組みを紹介しつつ、各国との連携をどのように進めていくのか見解を示しました。
カルティカ・ウィジャヤンティ氏は2022年12月に策定されたASEANの地域行動計画の内容について、女性の紛争、紛争後の平和構築、人道支援においてすべての女性を性的暴力から守ることや、平和と安全保障の意思決定プロセスに、女性が完全かつ意味のある参加をすることなどが、柱であることを説明。この地域行動計画に基づき国別行動計画を策定したのは、フィリピンとインドネシアの2カ国だけで、今後はカンボジアやベトナム、タイが国別行動計画を策定するとの見通しを示しました。
フィリピンのアミナ・ラスル・ベルナンド氏は、フィリピン政府が南部・ミンダナオ島などにおけるイスラム武装組織の暴力的過激主義に対応してきた経験を、北アフリカや中東、アフガニスタンなどと共有し「平和と安全保障のために力を尽くしている女性に手を差し伸べるべきです」と語りました。また、国別行動計画については「もっと実質的、具体的な内容とプログラム、支援を必要としている」と、不十分だとの批判的な認識を示しました。
マレーシアのヌルル・イザ・アンワル氏は、①女性を予防し、女性の境遇に思いをはせ、長期的なビジョンをもつことが重要で、女性や家族、コミュニティーが安全になるということを目指していかなければならない②暴力的過激主義に対応するうえでは、それぞれの紛争において「正義」を尺度にすべきだ③国連の平和維持活動に参加しているインドネシアやマレーシアの経験などを、ASEAN域内で共有し学ぶことが重要だ—との見解を示しました。