「インクルーシブ・プロジェクトを考えるヒントをゲットしよう」
―共生社会を創生するための講演とワークショップ開催

2019.03.11
ネイ・リン・ソウ氏
ウンドラバヤール・
チュルーンダバー氏
リン・チュン・チエ氏
シャフィク・ウル・
ウフマン氏

 笹川平和財団(東京都港区、会長・田中伸男)は2月4日、アジアから、自国のみならず国際的に活動する障がい者リーダーを招待し、講演会とワークショップを行いました。

 インクルーシブとは、日本語で「色々な人が参加できる」という意味です。つまり、障がいの有無に関わらず、社会で、職場で、自分の住む地域で自由に活動できる、すべての人が参加できる共生社会の構築を促進することを示しています。

 今回のワークショップには、台湾から台北市新活力自立協会の事務局長、リン・チュン・チエ氏、ミャンマーから、自立生活イニシアティブ事務局長のネイ・リン・ソウ氏、パキスタンからマイルストーン障がい者協会代表のシャフィク・ウフ・リーマン氏、モンゴルから、ユニバーサルプログレス自立生活センター理事長を務めるウンドラバヤール・チュルーンダバー氏の4人に来ていただきました。

 パネルディスカッションでは、自国における障がい者の現状、社会環境とその課題、日本との違い、自身の生い立ち、体験と活動目標を語った後、出席者を交えたワークショップに参加、インクルーシブな社会を創生するためには何が必要なのかを討議しました。

各国のパネリストによる講演
各国のパネリストによる講演

 台湾のリン氏は、骨形成不全(骨がもろいために骨折をしやすく、骨の変形を伴う先天性の骨疾患)です。8歳になるまで、学校の受け入れ態勢が十分ではないという理由で、小学校に入学できませんでした。「日本は、障がい者に対して、介護とバリアフリーは進んでいます。しかし、台湾と比べて、駅など公共交通機関のエレベーター設置に関しては遅れています」と指摘しました。さらに、「アジアは台湾も含めて、障がいを持つ家族には、障がい者は人前に出てほしくない、という思いが強い。家族の固定観念と価値観を変革して、家族の後押しを受けて、障がい者が積極的に社会参加できる環境整備を目指しています」と語りました。

 ミャンマーのソウ氏は、幼い頃、ポリオウイルスに感染しました。「私の家は貧しく、車いすも買えませんでした。ですから、地面を這って学校に通いました。ミャンマーには障がい者年金もなく、ほとんどの障がい者は一生、家族に頼る生活を余儀なくされています。こういった社会状況を改善したいと考えて、啓蒙活動の一環として、学校や企業研修を行っています」と障がい者が直面している実情を解説しました。さらにソウ氏は、「障がい者で生まれたのは先祖の悪い因縁(カルマ)がある」という、因習的な偏見や差別に対する意識改革にも力を注いでいます。

 パキスタンのシャフィク氏も幼い時、ポリオに罹りました。

 シャフィク氏は自国が抱える社会情勢と自然について「パキスタンはタリバンの侵攻、アフガニスタンからの難民流入、洪水や地震などの自然災害と、障がい者にとって、大きな壁が四方八方に立ちはだかっています。自然災害や内戦で負傷して、障がい者になる人も多い。災害時にいかに機動性を発揮して障がい者をサポートできるか、障がいを持つ難民への援助、河川の汚染で発生する感染症拡大の予防など、障がい者がまず『生き抜くこと』が、活動の使命なのです」とパキスタンの厳しい現状を説明しました。

リン氏が語る台湾の現状
リン氏が語る台湾の現状

 モンゴルのウンドラバヤール氏は、他の三人と違って、成人してから、事故で障がい者になりました。医師から障がい者になった事実を告知されてしばらくは、自殺することばかりを考えていたそうです。しかし、障がい者支援活動に興味を持ち始めて、深い闇の中で彷徨する自分の人生に光が差していくのを体感したそうです。「平等とは、例えば、背の高い人も低い人も平等に野球を観戦できるということですよね。しかし、実際は背が低いと、背の高い人が邪魔になって、ちゃんとゲームが観られない。平等では不十分です。我々が目指すのは、平等の一歩先、公平さです。背の低い人も高い人と同じ目線で野球観戦ができるように、低い人には台を置いてあげる。プラスアルファの工夫で、真の意味での平等が生まれる、そういう社会の実現を目指しています」と述べました。

 ウンドラバヤール氏は、広大なモンゴルでの支援を隅々にわたって行っています。僻地に住む障がい者を訪ねるために、「舗装が行き届かない大平原を何百キロも旅することも普通です」と笑って答えていました。

 ワークショップでは、参加者は国ごとに4グループに分かれて、パネリストと講演で感じたことや、インクルーシブ社会の構築について討議しました。

ワークショップでパネリストと討議
ワークショップでパネリストと討議

 それぞれのチームの発表では、「ネットワ ークを共有し、情報交換を活発に行い、アジア全体をインクルーシブな社会に変えていきたい」「障がい者は援助をする存在と考えていたが、講演を聞いて、一方的に手を差し伸べるのではなく、お互いに助け合い共生することが大事だと思った。社会をどう変えていくかについて考えさせられた」「しっかりとした法整備が必要」など、様々な意見が述べられました。

           

 さらに、参加者からは、今回のイベントを通じて、「日本だけではなく、登壇者の出身国それぞれの現状を知ることができました」「パネラーの皆さんと直接会話し触れ合う事で、具体的に、インクルージョン(社会的な包摂性)について考えるチャンスになりました」という声が聞かれました。       

(広報課 宮武知加)

関連記事

RSS

財団について
日米交流事業
助成申請
年度
年度
メルマガ登録はこちら
その他一覧

ページトップ