笹川平和財団

English
  • 財団について
    • 財団について
      • 財団について
      • 沿革
      • 事業方針・5つの重点目標
      • 評議員・名誉会長・役員名簿
      • ダイバーシティ&インクルージョン
      • 財務報告
      • 定款
      • 役員の報酬・退職金に関する規程
      • より良い調査研究への取り組み
      • 笹川名誉会長対談のアーカイブ
      • 2017年度までの事業について
    • 理事長からのご挨拶
    • ブロシュア・年次報告書
    • アクセス
    • Idea Submission
    • 採用情報
    • お問い合わせ
  • 研究員
  • 事業
    • 日米・安全保障研究ユニット
    • 総括・交流グループ
    • 安全保障・日米グループ
    • 戦略・抑止グループ
    • アジア・イスラム事業ユニット
    • 第1グループ:戦略対話・交流促進担当
    • 第2グループ:平和構築支援担当
    • 第3グループ:社会イノベーション推進担当
    • 笹川日中友好基金
    • 海洋政策研究所
    • 海洋政策実現部
    • 島嶼国・地域部
    • 奨学ユニット
    • 笹川奨学金事業グループ
  • リポート
    • 報告資料・出版物
    • 各種レポート
    • シンポジウム・講演会録
    • SPF NOW
    • 随想一筆
    • 新型コロナウイルス 日本と世界
    • 動画
    • 地域別新着情報
    • アメリカ
    • 北東アジア地域
    • 東南アジア地域
    • 南アジア地域
    • 中東地域
    • 大洋州地域
    • ヨーロッパ・ユーラシア
    • 北極域
    • アフリカ
    • サテライトサイト
    • 国際情報ネットワークIINA
    • SPFチャイナオブザーバー
    • アジア女性インパクトファンド
    • 島嶼資料センター
    • WMU友の会ジャパン
    • SPF日米関係インサイト
    • 海洋情報FROM THE OCEANS
    • 海洋教育パイオニアスクールプログラム
    • アジア平和構築イニシアティブAPBI
    • 碩果累々 継往開来 —笹川日中友好基金の軌跡—
    • サイバー安全保障研究
    • ロシアと世界
    • 日中関係データグラフ
  • ニュース
    • 新着情報
    • プレスリリース
    • メールマガジン
    • メディア掲載
  • イベント
  • 笹川奨学金
海洋政策研究所(海洋政策実現部)

第6回海洋法に関する国際シンポジウム「国連海洋法条約(UNCLOS)発効25周年 ―より自律的・包括的な海洋秩序の実現に向けた挑戦と機会―」を開催

ジャーナリスト 鈴木順子


2019.12.24
 笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)は2019年10月31日、同財団国際会議場にて第6回「海洋法に関する国際シンポジウム」を外務省と共催しました。「海の憲法」とも呼ばれる海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約:United Nations Convention on the Law of the Sea、以下「UNCLOS」とします)(1994年11月16日発効)の発効から四半世紀を迎えることを踏まえ、テーマを「国連海洋法条約(UNCLOS)発効25周年―より自律的・包括的な海洋秩序の実現に向けた挑戦と機会―(UNCLOS at 25 years Challenges and opportunities in seeking an ever more autonomous and comprehensive maritime order)」とし、UNCLOSにかかわる今日的課題を論じ、今後求められる取り組みや体制のあり方を明らかにすることを目指し、基調講演と4つのパネルセッションを設けて、国内外の海洋法の権威ある研究者および実務家計13名にご報告いただきました。シンポジウムには、約200名の在外外交団、政府関係者、研究者、学生などのみなさまにお越しいただき、活発な質疑応答が行われました。

開会の辞

 はじめに、主催者を代表して、鈴木馨祐・外務副大臣と角南篤・OPRI所長が開会の辞を述べました。鈴木副大臣は「日本は海洋における自由や法の支配等の共通の価値を世界で共有できるよう戦略的な外交を繰り広げてきた」と外交における海洋の重要性を強調した上で、UNCLOSの特徴を「法に基づく海洋秩序の背骨。各国の自律的な取り組みの蓄積の上にできあがった秩序であり、紛争解決のメカニズムも備えてきた」と指摘し、「一部の国がUNCLOSを独自に解釈して自国の利益を過度に追い求めたり、あるいはこれまで積み上げられてきた判例を無視したりなど、秩序の安定性へのチャレンジがみられる」ことに言及しました。そして、「発効後25年が経ち、UNCLOSを補足するルールがつくられようとする中で、海洋の利用と環境保護をいかにバランスさせるかが課題」であり、「多様な問題を整合的に解決する包括的な秩序を実現することが日本の責務」と言明しました。

