中国における日本語教育の未来を語る
中国大学の日本語教師を対象にした訪日上級研修を実施
第一期生からのバトンをつなぐ
公益財団法人笹川平和財団(SPF 東京都港区、理事長・角南篤)は、2024年7月8日から8月2日まで、中国の大学で教鞭をとる日本語教師向けの訪日上級研修(第二期)を実施し、中国から日本語教師23名が参加しました。
安全保障の専門家が笹川平和財団ビルに集まり、日米安全保障同盟について率直に議論した
笹川平和財団(東京都港区、会長・田中伸男)は2019年1月29日から31日までの3日間、日米両国から政府・防衛関係者(現職と元職)、学識経験者、安全保障の専門家ら約70名を招き、ワークショップ「日米安全保障・防衛ダイアローグ」を財団ビルで開催しました。スタンフォード大学米国アジア安全保障イニシアチブ(USASI)との共催で、専門家と実務者による率直な議論を通じ、インド太平洋地域で日米安全保障同盟が直面している複雑な課題に、政府の公式見解にとらわれることなく実践的なレベルで取り組むことを目的としています。
シリーズ3回目となる今回のワークショップの主要議題は、①インド太平洋地域における最近の安全保障動向②安倍政権が昨年12月に閣議決定した新たな「防衛計画の大綱」と日米同盟、なかんずく統合防空ミサイル防衛(IAMD)、島嶼防衛との関係③日米同盟と地域の海上安全保障における新防衛大綱の意義―の3つです。日米の参加者は、両国間に安全保障・外交問題で一定の相違があることを認めつつも、地域の安定にとり日米同盟が中心的な役割を果たしていることを再確認するとともに、インド太平洋地域において、争点を管理し合意を促進する多国間のパートナーシップを通じ、ルールに基づく秩序を維持することの重要性が強調されました。
日本政府が2018年12月に提示した新防衛大綱は、今後10年間の防衛戦略であり、今回の会合を通じて中心的な議題となりました。日本側が防衛大綱の改定理由として強調した点は、地域の力の均衡におけるさまざまな変化と、宇宙やサイバー空間など新たな戦闘領域への急速な拡大があります。日本側の参加者からは、「複数の領域にまたがる戦闘に対応できる能力を構築しなければならないという切迫感がある」との説明がありました。新防衛大綱策定の背景にあるその他の要因としては、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威や、3隻目の空母を建造している中国の海洋進出、ロシアによる電磁技術の兵器利用、サイバー攻撃、フェイクニュースを含むハイブリッド戦の展開が挙げられました。
米国側の複数の参加者によると、米政府関係者は新防衛大綱を好意的に受け止めています。新防衛大綱が、米軍と自衛隊の相互運用性の向上を重視している点や、新たな領域における柔軟性を促進する技術への投資、東シナ海などにおける日本の防衛力の強化を高く評価しました。しかし、米国側の一部からは、自衛隊と米軍の協力をより緊密にするための統合作戦センターを、日本に設置する計画が含まれなかった点について、失望の声も上がりました。ある参加者は、仮に中国との交戦が発生した場合、現状では対応できない可能性があるとし、「さまざまなモデルが考えられるが、日本に形式的な司令部を置き、ハワイから戦うという考え方はあり得ない」と述べ、日本に統合作戦センターを設置することの必要性を強調しました。
一方、新防衛大綱は意欲的すぎるとし、さまざまな取り組みを円滑に実施するために政府は、いかに優先順位を設定し予算を確保するのだろうか、と疑問を呈する発言もありました。
日米同盟の強固さについては、参加者全体で再確認されたものの、外交戦略をめぐる相違についても議論されました。米国と北朝鮮との直接協議については、一部の参加者から、トランプ大統領が金正恩・朝鮮労働党委員長との会談で不利な条件を受け入れた場合、日米の戦略が一致しなくなる可能性があるとの懸念が表明されました。ある日本側の参加者は、「もちろん弾道ミサイルは重要だが、非核化を実現しなければならない」としたうえで、米国が交渉で両方の目標に取り組まなければ「極めて危険」であり、日米間に「重大な亀裂」が生じると発言しています。
会合ではまた、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊哨戒機に火器管制レーダーを照射したとして、日本政府が非難したことに端を発する最近の日韓関係の悪化にも、議論が及びました。米国側の参加者の一部からは、こうした対立が、地域の安全保障上の課題に取り組むうえで必要な日米韓3カ国の協力を、阻害する可能性があるとの懸念が示されました。
