FAO「持続的な漁業に関する国際シンポジウム」の開催
―科学と政策の接点の強化に向けて―

2020.01.14

(代)「持続的な漁業に関する国際シンポジウム」の様子
 世界の漁業は長年にわたり、世界中の人々にとって欠かせない食料、雇用およびその他の生活必需品の供給源となってきました。しかし、気候変動によって海洋生態系が急激に変化し、世界全体で魚類やその他の水産品に対して需要が高まっていることから、世界の海の負担が増えています。

 これらの問題に対処すべく、笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)をはじめとする機関も支援し、国連食糧農業機関(FAO)による「持続可能な漁業に関する国際シンポジウム 科学と政策の接点の強化に向けて」が2019年11月18日-21日にかけてイタリア・ローマのFAO本部で開催されました。約1000名の政府関係者および専門家が一連のテーマ別セッションや特設展示、ネットワーキング・レセプションに出席し、国際的な漁業が直面する喫緊の課題に対処するため、科学者、政策決定者および一般市民の間の認識の差を埋めることに向けて議論しました。

 約75年前に国連の専門機関として創設されて以来、FAOの中心的な任務は世界全体の食糧安全保障を達成することであり、漁業の持続可能性はその任務の重要な要素のひとつとして考えられてきました。FAOの統計によれば、一人あたりの魚類の消費量は1960年代と比べて倍増しており、その勢いは衰える気配を見せていません。また、世界の人口増加により、水産品の需要も引き続き拡大するとみられています。同時に、気候変動によって魚類の生息地および移動パターンが大きく変化していることは、国際的な規制や保全の取り組みを難しくしており、今後の漁業の持続可能性が危機にさらされています。

 将来の世代のために健全な海洋を支えるという中心的テーマの下に活動を展開してきたということもあり、OPRIはパートナーのひとつとして、積極的にシンポジウムに参加しました。OPRIの角南篤所長は「この会議の議題は、未来の海洋および持続可能な漁業にとって非常に重要なものである。『国連持続可能な開発のための海洋科学の10年』イニシアティブが2021年より実施されるということで、当財団がこのような重要な問題において、国連やその他のパートナーと連携できる機会を得られて非常に嬉しい」と述べました。
(代)「21世紀を見据えた漁業管理に関する政策の可能性」セッションにおいて開会の辞を述べる角南所長

「21世紀を見据えた漁業管理に関する政策の可能性」セッションにおいて開会の辞を述べる角南所長

 角南所長は「21世紀を見据えた漁業管理に関する政策の可能性」と題したセッションの議長を務めました(セッション全体の動画についてはFAOのウェブサイト(第1部第2部)をご覧ください)。2つのセッション部会においても、海洋資源および漁業の持続可能性が直面するさまざまな政治・環境・社会の問題について活発な議論が行われました。

 カナダの国際コンサルタントであるロリ・リッジウェイ(Lori Ridgeway)氏は、セッション第1部で基調講演を行い、漁業に関係するすべての当事者に対して、従来のモデルから抜け出し、政策決定およびガバナンスについて新たなアプローチを取るべきであると述べました。「今後期待されているのは、従来どおりの漁業を行うことではない。漁業は新たなリスク、新たな課題に直面しており、より多面的でより不確定なものとなり、特に画期的なテクノロジーのような新たなツールを用いる機会が増えるであろう」と述べました。

 変化しつつある環境に対応するために、リッジウェイ氏は漁業や環境保全、その他関連する業界を含むすべての当事者の間で、部門横断型の協力を強化すべきであると提起しました。また、SDGsや最近拡大しつつある「ブルーエコノミー」の原則が変化の重要な推進力となる方法についても強調しました。しかし、リッジウェイ氏はハイレベルの議論においてウィンウィンの関係を宣言することは容易であるが、進捗をはかり、説明責任を確保することは依然として課題となるであろう、と述べました。そのために、リッジウェイ氏は、漁業関係者が過去の政策の失敗を避けるために必要となる実質的な議論を積極的に推し進めていくことを求めました。
(代)「21世紀を見据えた漁業管理に関する政策の可能性」セッションの様子
(代)「21世紀を見据えた漁業管理に関する政策の可能性」セッションの登壇者ら
「21世紀を見据えた漁業管理に関する政策の可能性」
に焦点を当てたセッションの登壇者
 セッション第2部の基調講演において、インドのアジム・プレムジ大学のジョン・クリエン(John Kurien)氏は、小規模漁業を数十年にわたり擁護してきた経験から得た見解を参加者と共有しました。同氏は、政策決定者および一般市民は小規模漁業の固有の価値を見逃しがちであり、小規模漁業がもつ環境の持続可能性や文化的重要性、その他目に見えない特性は従来の経済指標とともに考慮されるべきであると述べました。

 また、クリエン氏は世代間の公正の重要性についても触れ、いかなる政策議論も現代を超える時間軸での資源の利用を評価しなければならないと語り、「今日の人権問題が強調されるのは正しいことだが、海洋資源の世代を超えた利用の問題についてはさらに今後を見据えなければならない。わたしたちは経済的・倫理的な決定を行う上で、将来の世代の繁栄に重点を置かなくてはならない」と強調しました。

 そこでクリエン氏は3つの柱からなるアプローチを提案し、一般市民が小規模漁業による貢献の例を推し進めて政治家に圧力をかけること、学界および科学者が政策決定者に対して証拠を提示しつづけること、関係する政府が小規模漁業の繁栄のための余地を確保する法律を制定すること、の3つが今後大事になると言及しました。
(代)ブルーエコノミー、IUU(違法・無報告・無規制)漁業、その他の研究領域の活動について「漁業イノベーション・フォーラム」の特設展示で紹介するOPRIの研究者
(代)ブルーエコノミー、IUU(違法・無報告・無規制)漁業、その他の研究領域の活動について「漁業イノベーション・フォーラム」の特設展示で紹介するOPRIの研究者
ブルーエコノミー、IUU(違法・無報告・無規制)漁業、その他の研究領域の活動について
「漁業イノベーション・フォーラム」の特設展示で紹介するOPRIの研究者ら
 これらセッション部会の結論およびシンポジウム全体のその他の議論は、技術的文書にまとめられ、持続可能な漁業についての今後の作業の参考として、2020年7月の第34回FAO漁業委員会(COFI)で発表される予定です。
 
(特任調査役 ジャッキー・エンズマン)

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