 続いて、角南所長は、10月にノルウェーのオスロで開催された第6回アワーオーシャン会議(Our Ocean Conference)で、500人以上の政府や研究機関、NGO、企業、国際機関の関係者が出席する中、持続可能な海洋を具体化する上での課題として海洋のプラスチックごみや汚染、酸性化、温暖化、および漁業資源の減少などの問題が集中的に議論されたことや自身がアドバイザリーネットワークのメンバーを務める国連の持続可能な海洋経済のためのハイレベルパネルに対して、OPRIの調査研究成果を提供し、世界レベルの政策に昇華させるべくさまざまな働きかけを行っていることを紹介しました。そして、UNCLOSの意義について「持続可能な海洋に関する取り組みの基礎には持続可能な開発目標(SDGs)の『目標14』があり、それを達成するためにはUNCLOSの履行は欠かせない」と言及し、本シンポジウムで「UNCLOSの25年を振り返るとともに、持続可能な海洋を目指す上で取り組むべき課題を共有し、課題解決に向けたパートナーシップの構築をはかりたい」と期待を表しました。

基調講演「UNCLOSの安定と変化」

 基調講演では、兼原敦子・総合海洋政策本部参与(上智大学法学部教授)が登壇されました。兼原教授は「海洋法は国際法の中でも最も長い歴史をもつ」と指摘された上で、海洋法の権威であるオックスマン(Bernard H. Oxman)マイアミ大学教授の「安定は変化を必要とする」という指摘を引用し、「UNCLOSもまた、安定を維持するためには、現在の国際社会の要件に応えて変化しなければならない」と強調しました。その上で、第一にUNCLOSの現状として「『歴史的権利』に関して限界に直面している。それに対して法的秩序、UNCLOSの有効性をいかに維持するかが課題」と指摘されました。第二にUNCLOSの完全性を担保する上では、「UNCLOSのみ、しかしすべてUNCLOS(only UNCLOS but all UNCLOS)」の原則を守ることによって可能になること、端的に「条文にあるように、UNCLOSの埒外の問題を含む『混合紛争』においては、UNCLOSに関する部分のみを審査する。同時に、UNCLOSに欠けている部分はそれ以外の国際法や規則を適用するということ」を強調されました。そして、第三にUNCLOSがいま変化を迫られていることに言及し、「UNCLOSにおいて国家管轄権外区域における海洋生物多様性(BBNJ)に関する実施協定が議論される中で、根本的な変化が顕著に表れている。それは、公海における規制と海の考え方だ。これまでは部門別に規制が行われてきた。しかしBBNJを保護する上では、生態系アプローチ、つまり分野横断的な規制が不可欠である。そうなると、海の概念が変わらざるをえない。公海は『開かれたもの』と仮定されてきたが、『巨大な閉鎖的な水槽』と考え、そこでの生態系を全体としてとらえて保全・規制していくことになる」と論じられました。
(代)基調講演に登壇された兼原教授

基調講演に登壇された兼原教授

第1部「基線の規範的評価」

 第1部では西本健太郎・東北大学大学院法学研究科教授をモデレーターにお迎えし、基線(領海の幅を測定するために海岸に接して引かれた線をいう。海岸の低潮線を採用する通常基線と、海岸線の形状が複雑な場合に、一定の国際法上の条件に従って最も外側にある低潮線上の適当な点を選択してこれを結んだ直線を採用する直線基線とがある。)をめぐる問題について、3名の専門家にご登壇いただきました。

