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海洋政策研究所(海洋政策実現部)
第167回海洋フォーラム

中東地域における我が国に関係する船舶の安全確保

―法制度からの論点整理
中村進・笹川平和財団特別研究員 / 慶応義塾大学グローバルリサーチインスティテュート客員上席所員

シニアアドバイザー 青木伸行


2019.12.17
13分
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国内法の前に国際法の整理を

 笹川平和財団海洋政策研究所は2019年11月28日、財団ビルで、第167回海洋フォーラム「中東地域における我が国に関係する船舶の安全確保―法制度からの論点整理」を開きました。安倍政権が年内の閣議決定を目指している中東への自衛隊派遣について、国際法と自衛隊法を専門とし元海上自衛官(海将補)である講師の中村氏は、現在の議論は、報道を含めて防衛省設置法と自衛隊法などの国内法上の根拠ばかりに焦点が当てられ、国際法の視点が欠如していると指摘。「海洋は国際共用財であり、国際法で認められている範囲を超えて国内法の権限を行使することはできない」とし、「国内法の根拠を議論する前に国際法の整理が必要だ」と強調しました。
 自衛隊派遣について政府はこれまでに、米国が主導する有志連合構想「海洋安全保障イニシアチブ」(MSI)には参加せず、日本独自に取り組むとし、具体的には①防衛省設置法(第4条18号)を根拠とする「調査・研究」を任務とする②護衛艦1隻と、海賊対処のためソマリア沖に派遣中のP3C哨戒機1機を派遣する③活動海域はオマーン湾、アラビア海北部、バベルマンデブ海峡の東側(いずれも公海)を中心とする―ことで詰めの調整を行っています。
 この政府の判断に対して様々な批判も提起されていますが、中村氏は、「国際法の視点から見れば、その判断の背景と妥当性も見えてくる」と指摘しました。

自衛隊の行動と権限

 自衛隊の任務は「調査・研究」を名目とした「警戒監視」であり、中村氏は「自衛隊法の中に『警戒監視』という行動は規定されておらず、防衛庁設置法の『調査・研究』に含まれるということで対処する」と説明。自衛隊の行動と権限という観点から「調査・研究では、自己防護以外に実力行使はできない。自衛隊法95条に規定されている武器使用権限の防護対象は、あくまで自衛隊の武器等に限られ、海上保安庁の巡視船、警察の装備はもとより、商船を守る権限すらない」と指摘しました。
 日本がMSIに参加していなくとも、効率的な運用などの観点からMSI側との情報共有等の連携は不可欠であり、そうでなければ「任務は達成できない」との認識を示しました。
 中村氏は自衛隊派遣に関するその他の主要な国内法における自衛隊の行動と権限についても、問題点を整理しました。具体的には、「海上警備行動」の防護対象は日本関係船舶に限定され、外国船舶は対象にならないこと。「海賊対処行動」では、外国領海内での行為や軍隊、政府機関の行為は「海賊」に該当しないとしたうえで、「政府は、国内法の海賊対処及び国際法である国連海洋法条約における『海賊行為』の定義と、現実の暴力行為には整合性があるということを、解釈を変えるのではなく、明確にする必要がある」と語りました。
 さらに、国連海洋法条約では船舶に加え航空機も海賊の主体としているのに対し、「日本の海賊対処法は元々アデン湾、ソマリア沖での対応に合わせて作り込んだ経緯があり、海賊の主体に航空機は入っていない。こうしたことも検討材料になる」と問題を提起。一方、国際法と国内法の共通点として「いずれかの国の主権が及ぶ範囲で行われる暴力行為などは海賊行為には入らず、各沿岸国の国内法上の犯罪行為になる。従って、国際法上の海賊行為は公海、排他的経済水域(EEZ)で行われるものに限られ、これは海賊対処法でもまったく同じです」と述べました。
 「補給支援」については国際平和支援法が根拠になり、そこでは対応措置が協力支援、捜索救助、船舶検査の3活動に限定されるため「護衛任務は法律上、付与できない」と指摘。現地情勢などを踏まえ、日本の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」の要件を満たす状況にはないとの認識も示しました。
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無害通航と通過通航