また、トランプ政権の「米国第一」主義が、多国間主義をめぐる議論に影を落としました。両国の参加者が共に指摘したのは、米国の安全保障上の責務と、国際舞台における最近の行動との矛盾です。複数の参加者から、米国は同盟国や友好国との関係を壊し多国間協定から離脱するとともに、地域の指導的立場から全体的に退こうとしているように思われる、との見解が表明されました。他方で米国側の参加者は、日本が「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP)の交渉妥結を含め、地域において指導的な役割を果たしており、政治・安全保障上のプレゼンスを高めていることを高く評価しました。
中国は会合全体を通して中心的なテーマの1つであり、参加者は、日米両国と友好国が、インド太平洋地域全体でますます勢いを増す中国の外交、経済、軍事行動をどのように理解し、いかに対処すべきかについて議論しました。米国側の参加者の1人は、中国との競争拡大は、地域における同盟国や友好国を獲得する争いだと位置づけ「習近平国家主席は、地域における米国の同盟国を減らすことによって、米国のプレゼンスを低下させることの重要性を理解している」との見方を示しました。また、ある他の参加者が指摘したのは、新たな友好国を引き付けるだけの説得力を、米国は示すことができていないという点で、「アジアで米国側に立つ国を見つけることは難しくなっている。様子見を決め込むか、中国側に立つ国ばかりだ」と語りました。
日米双方の参加者は、域内の不安定性に対処するうえで、地域におけるパートナーシップの構築が非常に重要であるという認識で一致すると同時に、さまざまな異なる利害をもつ友好国との連携を構築するためには、創造的な政策の解決策が求められることも強調されました。複数の参加者からは、日米がインドなど域内の新興勢力との関係を構築するとともに、パートナーシップ拡大の基盤として日、米、オーストラリア、印4カ国の安全保障対話を活用すべきだとの発言がありました。
また、日本については、フィリピンやベトナムなど米国との緊密な同盟関係の形成に慎重だと思われる国と、緊密な関係を構築することが得策だとの指摘が、多くありました。
中国は外交政策目標を達成するために、政府などが一体となって取り組む方法をとっているのに対し、日米や他の友好国では、中国のような包括的な対応を取ることができていないとして、懸念する考えも示されました。米国側の参加者の1人は、「米国が現実に、かつて経験したことがない最大の脅威に直面していると仮定して、こうした現状にわれわれの想像力は追いついていない」と、警告しました。日本側からは、国際社会は中国と戦略的に競争し、一貫性がある戦略目標を明確に示すことを検討する必要性が指摘されました。そのことは、「世界の大国」を追求する中国を抑制するにせよ、既存の国際規範を遵守するよう圧力をかけるにせよ、あるいはその両方であるにしても、ということです。
中国をめぐる議論の大半は、安全保障上の脅威と対抗戦略の整備ということに焦点が合わせられましたが、参加者の間からは、中国をもっぱら戦略上の敵対国と位置づけ描くことを疑問視し、そのような見方は、中国の躍進が国際社会の活性化につながる分野を無視することになる、という主張も出されました。米国側の参加者の1人は「憂慮すべきはむしろ、中国の没落であって、台頭ではない。前者の場合、全ての国が敗者になる。後者の場合、中国の台頭のあり方によっては、全ての国が勝者になれる可能性がある」と語りました。他の米国の参加者は、既存の制度に対して中国が示している不満の中には正当なものもあり、これについては広く国際社会で検討すべきだと指摘しました。
日本側の参加者の1人からは、日本が提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、国際社会から中国を排除することを目指すものでなく、むしろ各国は、ゼロサム的な競争戦略を追求せずに、中国の参加を促すための方策を検討しなければならない、との考えが示されました。
会議での議論は幅広い話題に及び、日米双方の出席者の間で見解の相違が見られる分野もありましたが、オープンで率直な意見交換の場を維持することが重要であり、また、インド太平洋地域が諸々の課題に直面する中で、日米安全保障・防衛ダイアローグのようなイベントが価値あるものであることを確認し、会議は閉幕しました。