 最初に、茅根創・東京大学大学院理学系研究科教授に「基線としてのサンゴ礁とその海面上昇への反応」についてご報告いただきました。「熱帯あるいは亜熱帯地域のサンゴ礁に囲まれた島からなる国は、礁嶺(サンゴ礁の上面の平坦な部分「外礁」の内側(礁原)の高く盛り上がった場所。干潮時に干出する。)が低潮線、つまり基線となる。いま、気候変動により海面水位が上昇し、礁嶺が水没しつつある。環礁島(サンゴ礁の上にサンゴ礫と有孔虫砂(星砂)が積み重なって形成される島。)はさらに深刻な状況で、島自体が水没の危機に直面している。気候変動だけでなく、水質汚染など人為的な環境破壊などさまざまな問題がその原因で、長期的に持続可能な生態系管理、土地管理を行い、海面上層に備える必要に迫られている。適切な対策は、養浜をし、サンゴ礁を回復させること」と論じ、すでに国際協力機構(JICA)がツバルに対して人工養浜を行っており、また、沖ノ鳥島において、サンゴの成長を促して、島をつくるプロジェクトが進行中であることなどをご紹介いただきました。

 次に、マッシミリアーノ・ナニーニ・イタリア海軍水路研究所副所長より、海図を書く、つまり技術的に基線を引く現場から「沿岸線の測量に関する現代の課題」をテーマにご報告いただきました。「当研究所の任務は、イタリアの管轄権内水域全域について海図を作成すること。海図の国際的な統一を図る国際水路機関(IHO)が発行するガイドラインに基づいて作業している。イタリアの海上の境界を規定するのは1977年の大統領令で、基線もそれに基づいて設定された」。ただし、GPSが存在しない時代ゆえ「海図を作成する基準とされる『基準点』が異なっており、イタリアの外務省と水路学研究所で基線を書き直す一大プロジェクトを実施した」ことを明かしました。イタリアも他の国と同様、隣国と海洋の境界の問題を抱えています。こうした問題の解決策を提示する海図をつくる任務は「重要でデリケート」だと付言されました。

 続いて、エリザベス・メンデンホール・ロードアイランド大学海洋学科/政治学科准教授より、「基線の予見可能性と法的安定性の確保」をテーマにご報告いただきました。「基線として、これまでは通常、低潮線が用いられてきた。しかし、茅根教授が報告したように、基線は移動もしくは消失する現象が生じている。こうした中で、低潮線が変化してもそれまでの基線を維持すべきなのか、それとも低調線に基づいて変更可能と考えるのかについて、UNCLOSには規定がない。このことは岩、島、人工島の定義に影響し、小さな島しょ国の国家の存続や資源へのアクセスにかかわる大きな問題である。新たな解釈やUNCLOSの変更が必要だが、合意を得られる状況にはない。2016年の南シナ海仲裁判断は、中国が建造した人工島は岩としたが、中国は納得していない。こうした問題にいかに対処していくかがUNCLOSの課題」とご指摘いただきました。

第2部「海洋境界確定紛争の平和的解決 ―規範、手続、関係国の義務―」

 第2部では中谷和弘・東京大学大学院法学政治学研究科教授をモデレーターにお迎えし、国家の安全保障上の問題に密接に結びつく境界確定をめぐる対立とその法的解決の前例や方策について、3名の専門家にご登壇いただきました。

 最初に、石井由梨佳・防衛大学校人文社会科学群准教授より、「海洋境界確定手法の発展:国際判例における関連沿岸部・関連海域概念の非一貫性を中心に」をテーマにご報告いただきました。まず、境界確定の手法について、国際司法裁判所(ICJ)が2009年の黒海大陸棚境界確定事件で3段階アプローチを示したことに言及します。それは「関連する海域を設定して暫定的に中間線を引き、衡平な結果を達成するために関連事情に応じてその線を修正し、関連する海岸線の比率と関連区域の比率との均衡性を確認する」というもの。すなわち「関連する海域をどのように設定するのかに応じて、最終的な境界線は大きく異なりうる。にもかかわらず、関連する海域の特定、境界確定に関して国際法上の一般原則はない」。そこで、石井准教授はいくつかの判例を示し、境界確定の手法の差異を詳述しました。「手法に差異がある場合、それを衡平性の原則のもとで正当化できるかどうかが問題になる。目標とするところは、衡平、公正な結果であり、各国間の紛争の安定的な解決。締約国においては、基準に差異があること、その結果何が起こりうるかをふまえておく必要がある」とご指摘がありました。