 国内法を概観したうえで中村氏は、国連海洋法条約で規定された領海内の無害通航と、国際海峡における通過通航について詳述しました。
 無害通航は①原則として、継続的かつ迅速に通航しなければならない②調査や測量、通航に直接関係がない活動、航空機の発着と積み込みは禁止する③沿岸国は無害ではない通航を防止するために、領海内で必要な措置を取ることができる―などとされています。一方、「国際海峡」とは「国際航行に使用されている海峡」で、国連海洋法条約に規定された通過通航権が認められている海峡を指します。同条約により、海岸から3カイリだった領海が12カイリまでに拡大されたことに伴い、それまで自由通航が可能だった海峡が沿岸国の領海内に編入されてしまうことから、条約で定義した海峡に関しては、その水域が他の国の領海内であっても通過通航する権利を付与しました。
 国際海峡における通過通航権について中村氏は、国連海洋法条約を引用する形で①権利は害されない②海峡とその上空を遅滞なく通過する③継続的かつ迅速な通過の通常の形態に付随する活動以外のいかなる活動も禁止される④海峡沿岸国の事前の許可なしに調査、測量を実施することは禁止される―ことを説明しました。
 そのうえで、通過通航権につて「無害通航では航空機の上空飛行は認められず、潜水艦は領海内では浮上して、その国の国旗を掲げることを要求されるが、通過通航では上空飛行が認められ、潜水艦は潜没したまま航行できる」と、相違点を実態に即して解説しました。
 ただ、国連海洋法条約からは具体的にどこが国際海峡なのか、また、条約の国際海峡の通過通航制度が条約の加盟国だけに適用されるのか、慣習法としてすべての国に適用されるのかという点については明らかでなく、国の解釈によって争いがあることを指摘しました。

国際法解釈をめぐる関係国の相違

中村進氏
 国際法をめぐっては、関係国の間に多くの解釈の相違があります。中村氏は「かつて『国際法の解釈は国の数ほどある』と教わったことがある」としたうえで、軍艦の領海内無害通航をめぐり「無許可で無害通航が認められるという立場をとるのは、米国とNATO(北大西洋条約機構)。日本もこの立場です。ただ、米国は国連海洋法条約には加盟していません。これに対して、軍艦については事前に沿岸国に申請し許可を得なければ無害通航はできないというのが、オマーンとイランの考え方です」と解説しました。
 また、ホルムズ海峡における通過通航に関しては「米国、EU(欧州連合)、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)といった国々はホルムズ海峡が重要であるということで、通過通航が適用されるという立場です。米国は、通過通航は慣習法として成立しているという立場。しかし、沿岸国であるイランとオマーンは慣習法の成立も含め通過通航を認めず、領海内の無害通航を適用し、上空飛行は一切認めないという立場です」と説明しました。
 これらの相違が、検討されている自衛隊の調査・研究の活動海域から、イランとオマーンの領海が重なるホルムズ海峡が除外されている要因の一つであるとの見方を、中村氏は示唆しました。

法律と運用の限界

中村進氏
 自衛隊派遣をめぐるメディアの報道については「ごく一部を除き、自衛隊を出す法的根拠として日本の自衛隊法などの国内法だけを対象に検討、紹介している。果たしてそれでいいのか」と、強い疑問を呈しました。
 法律と運用の限界にも言及しました。中村氏は「法律はできるだけ広く適用できるようにつくります。従って、事態を一応カバーできますが、現場において一番難しいのは、法律に書いてあることが、自分の目の前で起こっていることと一致するのかどうかという判断。これは現場の指揮官に委ねられている。判断は実例や判例の蓄積、積み重ねによって導かれるわけですが、それらは警察官の職務執行に比べ自衛隊にはほとんどない。言い過ぎかもしれないが、法律はバーチャルに近い感覚になってしまっている」と指摘しました。
 そして、適切な判断のためには幅広い情報収集が重要であり、例えば「海域の状況や情勢などを綿密に調査することによって、疑問点の解消、部隊の安全に相当つながる」と強調。自己防護も含めて不測の事態に対応するうえで、正確な情報に基づく、現実味のある訓練と的確な行動基準(ROE)の策定も肝要だとの考えも示しました。
 また「法律と安全保障という一般国民に馴染みが薄い問題を、いかに周知していくか」と述べ、専門家によるメディア、有識者などに対する知見の提供と、教育機関における教育、研究者の育成に力を入れる必要性も力説しました。
 
【中村進氏の略歴】
 研究領域は安全保障法制(国内法・国際法)・安全保障政策・戦略。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科 博士課程単位修得退学(博士(学術))。1974年海上自衛隊入隊、航空部隊勤務等を経て1992年海上自衛隊幹部学校勤務。研究室長、海上幕僚監部法務室長兼務などを経て2008年3月退官、幹部学校主任研究開発官として再任用。2017年3月再任用任期終了により退官(海将補)。2017年4月から慶応義塾大学グローバルリサーチインスティテュート客員上席所員、同年10月から笹川平和財団安全保障研究グループ特別研究員として勤務するほか、埼玉大学教養学部非常勤講師、自衛隊統合幕僚学校及び海上自衛隊幹部学校部外講師を兼職。著作に「有事関連条約における個人保護法制への国内的対応とその問題点」『ジュリスト』No.1229(共著)、「自衛隊と太平洋軍」土屋大洋編著、『アメリカ太平洋軍の研究』(共著)千倉書房、2018年、“Dispute about maritime law between U.S. and China” Collection of Treatise for 2017 International Symposium on Military Education(中華民国国防部)、「従創設縁由觀察日本海上自衛隊與海上保安廳的特徴」(洪政儀訳)、中華民国中央警察大学水上警察系『2017年台日海洋與偵査法制検討會』などがある。

海洋政策研究所(海洋政策実現部) 中東地域
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