 次に、スチュアート・ケイ・ウーロンゴン大学附属国立オーストラリア海洋資源・安全保障センター所長より、「東ティモール/オーストラリア間の海洋境界確定事例からの教訓と南シナ海仲裁の環境的側面」をテーマにご報告いただきました。2002年の東ティモール独立以来、石油や天然ガスの埋蔵可能性のあるティモール海における境界確定に関してくすぶってきた同国とオーストラリア(豪州)は、昨年、条約を締結しました。解決にいたったポイントは「調停委員会が信頼醸成措置を力強く進めたこと、開発権をもつ石油企業を巻き込んだことにある」と指摘。ただし、このやり方がほかの国にもできるかといえば「難しいだろう」。「東ティモールには石油・ガス産業がそもそも国内になかったため、石油企業の関与を得ることへの合意や両国間の信頼回復がやりやすかった」からです。南シナ海仲裁判断については「国家には管轄権外区域での環境保護の義務があることを定めている点が重要」だと指摘。この判断が示されたことにより、「今後、世界各地で環境に関する訴訟がUNCLOSに基いて提起されるようになるだろう」という見通しを提示されました。

 続いて、古谷健太郎・海上保安大学校/政策研究大学院大学連携教授が「境界未確定海域における法執行行動」をテーマに、係争海域における権利と義務について報告しました。「東シナ海では日中間の境界が画定していない。こうした海域における権利と義務は74条で『合意に達するまでの間、最終的な合意への到達を危うくしまたは妨げないためにあらゆる努力を払う』と、いわゆる『自制義務』が規定されている。ただし、どのような行為が自制義務違反になるかの基準は明確ではない。ただし、仲裁裁判所がガーナ・スリナム事件判決で『海洋環境の恒久的な物理的変更』という一定の基準を提示している。係争地域における『法の執行』はその係争地域が自国の管轄権内区域であることを表明することに等しく、相手に対して挑発的で、合意への到達を危うくし妨げる可能性がある」と論じます。さらに、「法執行が政治的、法律的にも課題である一方、ルールに基づいた持続可能な漁業の秩序を現実的なものにするという点で、日中漁業協定は有用」とのご指摘をいただきました。

第3部「海洋の科学的調査 ―EEZでの展開、国家管轄権外区域における新たな挑戦―」

 第3部では前川美湖 OPRI主任研究員をモデレーターとして、EEZあるいは国家管轄権外区域における海洋の科学調査(MSR)のあり方やルールづくりにおける課題などについて、3名の専門家にご登壇いただきました。

 最初に、白山義久・海洋研究開発機構(JAMSTEC)特任参事より、「海洋の科学的調査の現代的な重要性」をテーマにご報告いただきました。「JAMSTECは創立から50年間で約2,000件の調査航海を行ってきた。日本の科学者が起案したMSRを審査し、それが通れば各種の申請手続きを行い、予算をつけるなどの実務も担う」と解説。「他国のEEZで調査航海を行う場合は、その申請手続きが煩雑な上、数年を要し、調査研究予算も膨大になる。実施実績はこの10年間で224件。全調査航海の約4分の1にとどまる」と明かし、「公海における調査でも申請が必要になれば、MSRは大きな制約を受けることになる。海洋遺伝資源収集にも大きな影響を及ぼすだろう」という見解を述べられました。

 次に、許淑娟・立教大学法学部教授より、「国家管轄権外区域における海洋生物多様性(BBNJ)に関する新たな法的文書が海洋の科学的調査に与え得る影響」をテーマにご報告いただきました。巨大な利益を生む可能性のある深海底微生物資源への注目が高まると「UNCLOSでは、国家管轄権外の深海底および鉱物資源は人類共有財産としているため、そうした資源を調査する国としない国、つまり先進国と途上国との間で利益配分において緊張が高まった。また、調査活動等による環境上の懸念も生じた。そこで、BBNJに関する新たな制度が求められるようになった」と解説された上で、「MSRは、海洋環境に関する科学的知見の増進のために海域で行われるさまざまな活動であることがUNCLOSの前文に盛り込まれている。新たな実施協定をつくる上では公海でのMSRを尊重すること、さらに人類共有の財産とすることが重要だ。それを担保するため、調査結果の公表、透明性の確保、アクセス可能にすること、さらに予防原則の観点から、生態系に不可逆的な影響をもたらしかねないMSRに対しては、介入したり阻止したりする手続きおよび環境影響評価が必要」だとご指摘いただきました。

 続いて、バスコ・ベッカー=ワインバーグ・リスボン新大学大学院法学研究科教授より「国家管轄権外区域における海洋の科学的調査と新協定」をテーマについてご報告いただきました。まず、MSRの法的枠組みはUNCLOSだが、UNCLOSにおいてMSRの定義はなされていないことを指摘された上で、生物資源の中から有用な遺伝資源を発掘する「バイオプロスペクティング」がMSRに該当するのか否かの区別は難しいことに言及し、「個人的にはバイオプロスペクティングはMSRの中で考えられるべきではないと思う」と付言しました。さらに、現在議論が重ねられているMSRに関する新たな実施協定案を丹念に紹介しながら、その課題を明らかにされました。特に「BBNJの交渉において、国家管轄権外区域でのMSR、能力構築、技術移転などをどのように実施していくのかが課題」と指摘。また「実施協定の対象範囲ではない」としながらも、非国家のアクターの役割について「海洋ガバナンスをつくるインセンティブになりうる」と新たな角度から所見を述べられました。

第4部「海洋ガバナンス ―世界的な困難に対処するために地域的な経験から学ぶ―」

 第4部は小島千枝・中央大学法学部教授をモデレーターにお迎えし、地域的な取り組みや革新的なアプローチなどさまざまな観点から海洋ガバナンスのあり方について、3つの報告を軸に議論が展開されました。

 最初に、小林正典OPRI主任研究員が「インド太平洋地域における地域的な海洋ガバナンス」をテーマに報告しました。「『世界はひとつ、海はひとつ』といわれるが、海は地域で区分され、それぞれが独自に課題を抱えている。それぞれに適用可能な管理措置を導入することで持続可能な海洋ガバナンスを進める必要がある」と解説。さらに、OPRIが関与してきた東南アジアにおける環境管理のためのパートナーシップ(PEMSEA)をはじめ、インド太平洋のさまざまな地域的枠組みを個別に取り上げて紹介した上で、「地域およびグローバル、あるいはテーマ別などさまざまな枠組みが重層的に存在し、相互に影響しあいながら持続可能な海洋資源の利用や保全が行われている」と分析します。さらに「マルチステークホルダー対話が政策の実効性を担保し、それによって地域およびグローバルなレベルで政策が導入されるのを促している。持続可能な海洋ガバナンスに向けて、政策研究でUNCLOSを支え、貢献したい」と抱負を述べました。

 次に、デービッド・フリーストーン・サルガッソー海委員会事務総長より、「サルガッソー海における経験」をテーマにご報告いただきました。北大西洋に位置するサルガッソー海は透明度が高く、海藻サルガッサム(ホンダワラ類)が多く浮遊し、ここにワシントン条約で絶滅危惧種に指定されるヨーロッパウナギをはじめ、カメ、マグロ、サメなど多様な種が産卵場所として、あるいはエサを求めて集まります。「同海域を保全するために、2010年にサルガッソー海委員会が組織され、2014年に『ハミルトン宣言』を採択。アゾレス諸島、バミューダ諸島、モナコ、イギリス、アメリカ等、現在10カ国が署名している。条約ではなく、拘束力をもたない政治宣言だが、公海における海洋ガバナンスの確立を目指す革新的なアプローチ」だと紹介されました。さらに「気候変動問題に対処し、持続可能な海域にしていくためには、拘束力を備えた実効力のある地域の海洋ガバナンス組織にアップグレードすることが必要」だと指摘されました。

 続いて、クリスティン・ダラカー・クラーベル・トロムソ大学ノルウェー海洋法センターリサーチフェローより、「北極における最近の科学協力の進展はBBMJ新協定にいかなる情報を与え得るか」をテーマに、北極の海洋ガバナンスの背景、北極における科学協力の最近の動き、そしてBBNJ条約と科学の果たす役割についてご報告いただきました。特に「BBNJにおける科学および科学者の役割は大きい」と強調し、「移転可能な強靭なデータベースをつくることが重要だ」と論じます。また「交渉によりしっかりとしたBBNJの新協定ができれば、北極圏のメリットにもなる。そのためには科学外交が必要だ。国によりイデオロギーはさまざまだが、科学は現実的な方向にひとつにまとめていく力になる」と科学調査における国際協力の重要性を指摘。「BBNJの新協定が北極圏を含めた海洋科学の促進、BBNJの保全および持続可能性に大きな役割を果たすことが期待される」と述べられました。

閉会の辞

 閉会に際し、フランシス・マリウル・マツタロウ・駐日パラオ共和国特命全権大使より閉会の辞をいただき、閉会となりました。マツタロウ大使は、海に依存する島しょ国の立場から、管轄権や資源へのアクセス、群島諸国の領海、気候変動など、海洋におけるさまざまな課題を指摘。その解決のために国際的パートナーシップが必要であることを強調し、問題解決をした国からの知見の提供を求めました。特に、管轄権については「それが明確にされなければ、海洋ガバナンスを実現することはできない。条約に基いて境界を確定し、科学調査を行い、海洋管理をすることで、自由で開かれた、繁栄した海洋が実現する」と論じました。さらに、パラオが来年8月に開催される第7回アワーオーシャン会議のホスト国を務めることに言及し、「主要および海洋に関わる組織のリーダーが一堂に会し海洋の重要問題について議論する貴重な機会。みなさまの参加を期待したい」と述べ、笹川平和財団との共催によるシンポジウムも2019年11月11日に開催予定であることを紹介されました。
(代)シンポジウムの様子

シンポジウムの様子


海洋政策研究所(海洋政策実現部)
Share

関連記事

Latest News

ニュース

政治に広がるSNSの影響力 ―東南アジアと日本の有識者が語る各国事例

笹川平和財団の第1グループ(戦略対話・交流促進)は、2025年3月6日、戦略対話・交流プログラムの一環として「東南アジア諸国と日本の政治におけるSNSの普及と民主主義の変化」と題したオンラインイベントを開催しました。本イベントでは、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、日本における選挙に対するSNSの影響について、5名の専門家による発表をもとに議論が行われました。

2025.05.27
ニュース

震災復興へ想いをつなぐ日中交流
中国の無形文化財保護団体が輪島漆芸技術研修所に漆を寄贈

笹川平和財団(東京都港区、理事長・角南篤)は、3月3日(月)、昨年1月に能登半島地震により甚大な被害をうけた現地の伝統工芸関係者を支援するため、石川県立輪島漆芸技術研修所で寄贈品贈呈式を実施しました。

2025.03.10
ニュース

リビアの国民和解目指す「リビア平和研究所」で協力
角南理事長、リビア首脳評議会ラーフィー副議長が合意

笹川平和財団(東京都港区)の角南篤理事長とリビア首脳評議会のアブドッラー・ラーフィー副議長は1月22日、財団ビルでリビアの平和構築、国民和解を目指して立ち上げられた「リビア平和研究所」(LPI)について協議し、協力していくことで基本合意しました。具体的にどのような協力が可能なのかは今後、両者の間で引き続き検討していくことにしています。

2025.01.23
もっと見る

pagetop

Video Title

Footer

笹川平和財団

  • 財団について
  • ニュース
  • 研究員
  • イベント
  • 事業
  • アクセス
  • リポート
  • お問い合わせ

最新情報

SPF(笹川平和財団)の最新情報をメールでお届けするサービスです(購読無料)。 講演会やシンポジウム等のイベント情報、サイト更新情報、報道発表資料などをご案内いたします。

メールマガジンの登録

サテライトサイト

  • 海洋情報FROM THE OCEANS
  • WMU友の会ジャパン
  • アジア女性インパクトファンド
  • SPF日米関係インサイト
  • 国際情報ネットワークIINA
  • 海洋教育パイオニアスクールプログラム
  • 島嶼資料センター
  • SPFチャイナオブザーバー
  • アジア平和構築イニシアティブAPBI
  • 碩果累々 継往開来 —笹川日中友好基金の軌跡—
  • サイバー安全保障研究
  • ロシアと世界
  • 日中関係データグラフ
  • プライバシーポリシー
  • サイトポリシー
  • SNSポリシー
  • サイトマップ
  • ウェブアクセシビリティ

Copyright © 2022 The Sasakawa Peace Foundation All Rights Reserved.